楽天全世界株式、楽天全米株式から比べると関心も純資産総額も非常に低い楽天新興国株式ですが、それでも同じように本家VWOと比較することでトータルコストを推測して来ました。
最後に配当金を取り込んでからのトータルコストは税込み0.39%前後と推測されましたが、楽天全世界株式、楽天全米株式と同じで設定日直後はトータルコストが高く、その後漸減される傾向でした。
もともと注目度の低い楽天新興国株式の運用報告書報告書も公開されたのですが、そこに書かれていた数値はさらに受益者を遠ざける驚くほど高いものでした。
運用報告書にある数値
決算期間は2017年11月17日から2018年7月17日なので、243日です。365/243は1.502ですが、運用報告書にある信託報酬から1.44倍する必要があると分かります。どうしてそうなのかは僕には分かりません。
運用報告書には費用の合計が税込み0.320%とあるので、1.44倍して1年に引き直すと税込み0.4608%になります。
これがどれだけガッカリな数値かは、楽天全米株式の目論見書にもある次の表現を見れば理解できるでしょう。
引用:目論見書
この桁数の多い数値はVWOの経費率0.14%を含んでいます。受益者の多くはこれが実際には(隠れコストを加えると)税込み0.6008%になるなんて思わなかったでしょう。ここまで違うと騙されたと思いたくもなりますね。
税込み0.4608%は楽天投信投資顧問が楽天新興国株式の純資産総額から毎営業日天引きしている費用です。この他にVWO(ETF)の経費率0.14%もトータルコストに含めるべきですが、これは基準価額データとETFの取引価格データからは算出できないのでこの記事では無視します。
さて、これまで何回も見てきた、楽天投信投資顧問が楽天新興国株式の純資産総額から運営コスト(費用)を天引きして来たものを合計すると、運用報告書から計算される費用に一致するでしょうか。楽天全世界株式、楽天全米株式で見た通り、するわけないですね。
リターンの差
次は2017年11月17日から2018年7月17日における楽天新興国株式と本家VWOのリターン比較です。
赤のラインが楽天新興国株式、緑のラインが本家VWOです。青のラインがリターンの差です。時々リターンが高くなっているのは配当金によるものです。この上昇分を除いて、費用を天引きされることによりリターンが下がった分を合計します。
結果はこの決算期間のままで0.441%でした。これには配当金を取り込んだ日の天引き分は含まれていません(算出できないため)。これを1.44倍すると0.635%にもなります。でもグラフから分かるようにトータルコストは決算期間を通じて一様ではなかったので1.44倍するのは不適当です。
でもこの決算期間で0.441%天引きされたのは事実です。この、純資産総額から天引きされた分(=信託報酬+その他費用)は、残念ながら運用報告書にある数値からは到底説明できません。楽天投信投資顧問の中の人を除いて説明できる人なんていないと想像します。
楽天全世界株式、楽天全米株式と違うこと
このブログの愛読者の方は気付かれていると思いますが、楽天新興国株式には設定直後のリターン差の急落がありません。楽天全世界株式と楽天全米株式には同じパターンで見られたものが、楽天新興国株式にはないのです。
設定日が同じでないが影響しているのかも知れません。これも、誰からも説明されないまま迷宮入りしてしまう謎でしょうね。
スリム新興国株式は
スリム新興国株式のトータルコストは運用報告書から税込み0.3897%と計算されます。楽天新興国株式は税込み0.6008%なので、スリム新興国株式の1.54倍です。年率0.2%超のコスト差は大きいので、わざわざ楽天新興国株式を選ぶ必要はないです。
スリム新興国株式はトータルコストが安い上、競合商品の信託報酬引き下げに追随することが期待できることからも、楽天新興国株式に勝ち目はありません。
もともと売れていません
次はスリム新興国株式と楽天新興国株式の純資産総額の変化です。スリム新興国株式は90億円程度あるのに対して、楽天新興国株式はちょうど1/10の9億円程度しかありません。
純資産総額は基準価額の変動の影響を受けますが、総口数は受けないので人気の動向を知るのには総口数の変化を見るのと良いです。次は総口数の変化をプロットしたものです。
おかしな乱れがないでしょ。で、スリム新興国株式は順調に人気を獲得できているのが分かります。途中で上昇率が上がっているのは、信託報酬を税抜0.339%から税抜0.190%に大幅に引き下げた時期に一致します。
このグラフを見て分かる通り、楽天新興国株式にはもともと魅力がなく、人気の獲得に失敗しています。設定から10ヶ月で9億円集められないインデックスファンドは掃いて捨てるほどありますから、全然ダメなわけではありませんが、新興国株式インデックスファンドという一応ある程度の販売が見込めるセクターでの競争には負けました。
現状だとスリム新興国株式には永久に追いつけないと思われます。でも今後もずっとそうだとは断言できませんけどね。(99%無理だと思います。)
第二期は下がるかも
リターンの差を解析した結果から、3回目の配当金をもらってからのトータルコストを税込み0.39%前後と推定していました。でもそれにVWOの経費率を加えると0.53%になるため、まだまだスリム新興国株式に負けてしまいます。
ですが、そのこととは別に、楽天新興国株式のトータルコストの推移は見守りたいと思います。
よろしければ次の記事もご覧ください。