全世界株式

FOY2019優勝を記念してオール・カントリーのこれまでを振り返ります

2020年1月22日

スリム全世界株式(オール・カントリー)はFund of the Year 2019で2位に大差を付けて1位になりました。FOY2019に参加した投信ブロガーから、最も多くの支持を得たということです。現在は米国株式ブームであり、強気相場が継続していることから、リスクの高い投資がもてはやされる傾向にある中、全世界の株式に時価総額比で投資する商品が1位になったことを素直に評価します。

2位はスリム米国株式、3位はスリム先進国株式と、時代を反映したそれらしい結果だと言えるでしょう。

この記事では、オール・カントリーの優勝を記念して、誕生前からこれまでを振り返ります。組成、運用に関わった人は涙なくして読めない内容です。(冗談です。)

楽天全世界株式の躍進

スリムシリーズ第一弾が設定されてから7ヶ月後に登場したのが、楽天全世界株式です。次はスリム先進国株式と楽天全世界株式の総口数の推移です。右端は2018年3月末です。

スリム先進国株式と楽天全世界株式の総口数の推移グラフ

楽天全世界株式は、税抜き信託報酬を1.095%に引き下げてからのスリム先進国株式並の人気を獲得しました。楽天全世界株式が設定直後から高い人気を獲得できた背景には、当時人気の高かったVT(バンガード社のETF)を、インデックスファンドとして手軽に買えるようにしたことがあるはずです。

でも当時は、「全世界株式」と言えば先進国株式+新興国株式を指していたようです。たとえばeMAXIS全世界株式には、カッコ付きの補足名がありませんが、先進国株式+新興国株式です。これのスリム版は、スリム全世界株式(除く日本)です。これが設定されるのは既定路線だったとして、当時投信ブロガーは日本を含む全世界株式に、時価総額比で投資する、楽天全世界株式の対抗となる商品を熱望していました。

不発だった3地域均等型

ところが三菱UFJ国際投信が出した答えは違っていました。2018年4月3日にスリム全世界株式(3地域均等型)を設定したのです。そして当時、ブロガーミーティングで「時価総額比の全世界株式の予定はない」と明言して、出席者の多くをがっかりさせました。

次は楽天全世界株式、スリム全世界株式(除く日本)、スリム全世界株式(3地域均等型)の、設定来の総口数の推移です。右端は2018年8月末です。

楽天全世界株式、スリム全世界株式(除く日本)、スリム全世界株式(3地域均等型)の、設定来の総口数の推移グラフ

緑のラインが除く日本です。この組成はeMAXISシリーズの実績から、ある程度売れることは分かっていましたが、楽天全世界株式には遠く及びません。

青のラインの3地域均等型は、不発でした。現在でも、スリムシリーズらしくない不人気商品です。その組成が受け入れられなかったということです。eMAXISバランス(8資産均等型)が高い人気を獲得し、そのスリム版が設定直後から安定して売れたのとは対照的です。

ど真ん中で勝負

オール・カントリーは2018年10月31日に設定されました。FOY2018の投票対象になるには、この日までに設定されていなければならない、という特別な日です。

オール・カントリーの設定に関して、三菱UFJ国際投信は勝負にこだわりました。3地域均等型の国内株式がTOPIXをベンチマークにしていた(よって既存のマザーファンドが利用できた)ように、その33.3%ずつの比率を時価総額比である82%、11%、7%に変更するだけでオール・カントリーを組成できたわけですが、三菱UFJ国際投信の代田取締役は「国内株式をTOPIXで代用するのは潔しとしない」と言われていました。そうして選択肢に上がったベンチマークはMSCI ACWIとFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスになりましたが、三菱UFJ国際投信はMSCI ACWIを選択しました。

MSCI ACWIの国内株式部分はMSCIジャパンですが、三菱UFJ国際投信はそのマザーファンドを運用していなかったのでわざわざ新設しました。TOPIXで代用する方がはるかに楽な道だったはずですが、あえて困難な(投資額が大きくなる)道を選択したわけです。代田取締役は「ど真ん中で勝負したかった」とも言われました。

国内株式をTOPIXで代用せず、MSCIジャパン指数に連動するマザーファンドを新設したことについては、投信ブロガーの間でも賛否両論ありました。否定的だった人が気にしたのは次の2点でした。

  • マザーファンドの純資産総額が十分な額になるまでは安定した運用が期待できない。
  • 明らかに、TOPIXで代用するより、コスト的に不利である。

でも結果的に、この心配は杞憂で終わりました。

FOY2018で3位

FOY2018の投票期間は、オール・カントリー設定後の1ヶ月しかありませんでした。にもかかわらずいきなり3位入賞でした。これは、投信ブロガーであるにも関わらず、設定されて1ヶ月も経たない、実際のコストが分かっていない商品にたくさん投票したということです。実績は無視なので、見込みで行う人気投票と言ってもいいでしょう。そういうことは楽天全世界株式、楽天全米株式にも程度の差はあれ見られたことですが、(スリムシリーズの1本としての)オール・カントリーへの期待の高さが分かります。

逆に、高コストが嫌気されたのか、FOY2017で1位だった楽天全世界株式はFOY2018で9位に下落してしまいました。

順調だった運用

オール・カントリー設定後1ヶ月での運用状況を確認しています。順調そうでした。

設定後4ヶ月でも確認しています。順調だと断言できました。

低水準のトータルコスト

第一期運用報告書から計算したトータルコストは99%の人にとって期待通りの低水準でした。厳しい目で見ると、期待よりわずかに高い水準でした。

設定当初、新設したMSCIジャパンマザーファンドのコスト負担を心配する声もあったわけですが、三菱UFJ国際投信はうまく切り抜けたようです。

トータルコストが高かったら、FOY2019で1位を獲得するのは無理だったでしょう。

高い人気を獲得

次は楽天全世界株式とオール・カントリーの、設定来の総口数の推移です。右端は2020年1月17日です。

楽天全世界株式とオール・カントリーの、設定来の総口数の推移グラフ

楽天全世界株式は、FOYでは順位を1位→9位→16位と落としましたが、一般の受益者の支持は盤石です。このことからも、FOYの投票結果と一般の受益者の行動は同じとは限らないと、意識すべきです。でないと間違った判断をしてしまいます。

緑のラインのオール・カントリーは反り返っています。総口数の増加ペースが上がっているからです。FOY2019で1位になったことで、それが効果的に広告宣伝に利用され、さらに受益者を獲得すると予想されます。

でも、現状では楽天全世界株式に追いつくのは容易ではありません。

不発だったたわら全世界株式

ほとんど話題に上がりませんが、アセットマネジメントOneは、オール・カントリーに約9ヶ月遅れでたわら全世界株式を設定しました。正直驚きましたが、ベンチマークはオール・カントリーと同じでした。MSCIジャパン指数に連動するマザーファンドを持っていなかったので、三菱UFJ国際投信同様新設が必要だったからです。

たわら全世界株式で僕がもうひとつ不思議に思ったのは信託報酬です。オール・カントリーより0.022%ポイント安い、税抜き0.120%としたのです。その程度の信託報酬差なら、三菱UFJ国際投信は間違いなく追随するはずだからです。信託報酬が同率になると、たわら全世界株式の優位性はなくなります。そして期待通りにオール・カントリー(を含む全世界株式インデックスファンド3種)の信託報酬を税抜き0.120%に引き下げました。

次はオール・カントリーとたわら全世界株式の、設定来の総口数の推移です。

オール・カントリーとたわら全世界株式の、設定来の総口数の推移グラフ

たわら全世界株式は右下にかろうじてその存在が認識できる程度です。

たわら全世界株式だけをプロットしました。

たわら全世界株式の設定来の総口数の推移グラフ

急速に頭打ちになる、典型的なダメパターンです。純資産総額は2.09億円しかありません。

オール・カントリーが売れたのを見て、同じ組成で信託報酬を下げて発売したものの、オール・カントリーは対抗値下げで(現在では)たわら全世界株式より安くなってしまい、結果的に人気の獲得に失敗しました。この業界の厳しさを示す顕著な例と言えます。

SBI全世界株式

SBIアセットマネジメントは2019年9月5日に、SBI全世界株式の信託報酬を税込み0.150%から0.1090%(税率8%)に引き下げると発表しました。スリムシリーズはたわら全世界株式の信託報酬税抜き0.120%に対抗して、全世界株式3兄弟の信託報酬を同率に引き下げたばかりでした。

ちょうどその頃、SBIバンガードS&P500に対抗してスリム米国株式(S&P500)の信託報酬を引き下げられるか?という状況だったからでしょう、SBI全世界株式への対抗値下げの発表が遅れましたが、オール・カントリーを含む全世界株式3兄弟は、税抜き信託報酬をSBI全世界株式と同率の0.104%に引き下げました。

次はSBI全世界株式とオール・カントリーの、設定来の総口数の推移です。緑のラインがSBI全世界株式です。

SBI全世界株式とオール・カントリーの、設定来の総口数の推移グラフ

SBI全世界株式のベンチマークは、楽天全世界株式と同じFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスですが、SBI全世界株式は楽天全世界株式の低コスト版ではありません。

このことを話題にするブロガーはほとんどいませんが、それでも僕はSBI全世界株式が嫌いです。SBI全世界株式の純資産総額は52.75億円ですが、大半の受益者は自分が何に投資しているのか分かっていないと思います。

除く日本を追い抜く

次は除く日本とオール・カントリーの設定来の総口数の推移です。除く日本を(純資産総額でも)追い抜きました。日本を含む全世界株式に時価総額比で投資する組成の、人気の高さが良く分かります。

除く日本とオール・カントリーの設定来の総口数の推移グラフ

ラインの形状から、今後差が広がることが予想されます。ちなみに、除く日本はFOY2019で13位でした。

残念だった制度改悪

SBI全世界株式への対抗値下げにより、スリム全世界株式3兄弟(除く日本、3地域均等型、オール・カントリー)の、受益者還元型信託報酬の削減幅が1/10に減ってしまいました。

スリム全世界株式3兄弟(除く日本、3地域均等型、オール・カントリー)の、受益者還元型信託報酬の削減幅の変更内容一覧表

ここまで減ると数字の遊びレベルで、現実の世界ではその恩恵を実感するのは無理です。

賭けに勝ったオール・カントリー

新たに組成するインデックスファンドが売れるかどうかは、実際に売ってみないとわからないものです。でしょ。オール・カントリーは組成にあたってMSCIジャパンのマザーファンドを新設するというリスクを取りました。結果、その賭けに勝って高い人気を獲得しました。FOY2019での優勝に最も歓喜したのは、このリスクを取ることを決断した人達かも知れません。

今後、純資産総額の伸びが、楽天全世界株式と比較してどうなるのか、推移を見守るのが楽しみです。

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