これは次の記事の続きです。
このアイキャッチを使ったシリーズでは先進国株式のみと、先進国株式に何かを混ぜたもののパフォーマンスを比較しています。
株式を混ぜるパターンでやっていないのは先進国株式、新興国株式、国内株式を33%ずつ混ぜる3地域均等ですが、これは自分としては次の記事で結論が出ています。
そこで先進国株式に株式以外を混ぜたものとの比較もします。今回混ぜるのは先進国債券です。
債券は好きですか?
インデックス投資はとても論理的なものだと思いますが、こと債券の扱いに関しては対立する意見が多く、多数を納得させられる結論は出そうにありません。僕は債券をどのように扱おうが将来その選択が吉と出るか凶と出るかは誰にも予見できないのだから、好きな方を選択すれば良いと思っていますが、投信ブロガーの間で片方がもう片方の選択を(あまり気持ちの良くない表現で)否定する意見が散見されるのは残念です。
バンガード社は分散投資を推奨していますが、それには地域の分散と資産クラスの分散が含まれます。ひらたく言うと米国集中投資より全世界への投資、株式のみへの投資より他の資産も含めた投資を推奨しています。じゃあどうするのが一番良いのか?という問いへの答えはありません。自分で決めるしかないのですが、一つの指標として株式6:債券4が良いとする見解を良く聞きます。
そこで今回は先進国株式と先進国債券を6:4で混ぜたらパフォーマンスがどう変わるのかを調べます。
前説
今回は先進国株式のみと、先進国株式と先進国債券を6:4で混ぜたもののリターンを比較します。先進国株式はeMAXIS先進国株式の基準価額データをそのまま使います。もう一方は次の比率で合成したものを使います。
- eMAXIS先進国株式を60%。
- eMAXIS先進国債券を40%。
2011年1月から2018年6月まで
赤のラインが先進国株式のみ、緑のラインが先進国債券を混ぜたものです。比較期間の初期に債券を混ぜた方がリターンが高いことがありましたが、その後は差が広がる一方です。でもそれはリターンが低い先進国債券を40%も混ぜているので当然の結果でしょう。先進国債券を混ぜる理由は株式市場が不調な時の下落率を緩和するためでしょうから、その効果があるのかを見るべきです。
が、それは容易ではありません。債券は株式と違う動きをするからその効果が期待できると言われても必ずそういう動きをする保証はないですし、過去の実績データで比較しても過去はそうでしたでねで終わってしまいかねません。
ですから理屈は置いとくとして、eMAXISシリーズの実績データではどうだったかを楽な気持ちで眺めることにします。
凡例の右側に利益率を表示しています。ただしこれは比較期間の先頭で一括投資した場合にのみ得られるものであることに注意してください。
2013年1月から2018年6月
先進国株式のみのリターンの高さが目立ちます。
2015年1月から2018年6月
2015年から2016年にかけて株価が下落した時期に債券を混ぜた効果がありそうです。が、その時期を過ぎるとまたリターンの差が広がる一方です。
2017年1月から2018年6月
債券を混ぜた効果が実感できません。先進国株式が下げても先進国債券を混ぜたものよりリターンが悪化するケースがほぼないからです。(ただしこれは一括投資にのみ言えることです。積み立て投資だと同じ結論になるとは限りません。)
ここからは1年単位でリターンを比較します。
2011年
先進国株式のみが大きく下げ、先進国債券を混ぜたものの下落率が低い時期があります。確かにこの時期は債券を混ぜた効果が認識できます。
2012年
ごく短い期間だけ債券を混ぜた効果が見られますがその程度は小さいですし、すぐに先進国株式のみのリターンの高さが目立つようになります。
2013年
債券を混ぜた効果が発揮される状況はなかったようです。
2014年
確かに先進国株式のみの方が下がっていることがありますが、それがリターンの低さというデメリットを相殺できるとは思えません。
2015年
確かに先進国株式のみの方が下がっている(突き抜けている)ことがありますが、我慢していれば回復するので、債券を混ぜるメリットを感じることができません。
2016年
短い期間で見るなら債券を混ぜる効果はありますが、数年以上で考えると債券を混ぜる効果よりも混ぜない場合の普段のリターンの高さが上回ります。債券を混ぜる効果は感じられても投資期間が数年以下に限られると思いました。
2017年は上の方に出てきたグラフを見てください。
結論:長期投資なら債券を混ぜる意味はない
債券を混ぜることで株価下落時のリターンの悪化を緩和する効果は確かにありますが、それは数年以下の短い期間でしか感じることができず、それを超える長期投資なら普段のリターンの高さによりリターンの差が開くため、株価下落時に先進国株式のみが大きく下げて、先進国債券を混ぜた方の下げ率が小さくても、結果としては先進国株式のみの含み益の方が大きいという状態が観測されました。
たとえば次は2013年以降のリターン比較ですが、2016年に株価が大きく下落している期間は確かに先進国株式のみの下落率は高いですが、それでも先進国株式のみの方がリターンは高いです。それまでに得た含み益の差が、下落幅よりも大きいからです。
世界経済の状況や、投資期間、投資状況(積立投資継続中かガチホ中か)によっては先進国債券を混ぜたものの方が含み益が大きくなることもあるでしょう。でも次の条件を満たしているなら、債券を混ぜる意味はないというのが僕の結論です。
- インデックス投資の目的は資産を増やすことである。
- 5年、10年という長期投資を目指している。
- 基準価額が大きく下落しても我慢して回復するまでホールドできる自信がある。
- 無リスク資産を十分大きな割合(5割とか家庭の事情に合わせて)確保している。
気付くと僕は債券不要論組に入っていましたね。でも債券必要論組の考えは否定しませんし、好きな方、納得できる方を選択すれば良いと思っています。どっちにしても将来得られる結果は自己責任なんですから自分で決断するしかないわけです。
暴落後に回復しなかったら
インデックス投資をしている人はたいてい、暴落時にリスク資産が4割とか5割減るかも知れないと思い、それを恐れてもいるでしょう。でも前提として我慢して売らずにいればそのうち経済が回復して元に戻ると思っているはずです。過去はそうでした。数年我慢すればなんとかなりましたし、暴落中に追加投資できた人はその後大きな利益を手にできました。
次に起こるであろう暴落も同じようにせいぜい数年で回復するかどうかは誰にも分かりません。もっと長期に、5年とか7年とか低迷が続くかも知れません。もしそうなったら不運だったけど他にも同じ境遇の人はたくさんいるからみんなで我慢しましょう、というのが僕の考えです。それだけのリスクがあるならインデックス投資しない、とはなりません。代わりに、無リスク資産を5割確保することだけは死守します。