インデックス投資

スリムシリーズの売上を陰で支えるつみたてんとうシリーズの巧妙な戦略

2019年9月3日

三菱UFJ国際投信はスリムシリーズに力を入れていますが、同じマザーファンドを買う別のシリーズも運営しています。「つみたてんとうシリーズ」です。投信ブログでも取り上げられることの少ないシリースですが、実は売上面でスリムシリーズを支えています。どういうことでしょうか。

同じマザーファンド、異なる信託報酬

投資信託という商品においては、同じマザーファンドを買うベビーファンドを運用するだけなのに、異なる商品名、異なる信託報酬で販売されることは当たり前に行われています。既存商品の信託報酬を引き下げられないから、別のシリーズとして設定した代表例がeMAXISシリーズから派生したスリムシリーズです。

スリムシリーズは販路をネット証券主体とし、また、三菱UFJ国際投信の判断で信託報酬を引き下げることへの同意を求めるため、現在でも14社しか扱っていません。(2018年5月時点ではたったの8社だったので、それでも増えました。)対象顧客はネット証券を利用する、コスト意識の高い受益者です。

でも世の中には銀行で投資信託を買う人も一定数いるわけで、そういう人にもeMAXISシリーズよりコスト競争力のある商品を届けたい(その領域で商売したい)と思うのは自然です。そうして設定されたのが「つみたてんとうシリーズ」だと理解しています。信託報酬はほぼ値下げ前のスリムシリーズですが、スリムシリーズと違って業界最安を追求しません。

つみたてんとうシリーズの販売会社は47社もあります。うち32社は銀行です。

ちなみに三菱UFJ国際投信が扱っているベビーファンドは900本を超えているそうです。

つみたてんとうシリーズ

全部で7本あります。派生元はeMAXISシリーズで、スリムシリーズにはない商品もあります。また、全商品がつみたてNISA適格です。何しろ商品名が「つみたてなんとか」ですからね。

つみたてんとうシリーズ

売れ行きはどうでしょうか。設定来の総口数の推移で人気を確認します。

つみたて4資産均等バランス

純資産総額は15.24億円です。スリムシリーズにはない組成です。

つみたて4資産均等バランス

右肩上がりだし、上側に反り返っています。

つみたて8資産均等バランス

純資産総額は113.47億円です。

つみたて8資産均等バランス

右肩上がりだし、上側に反り返っています。スリムバランスの306億円にはかないませんが、その1/3以上もの純資産総額を集めているのは凄いと思います。

つみたて新興国株式

純資産総額は26.07億円です。

つみたて新興国株式

右肩上がりだし、上側に反り返っています。

つみたて先進国株式

純資産総額は56.38億円です。

つみたて先進国株式

右肩上がりだし、上側に反り返っています。

つみたて先進国株式 H型

純資産総額は1.51億円です。極端に売れていません。スリムシリーズにはないタイプです。

つみたて先進国株式 H型

右肩上がりだし、上側に反り返っていますが、純資産総額を増やすのは難しいですね。

つみたて日本株式(TOPIX)

純資産総額は49.36億円です。

つみたて日本株式(TOPIX)

この商品だけ変動が激しいですが、傾向としては増えています。スリム国内株式(TOPIX)の純資産総額は96億円なので、その1/2もあるのは善戦していると思いませんか。

つみたて日本株式(日経平均)

純資産総額は61.84億円です。

つみたて日本株式(日経平均)

右肩上がりだし、上側に反り返っています。スリム国内株式(日経平均)の純資産総額は31億円しかありませんから、つみたて日本株式(日経平均)はほぼ倍です。つみたてんとうシリーズを馬鹿にしてはいけません。

ただし、つみたてんとうシリーズが設定されたのが2017年8月16日なのに対し、スリム国内株式(日経平均)が設定されたのは2018年2月2日と約5ヶ月後でした。

スリムシリーズの売上高

次はスリムシリーズを三菱UFJ国際投信の売上高順に並べたものです。

スリムシリーズを三菱UFJ国際投信の売上高順に並べたもの

委託会社の列の数値は、信託報酬のうちの三菱UFJ国際投信の取り分です。

円グラフで見るとこうなります。

売上高上位4商品で全体の75%を超えます。先進国株式の信託報酬は激安ですが、それでも売上高トップです。

つみたてんとうシリーズの売上高

次はつみたてんとうシリーズを売上高順に並べたものです。

つみたてんとうシリーズを売上高順に並べたもの

円グラフで見るとこうなります。

スリムシリーズに設定のない2商品はふるいませんが、それを除けばバランス良く売れている気がします。

売上高を見比べると

スリムシリーズとつみたてんとうシリーズの売上高を見比べると、つみたてんとうシリーズが馬鹿にできない存在だと分かります。

上記表を並べます。

スリムシリーズの売上高

つみたてんとうシリーズの売上高

純資産総額の合計は1,669億円対323億円と5.1倍の開きがありますが、売上高の合計は9,315万円対3,115万円と2.99倍の差しかありません。投信ブロガーに話題にされなくても、3倍以上の数の販売会社で扱われ、ネット証券以外を嗜好する受益者から貴重な資金を地味に集めているのです。(他社に取られるぐらいなら、eMAXISシリーズの顧客を失うことになっても攻めるしかないという考えがあると想像します。)

つみたてんとうシリーズの存在意義

ネット証券を好む、コスト意識が高い人はスリムシリーズを選択するでしょう。でも世の中にはそうでない人も一定数存在し、実店舗を通して投信を買う受益者の受け皿としてつみたてんとうシリーズがあります。

スリムシリーズの方がよりローコストなだけ有利ですし、信託報酬を業界最安水準に対抗値下げしてくれる期待はスリムシリーズ特有のものです。でも、つみたてんとうシリーズの受益者を馬鹿にしてはいけません。少し高めの信託報酬を負担することで間接的にスリムシリーズを支えてくれているのです。

マザーファンドは同じだし、ファンドマネージャーも同じでしょう。異なる商品企画、価格設定、販売ルート、販売戦略で異なる受益者層にアクセスすることで、少ないスリムシリーズの売上を補完しています。巧妙な戦略と言えるでしょう。攻めなければ他社に取られていたかも知れないのですから。

つみたてんとうシリーズの受益者は、スリムシリーズの超ローコストという恩恵を享受している全ての人にとってありがたい存在なのです。

-インデックス投資

Copyright© 個人事業主が節税してインデックス投資 , 2019 All Rights Reserved Powered by STINGER.