インデックス投資

分配金の抑制による課税の繰り延べ効果は素晴らしい

2019年10月26日

次の記事で、eMAXISシリーズは今後も分配金を抑制する方針を維持すると書きました。

株式に投資すると多くの場合配当金が得られます。たとえばS&P500種指数をベンチマークにしているVOOを自分で買った場合、ETFは必ず配当金を出さねばならないルールなので、年4回配当金がドルで口座に入金されます。その際、特定口座(源泉徴収あり)だと、配当金は米国で10%課税された後国内で20.315%課税されます。この配当金を自分で再投資するとしても、ETFは一株単位でしか買えないし、購入時手数料がかかるため、総じて配当金の再投資効率がすごく悪いです。これが、僕が海外ETFを嫌う理由のひとつです。

では、日本の良質なインデックスファンドがどうしているかと言うと、受益者のために税務リスクを負った上で分配金を抑制してくれています。たとえば、楽天全米株式はVTIから年4回もらえる、米国での10%課税後の配当金を再投資しています。そしてこれまでのところ分配金を出していません。本来配当金にかかるはずだった20.315%の譲渡税はいつかかるかと言うと、資産を売却した時です。それまで課税を繰り延べできるわけです。

おそらく、SBIバンガードS&P500も、VOOから年4回もらえる配当金について同じ扱いをするものと思われます。(次の配当金は年末にもらえるので、年明けにははっきりします。ちなみに、SBIバンガードS&P500の設定日は、VOOの配当金の権利落ち日というきわどいものでした。もしかすると9月分の配当金もちゃっかりもらっているかも知れません。)

VOOの配当金実績

次はVOOの配当金の利率の推移です。米国での10%課税後です。

VOOの配当金実績

2014年以降は1回あたり0.4から0.5%で、年4回もらえるので年平均で見ると2%に少し足りない程度です。

河童証券登場

河童証券がVOOを買うだけのインデックスファンドを組成したとします。2種類あります。

  • タイプAは配当金を抑制します。楽天全米株式と同じです。
  • タイプBは配当金を年4回出します。VOOからもらえる配当金は資産に取り込まずにそのまま受益者に分配します。

AさんはタイプAに投資します。BさんはタイプBに「配当金再投資型」で投資します。どちらも特定口座(源泉徴収あり)です。AさんとBさんが将来得られるリターンにどれぐらいの差が生まれるでしょうか。

控え目なシミュレーション

配当金を除く期待リターン(キャピタルゲイン)を年率4%、配当金の年利(米国10%課税前)を2%の控え目な条件でシミュレーションしました。2020年年初から2029年末までの10年間です。分かりやすくするため、AさんもBさんも2020年年初に1万円投資し、10年間ガチホしたとします。(出てくる金額を現実味のあるものにするには100倍するといいと思います。)

次は評価額の比較です。

評価額の比較

赤のラインがタイプA、緑のラインがタイプBです。青のラインはリターン差です。

評価額で見ると、10年間で6%ポイントほどの差が生まれています。でもこれは売却時の課税前です。

課税の繰り延べ効果

次は売却時の課税後の手取り額の比較です。縦のスケールを変えています。

売却時の課税後の手取り額の比較

青のラインは複利効果で弓なりに曲がっています。

10年間で1%ポイント強の差が生まれています。同じ金額を投資し、同じだけのリスクを負ったのに、Aさんの方が(わずかですが)得をしました。

これが課税の繰り延べ効果です。少ないですか?年平均だと0.1%ポイントです。SBIバンガードS&P500の信託報酬率より高いですよ。

VOOの過去の実績

VOOが設定されたのは2010年9月です。過去10年の米国株式は絶好調でしたが、それはVOOの取引価格の推移を見ても分かります。

次はVOOの2011年年初からの取引価格の推移です。取引価格なので、配当金を一切含みません。円換算しています。

利益率は207%もあります。単純に平均すると年率23%にもなります。2020年からの10年間が同じくらい良いと願うのには無理があるかも知れません。仮に期待リターンが年率8%だったらどうなるでしょうか。

期待リターン年率8%の場合

青のラインの弓なりの度合いが上がりました。10年間で2.5%ポイントを超える差が生まれました。

課税の繰り延べが期待するのは複利効果

タイプAとBの違いは、配当金への課税を今するか後でまとめてするかしかありません。なのにどうしてこのように無視できない差が生まれるかと言うと、配当金の国内課税されなかった分も基準価額の上昇の恩恵を複利で受けられるからです。非課税口座でない限り、最後売却時に利益に課税されてしまうものの、複利効果がもたらす恩恵は圧倒的です。

次は最初に出た控え目な条件のシミュレーション期間を20年にしたものです。

控え目な条件のシミュレーション期間を20年にしたもの

青のラインの弓なり度合いが半端ないです。10年間では2.5%ポイント程度の差だったのに、20年間では7%ポイント程度の差に広がっています。

分配金の抑制

投資信託にはいまだに「分配型」が生き残っているばかりか、現在でも普通に組成されています。資産形成を目的とした場合、分配型に経済的合理性はなく、つみたてNISAの適格要件には分配頻度が毎月でないもの、とあるぐらいです。いまどき分配型を組成すると聞いだだけで、そのシリーズの意図が透けて見えて嫌悪感をおぼえます。

事情があって、良質なインデックスファンドも目論見書で無分配型と主張できませんが、日本の証券会社の多くは受益者のために分配金を抑制してくれています。

この事と、特に長期保有時における課税の繰り延べ効果の素晴らしさについて多くの投資家に知って欲しいと思ってこの記事を書きました。

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