MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本)をベンチマークにしている商品を探しても、eMAXIS全世界株式より古いものが見つかりません。MSCIコクサイとMSCIエマージング・マーケットをベンチマークにしている商品はたくさん見つかります。MSCIコクサイとMSCIエマージング・マーケットのマザーファンドがあれば、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本)の組成は難しくないはずなのに、どうしてなのでしょうか。単純にニーズがなかったからでしょうか。
一般投資家の要望から生まれたeMAXIS全世界株式
eMAXISシリーズが登場したのは2009年10月でした。eMAXIS全世界株式はそれから9ヶ月遅れて設定されました。当時のプレスリリースによると、一般投資家の要望から生まれたようです。
この度、三菱UFJ投信はeMAXIS専用サイト(http://maxis.muam.jp/)にて実施した「eMAXIS ファンド追加アンケート」の最終結果に基づき、新たに『eMAXIS 全世界株式インデックス』を設定いたします。 今後も皆さまとの対話を重視しながら、商品性の更なる向上に努めて参ります。
引用:プレスリリース
次はそのアンケート結果です。
引用:プレスリリース
全世界株式(除く日本)が1位、全世界株式(含む日本)が2位です。現在のスリム全世界株式(除く日本)とスリム全世界株式(オール・カントリー)の人気を考えると、一般投資家の嗜好も時代で変わるってことが分かりますね。
また、飛ぶ鳥を落とす勢いのS&P500連動商品の得票数は、(除く日本)の29%しかありませんでした。この10年で世界は大きく変わったのですね。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。
スリム全世界株式(除く日本)と比較すると、スリムシリーズの信託報酬の安さを再認識できます。
わずか10年でここまで安くなるとは、誰も想像できなかったことでしょう。
隠れコストは妥当な水準か
eMAXIS全世界株式は、先進国株式と新興国株式に時価総額比で投資しますが、それは2つのマザーファンドを売買することで実現されています。そのマザーファンドは、eMAXIS先進国株式、eMAXIS新興国株式のものと同じです。
引用:目論見書
一般的に、新興国株式インデックスの隠れコストは、先進国株式インデックスのものより高いです。現在の先進国株式と新興国株式の比率で、eMAXIS先進国株式とeMAXIS新興国株式の隠れコストを按分すると、こうなります。
隠れコストは0.0818%になりました。eMAXIS全世界株式の隠れコストは0.0812%なので、妥当な水準です。
スリム全世界株式(除く日本)とのリターン比較
次はスリム全世界株式(除く日本)の運用が安定した、2018年4月16日から2020年6月26日までの、eMAXIS全世界株式とのリターン比較です。
青のラインはスリム全世界株式(除く日本)ーeMAXIS全世界株式です。株価暴落時にヘタっているのを除けば、きれいな右肩上がりで弓なりに曲がった直線です。マザーファンドが同じなので、期待通りの結果と言えます。
スリム全世界株式(除く日本)の信託報酬は複数回引き下げられていますが、リターン差はおおむね期待通りでした。
Fund of the Yearの順位
eMAXIS全世界株式は一般投資家の要望で設定されたのですから、Fund of the Yearでは上位入賞当たり前かと思いきや、そうでもありませんでした。設定された年度は4位でしたが、その後あっさり順位を落としてしまいました。人の気持ちは移ろいやすいものです。
eMAXIS全世界株式の後から設定された(除く日本)も、みな上位にとどまり続けることはできませんでした。
それはもっと人気のある資産クラスに投資する、魅力的な商品が登場したからですね。
人気を獲得するのは難しい
次はeMAXIS全世界株式の設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は86億円です。
eMAXIS先進国株式もプロットすると、eMAXIS全世界株式は人気を獲得できなかったことが良く分かります。
一般投資家が要望する商品と、売れる商品は同じではないってことですね。
eMAXIS全世界株式は、後発の、ベンチマークが同じ商品にあっさり抜かれてしまいました。
緑のラインは三井住友DC全海外株、青のラインは野村つみたて外国株投信、紫のラインはスリム全世界株式(除く日本)です。
みんな儲かっていません
次はMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本)をベンチマークにしている代表的な4商品から、運用会社が得る売上を試算したものです。
みんな儲かっていませんが、eMAXIS全世界株式の売上はスリム全世界株式(除く日本)や野村つみたて外国株投信より多いです。儲かるようにするには、圧倒的な規模の資金を集めるしかないわけです。
評価:スリム全世界株式(除く日本)でリベンジを
eMAXIS全世界株式は高コストなので、今から買う価値はありません。スリム全世界株式(除く日本)一択です。
eMAXIS全世界株式は一般投資家からの要望に応える形で設定したものの、満足な人気を獲得できませんでした。でも設定時の想いは、スリム全世界株式(除く日本)に受け継がれていることでしょう。
つみたてんとうシリーズに設定されていないことから、(除く日本)はマニアックなベンチマークだとの認識かも知れません。それは商品数の少なさからもうかがえます。