インデックス投資

世界分散投資は安全で米国株式集中投資は危険ですか

2019年9月13日

リーマンショック後の10年間で見ると米国株式一強とも言える状態であり、近年手軽に米国株式インデックスに投資できるようになったことから、米国株式に集中投資する人も少なくありません。一方、インデックス投資の教科書的な著書には世界分散すべきと書かれていると、警鐘を鳴らす人もいます。

おそらく、米国株式集中投資を選択する人はそのパフォーマンスの高さに賭けているはずです。相応のリスクも負うことになりますが、その認識は人それぞれでしょう。では米国株式集中投資ではなくて、全世界株式への分散投資を選択する人はどうしてそうするのでしょうか。

  • 世界分散が良いと言われているから。
  • 米国株式集中投資は危険だと言われているから。

抽象的ですね。もっと具体的な確信があればいいのですが、そうでない場合、大切な資金を投資するのにそんな不明瞭な材料で判断していいのでしょうか。

全世界株式 vs 米国株式

インデックスファンドでの全世界株式への投資を身近なものにしたのは、楽天全世界株式のはずです。楽天全世界株式登場以前はVT(バンガード社のETF)が、「これ一本で全世界の株式に投資できる」と高い評価を受け、信仰に近い人気を得ました。そのVTがインデックスファンドで買えるようになったのは画期的でした。でも、楽天全米株式とのパフォーマンス差にがっかりした人も少なくないはずです。

次は設定直後を避けた2017年10月20日からのリターン比較です。

楽天全世界株式 vs 楽天全米株式

緑のラインの楽天全米株式の圧勝です。でもこれでは比較期間が短すぎますね。ではもっと前から比較するために本家であるVTとVTIのトータルリターンに登場してもらいます。仮想楽天全世界株式などと違って、コストは増量していません。VTとVTIの実力そのものの比較です。

VTとVTIの実力そのものの比較

緑のラインのVTIの圧勝です。リーマンショック後しばらくは大差ありませんでしたが、2012年頃から差が開き始めます。

ではVTIの受益者はこの高いリターンを得るために、VTよりも高いリスクに耐えたのでしょうか。次は月次換算したリスクの推移です。

月次換算したリスクの推移

大差ありません。「いやいや、過去のデータからリスクは計算できません。」と言われるかも知れませんが、では誰にも正確に予測できない未来の事象について、どう考えれば良いのでしょうか。

未来は過去の繰り返しではない

過去何年かのパフォーマンスを見ると米国株式が最強だから、米国株式集中投資で行く、という考え方に対して、今後も過去のパフォーマンスが維持される保証はないと良く言われます。確かにその通りで、どんなに過去を分析して未来に起こることを予想しても当たるとは限りません。でも歴史に学ぶという表現がある通り、過去の実績を無視すべきではないでしょう。

リーマンショック以降の比較だと(VTが設定されたのは2008年6月なのでリーマンショックより前からの比較は無理)VTIの圧勝ですが、それでも米国株式集中投資より全世界株式への分散投資の方が良いとする意見の根拠は何なのでしょうか。

  • 未来では、全世界株式の方が高いリターンが得られるかも知れないから?
  • 米国株式集中投資には取引価格の変動率の高さ以外のリスクがあるから?

全世界株式が米国株式に勝てない理由

VTがVTIに勝てなかった理由と言うべきですが、それは単純です。もちろんリーマンショック後から現在までの話であって、未来のことは分かりません。

  • 米国と日本を除く先進国株式のリターンは、米国株式のリターンより劣っています。
  • 新興国株式は、短い期間で見ると米国株式のリターンを凌駕しますが、長期間で見ると成長していません。
  • 国内株式は、リーマンショック後で見ると右肩上がりで成長していますが、過去27年間で見ると低迷しています。

米国株式以外の資産を混ぜれば混ぜるほど、リターンが劣化したのです。

次は先進国株式、新興国株式、国内株式の2008年4月からのリターン比較です。日興インデックスファンドシリーズに登場して頂きました。

先進国株式、新興国株式、国内株式の2008年4月からのリターン比較

赤のラインが先進国株式、青のラインが国内株式、緑のラインが新興国株式です。2013年以前は優劣をつけ難いですが、それ以降差が開き始めます。

儲かると思うから投資するのですよね

インデックス投資の目的が資産形成であるなら、儲からないと分かっているものには投資しませんよね。でも過去に儲かったかどうかは分かっても、未来のことは分かりません。そのためどう熟考しようが賭けになることは変わりません。

将来どの資産クラスが上昇するか分からないから全部均等に買っておくという考え方で組成され、高い人気を獲得したのが8資産均等型です。でもそのリターンは株式100%のインデックスファンドにかないません。リターンを追求するなら株式100%が良いです。(米国株式集中投資を懸念するように、株式集中投資を懸念する意見も聞かれます。)

では米国株式のみではなくて、米国と日本を除く先進国株式、新興国株式、国内株式にも投資する(選択できる組み合わせはいくつかあります)場合、その理由が次のどちらかなら分かります。

  • 投資する資産クラスの未来を信じている。(投資した方が儲かると思っている。)
  • その資産クラスにも投資した方が自分のリスク許容度に合う。

僕の場合

僕は過去の実績を重視していて、新興国株式と国内株式に投資しても、僕の存命中にその投資が報われることはないと予想しています。とても儲かると思えないのです。

一方で、米国と日本以外の先進国株式への投資よりも、米国株式のみへの投資の方が儲かる可能性は高いと正直思います。つまり、スリム先進国株式よりもスリムS&P500の方が儲かると思います。それでもなお、スリム先進国株式への集中投資を継続し、スリムS&P500に投資しない理由は論理的とは言えません。

  • 心理的にどうしても米国一国集中に不安を感じる。
  • MSCIコクサイのパフォーマンスは十分高いことが分かっている。

僕は基準価額の変動率として計算できるリスクは気にしていません。また、MSCIコクサイの6割以上は米国株式なので、米国株式が低迷すればMSCIコクサイも低迷します。その時、欧州、カナダ、オーストラリアにも投資していたことが奏功するかどうかは分かりません。

あえて具体例をあげませんが、米国経済だけが特殊な事情で長期低迷するような事態になる(=カントリーリスクが顕在化する)可能性にビビっているのです。もしそれが起こると僕の存命中に回復しないだろうなと思っているのです。

そうなった時に、欧州、カナダ、オーストラリアが成長すると、MSCIコクサイの米国比率が大きく下がります。時間はかかりますが、米国と日本以外の先進国にも投資したことが報われる数少ないケースになります。

そこまで極端でなくても、今後は米国株式のみより先進国株式の方が期待リターンが高いという予測もありますが、僕は信じていません。スリム先進国株式に集中投資している身としては歓迎すべきかも知れませんが、僕の期待はこうです。

  • 米国株式には現在の絶好調を維持して欲しい。(暴落するのはOKです。)
  • 米国と日本を除く先進国株式にはこれまで通り頑張って欲しい。

だから、米国株式集中投資に切り替えたRさんと僕の投資成績を10年後に比較した時に、Rさんの方が大儲けしていたとしても後悔しません。「Rさんは高いリスクを負った分だけ大儲けできたし、僕も十分儲けることができて良かった」と思いたいのです。Rさんは儲からなかったけど僕は儲かったというのは、MSCIコクサイでは無理な話でしょう。

ジョン・C・ボーグル氏は

これは良く知られた話ですが、バンガード社は世界分散投資を推奨しているものの、バンガード社を創設したジョン・C・ボーグル氏は米国集中投資をしていました。

著書「インデックス投資は勝者のゲーム」の中でも株式はS&P500インデックスが良いと書いています。教科書を執筆するような著名人全員が世界分散投資を推奨しているわけではありません。(なお、ジョン・C・ボーグル氏は米国債券にも投資していました。)

それから、バンガード社が世界分散投資より米国集中投資を勧めるわけがないことは、ちょっと考えれば分かります。それはトヨタが「現在のガソリン価格ならガソリン車の方がコスパが良い」と言うのと同じで、会社の利益にならないからです。

主張通りに投資しているとは限らない

書籍でもブログでも、作者が主張・推奨している投資手法通りに投資しているとは限りません。自身のポートフォリオを公開していない場合、分かるのは本人だけです。そのため、教科書に書かれていることを鵜呑みにしない方がいいと思います。

そもそも国籍や年収や金融資産が違う人が書いた書籍の内容をそのまま真似る前に、自分にとって最適解なのかどうか他の情報とも突き合わせて考えるべきです。

結論

ブログタイトルへの回答は、信じるものによる、となります。逃げてますね。逃げないで答えるなら、五十歩百歩ですね。俯瞰すればどっちも世界経済と運命を共にするのです。

いろんな意見、主張、考え方がありますので、できるだけ幅広く情報収集して自分が一番納得できる、後悔する可能性が一番低いと思われるものを選択すれば良いと思います。でも投資経験なしにその選択肢に辿り着くのは難しいので、数年投資してみてから方針を大きく転換するのも良いでしょう。

どれを選択してもそこそこ高いリスクは負わねばなりません。何しろリスク資産に投資して、大切な資金を長期間リスクにさらすことで高いリターンを得ようとするわけですから。

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