インデックス投資

スリム米国株式(S&P500)はSBIバンガードS&P500に対抗値下げできるのか

2019年8月30日

楽天全米株式はバンガード社のETFであるVTIを買うだけのインデックスファンドで、圧倒的な人気を誇ります。そこへ、同じくバンガード社のETFであるVOOを買うだけのインデックスファンドを、SBIアセットマネジメントが9月26日に設定する話題で盛り上がっています。税抜き運営費用(信託報酬+ETFの経費率)が0.088%と激安なのです。

VOOのベンチマークはS&P500種指数で、VTIとはパフォーマンスに大きな差はありません。VTIのネームバリューはとても大きいはずですが、楽天全米株式が税抜き運営費用0.15%を引き下げられないと、楽天全米株式キラーになる可能性があります。でも、楽天全米株式の純資産総額は515億円もあり、その牙城を崩すのは思うほど簡単ではないかも知れません。それは過去に、ニッセイ外国株式 vs スリム先進国株式で見た図式でもあります。

もう忘れてしまったかも知れませんが、楽天バランスファンドが設定された時、均等型はセゾングローバルバランスファンドキラーになると思われました。が、セゾングローバルバランスファンドのキング・オブ・バランスファンドの地位は揺らいでいません。

スリム米国株式(S&P500)の信託報酬

スリムシリーズは「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」をうたい文句にし、実際に信託報酬を同率最安値に引き下げ続けることで人気とブランド力を確かなものにしました。

スリム米国株式の現在の信託報酬は税抜き0.15%ですが、これは楽天全米株式の税抜き信託報酬0.12%+VTIの経費率0.03%に合わせたものです。VTIの経費率は国内の消費税とは無縁であるため、このような分かりにくい計算になっています。

SBIバンガードS&P500に対抗するなら、三菱UFJ国際投信は税抜き信託報酬を0.088%に引き下げなければなりません。削減率は41.3%です。スリム先進国株式の税抜き信託報酬を、EXE-i つみたて先進国株式に対抗して0.1095%に引き下げた、インデックス投資の歴史に残る出来事が思い出されます。(それは間違いなくスリムシリーズの分岐点でした。)その時の削減率は42%でほぼ同じ、競合相手もSBIアセットマネジメントでした。

歴史は再び繰り返されるでしょうか。

税抜き信託報酬0.062%ポイント引き下げ効果

このブログではスリム米国株式の偽物が良く登場します。S&P500種指数に投資する米国籍ETFのトータルリターンを生成し、運用コストを増量したものです。

次は本物と偽物のリターン差を示したものです。

本物と偽物のリターン差

青のラインはほぼフラットです。次は、この偽物のリターンを年率0.062%ポイント増強したものとの2001年年初からの比較です。

偽物のリターンを年率0.062%ポイント増強したものとの2001年年初からの比較

青のラインは複利効果で弓なりに曲がっています。コスト差年率0.062%ポイントは、長期投資では無視できないリターン差を生むということです。

対抗値下げの代償

三菱UFJ国際投信の担当者を除いてやる人などいないと思う計算をしました。次はスリムシリーズから三菱UFJ国際投信が手にする年間の売上順に並べたものです。

スリムシリーズから三菱UFJ国際投信が手にする年間の売上順

売上は現在の純資産総額に、委託会社(運用会社)の取り分を乗じたものです。スリム先進国株式は純資産総額が500億円を超えると信託報酬が漸減される仕組みを適用しています。

トップのスリム先進国株式の売上でさえ2,089万円しかありません。スリムシリーズ全体で9,315万円です。スリムシリーズだけで見れば大赤字でしょうが、これを支えているのは高コスト商品群です。

三菱UFJ国際投信は、超ローコスト投信で生き残れる運用会社は1資産クラスにつき多くても3社だと発言していたと記憶しています。その生き残りを賭けて生存競争をしている最中なのです。そして、スリムシリーズは確実に成果を上げています。Fund of the Year 2018でスリムシリーズが7本受賞したことは、社外はもちろん、社内で戦略の正しさを強くアピールできたはずです。

引用:スリムシリーズ

さて、スリム米国株式の現在の売上は1,762万円です。税抜き信託報酬を0.088%に引き下げると、三菱UFJ国際投信の取り分は0.034%になると思われます。すると売上は921万円に減ります。現在の純資産総額で年間841万円を失うわけです。

が、もしSBIバンガードS&P500に対抗値下げできなかったらもっと大きなものを失います。保証はないものの同率首位戦略を継続してくれるというスリムシリーズにしかない期待を裏切ってしまうのです。これはダメでしょう。2017年2月にスリムシリーズ第一陣を設定してから時間をかけて醸成してきた、圧倒的な優位性を毀損させるわけにはいきません。841万円はスリムシリーズ全体の売上のわずか9%でしかありません。

対抗値下げで得るもの

逆に、今回も対抗値下げすれば確立している評判をさらに盤石なものにできます。宣伝広告費だと思えば、費用対効果は抜群でしょう。そうして純資産総額を倍増できれば、売上水準は対抗値下げ前に戻ります。

次は楽天全米株式とスリム米国株式の、設定来の純資産総額の推移です。

赤のラインが楽天全米株式、緑のラインがスリム米国株式です。楽天全米株式の人気は圧倒的です。このままだとスリム米国株式は楽天全米株式に永久に追いつけません。

ここへSBIバンガードS&P500が乱入して来るのです。とんでもなく安い運営費用という武器を携えて。迎え撃つしかないでしょう。

2019年9月27日追記

多くの個人投資家の予想と期待に反し、三菱UFJ国際投信は沈黙を続けています。SBIバンガードS&P500への対抗が、限度を超えていて(今すぐに)できないのであれば、できないと言った方が良いと思います。沈黙を続けているのは、これまでと違って容易に対抗できない事情があって、その調整・交渉に日数を要しているからかも知れません。まず知りたいのは三菱UFJ国際投信の考えです。沈黙は良くない憶測を生むだけで、いいことはありません。

45日後に対抗値下げが発表されました

45日もかかりましたが、対抗値下げが発表されました。三菱UFJ国際投信主催のブロガーミーティングで、飛び交っていた憶測について質問しました。

-インデックス投資

Copyright© 個人事業主が節税してインデックス投資 , 2019 All Rights Reserved Powered by STINGER.