同じマザーファンドを利用するけど、信託報酬と販路を変えたシリーズを組成するのは、投資信託では普通にあります。たとえば、つみたてんとうシリーズはスリムシリーズと同じマザーファンドを利用しますが、信託報酬はスリムシリーズよりちょっと高めの設定で、引き下げを一度も行っていません。対象顧客は金融機関の窓口を好む人です。ネット証券の利用者なら、同じ資産に投資するものがスリムシリーズにあるなら、そちらを買う方が有利です。
ダイワつみたてインデックスシリーズは、同じ思想で組成されたと思われます。iFreeシリーズと同じマザーファンドを利用しますが、扱っているのは大和証券のみです。
ダイワつみたてインデックス外国株式
ダイワつみたてインデックス外国株式は2018年8月16日に、税抜き信託報酬0.205%で設定されました。iFree外国株式は0.19%でしたので、それより安くはできないとしても、つみたて先進国株式が0.20%だったことを考えると中途半端な印象です。
その後1回、微妙な水準の0.140%に引き下げています。最安水準ではないものの、iFree外国株式より安くなってしまいました。
もう一つ、iFree外国株式と大きな違いがあります。ダイワつみたてインデックス外国株式は、つみたてNISA適格ではありません。あり得ないと思いませんか。条件的にはつみたてNISA適格のはずなので、意図的に適格申請していないということです。
また、iDeCoナビによると、大和証券のiDeCo口座で扱われています。(iFree外国株式はiDeCoで扱われていないようです。)
ダイワつみたてインデックス外国株式の運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。iFree外国株式と比較しています。
隠れコストはiFree外国株式同様に安いです。本当なら素晴らしいですが、リターン比較の結果から、iFree外国株式の隠れコストはそこまで安くはないと思われています。ダイワつみたてインデックス外国株式の隠れコストはどうでしょうか。
ダイワつみたてインデックス外国株式とiFree外国株式のリターン比較
次はダイワつみたてインデックス外国株式の税抜き信託報酬が0.140%に引き下げられた2019年8月24日から、株価暴落開始直前の2020年2月20日までの、iFree外国株式とのリターン比較です。
青のラインはリターン差で、ダイワつみたてインデックス外国株式ーiFree外国株式です。期待通り右肩上がりで推移しています。
計算上、ダイワつみたてインデックス外国株式のトータルコストはiFree外国株式より0.054%ポイント安いです。次はダイワつみたてインデックス外国株式の運用コストを、年率0.05%ポイント増量したものとの比較です。
青のラインはほぼフラットになりました。これは期待通りです。
つみたて先進国株式とダイワつみたてインデックス外国株式のリターン比較
つみたて先進国株式はスリム先進国株式と同じマザーファンドを利用しますが、税抜き信託報酬は0.20%固定です。業界最安水準を目指さないのがコンセプトです。次はダイワつみたてインデックス外国株式とのトータルコスト比較です。
ダイワつみたてインデックス外国株式の方が信託報酬が安い上に、隠れコストも安いのでトータルコストには0.094%ポイントの差があります。では現実の基準価額にはそれだけの差があるでしょうか。
次は先ほどと同じ期間における、つみたて先進国株式とダイワつみたてインデックス外国株式のリターン比較です。
青のラインはダイワつみたてインデックス外国株式ーつみたて先進国株式です。きれいな右肩上がりの直線ではありません。トータルコスト差と比較期間を考えると、こうなるのも理解できます。
ダイワつみたてインデックス外国株式の運用コストを増量して、青のラインが右肩上がりでも右肩下がりでもなくなる値を探しました。次は年率0.06%ポイント増量したものとの比較です。
このことから、トータルコストに運用報告書から計算した0.094%ポイントまでの差はないと思われます。おそらく、iFree外国株式同様、ダイワつみたてインデックス外国株式の実際の隠れコストは運用報告書から計算した値より、いくらか高いでしょう。
売れていません
次はダイワつみたてインデックス外国株式の設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は8.82億円しかありません。
ラインの形状は絶望的ではないものの、増加ペースが小さすぎます。
つみたて先進国株式もプロットすると人気の違いに愕然とします。これでは商売になりません。
つみたて先進国株式(緑のライン)は反り返っており、順調に人気を獲得していることが分かります。純資産総額は134億円です。
ネット証券の利用者から見れば、ダイワつみたてインデックス外国株式もつみたて先進国株式も、選択する経済的合理性のないものです。でも金融機関の窓口を利用する顧客は一定数存在し、その人達から資金を集めるのに必要なのは、信託報酬の安さだけではないということです。
評価:低コストでも売れないでしょう
iFree外国株式よりダイワつみたてインデックス外国株式の方が、信託報酬が安いという事実は、この業界の歪みを表していると言えます。おそらく、大和アセットマネジメントはダイワつみたてインデックス外国株式で儲けるつもりはなく、大和証券で他の商品を買ってもらうためのきっかけの一つに位置付けていると思います。それ以外に、大和証券でのみ扱い、つみたてNISA適格でない理由に思い当たらないのです。
ダイワつみたてインデックス外国株式は、MSCIコクサイ連動ファンドとしては低コストで運用も安定していていい商品と言えます。が、ネット証券を利用できる人向けの商品ではありません。