eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)が設定直後から高い人気を獲得できたのは、先輩にあたるeMAXISバランス(8資産均等型)が「8資産均等型バランスファンド」の市場を開拓してくれたからです。eMAXISバランス(8資産均等型)は高コストなので新規投資する価値はありませんが、今でもホールドしてくれている受益者は、eMAXISシリーズの売上に貢献しているありがたい存在です。
以下、eMAXIS Slimをスリムと表記します。
eMAXISバランス(8資産均等型)
2011年10月31日に、税抜き信託報酬0.50%で設定されました。競合商品より安い、意欲的な水準でした。また、eMAXISシリーズの該当する8資産の商品を自分で組み合わせるより安かったです。その後、信託報酬は引き下げられていません。
この税抜き信託報酬0.50%は、2016年9月にiFree 8資産バランスが税抜き信託報酬0.23%で設定されるまで、8資産均等型の最安水準でした。
eMAXISバランス(8資産均等型)はつみたてNISA適格です。解約時信託財産留保額0.5%が設定されています。
組成内容
次の8資産に均等に投資します。
- 国内株式、先進国株式、新興国株式
- 国内債券、先進国債券、新興国債券
- 国内リート、先進国リート
人気を獲得できたのは、この美しい円グラフにあるとも言われています。
引用:目論見書
その真偽はともかく、どの資産クラスが値上がりするかは分からず、かつ、頻繁に順位が入れ替わるので、ならば8資産を均等に買えば良い、という考え方は分かりやすいです。
この8資産均等型という組成、僕が調べた範囲では、eMAXISバランス(8資産均等型)が初めてでした。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。同世代のバランスファンドと比較しています。
隠れコストは標準的です。これらバランスファンドは、セゾングローバルバランスと共に確かな一時代を築きました。が、セゾングローバルバランスを除いて、2016、7年ぐらいからよりローコストなファンドに世代交代が進みました。
それでも、eMAXISバランス(8資産均等型)が果たした役割は大きいものでした。
リターン比較
バランスファンドの組成は多様です。組成内容が異なるものは、同じ土俵でリターン比較しても建設的ではありません。単に過去の実績がどうだったかを示すだけだからです。それでも、比較結果見たいですよね。
基本、リターンが高いのは高いリスクを負っているからだ、ということを踏まえて、比較結果をご覧ください。比較期間はeMAXISバランス(8資産均等型)の設定直後を避けた、2011年11月15日から2020年7月3日までです。
セゾングローバルバランスとのリターン比較
次はeMAXISバランス(8資産均等型)とセゾングローバルバランスとのリターン比較です。
青のラインはeMAXISバランス(8資産均等型)ーセゾングローバルバランスです。どっちが有利かは時期によって変わります。
SBI資産設計オープン(資産成長型)とのリターン比較
次はeMAXISバランス(8資産均等型)とSBI資産設計オープン(資産成長型)のリターン比較です。
青のラインはeMAXISバランス(8資産均等型)ーSBI資産設計オープン(資産成長型)です。どちらが有利かは時期によって変わります。
世界経済インデックスとのリターン比較
次はeMAXISバランス(8資産均等型)と世界経済インデックスのリターン比較です。
この比較期間ではeMAXISバランス(8資産均等型)の方が有利に見えます。でも長期で見れば大差ないと言えるでしょう。
バランスファンドのリターンは本当に大差ないのか
次はバランスファンド4本と、eMAXIS先進国株式をプロットしたものです。団子状態なのがバランスファンド、ぶっちぎりで高いパフォーマンスを発揮しているのがeMAXIS先進国株式です。
バランスファンドはどれも変動率(リスク)が小さいですが、リターンも相対的に高くありません。組成内容の異なるバランスファンドは相応のリターン差を生みますが、年数の経過とともに手の届かないところへ行ってしまう株式100%インデックスから見れば、大したことはありません。
8資産の値動き
次は8資産の値動きと、それらを均等配分で合成、毎月リバランスしたもの(黒のライン)です。
リターンの低いグループは、債券と新興国株式(青のライン)です。リターンの高いグループは、先進国株式、国内株式とリートです。株式・リートと債券のリターンは極端に違うので、債券を含むバランスファンドはどうしてもリターンが低くなります。その分、相応に変動率(リスク)も小さくなりますけどね。
Fund of the Yearの順位
人気において、セゾングローバルバランスは別格です。人気はコストだけでは決まらないことを証明しています。でも普通は、コストは人気に関わる重要な要素で、高コストファンドが人気を維持するのは困難です。
eMAXISバランス(8資産均等型)も世界経済インデックスも、FOYに入賞できたのは限られた時期でしかありません。
2017年ぐらいからインデックスファンドのローコスト化が進み、並の高コストファンドは人気を落としました。
世代交代
次はeMAXISバランス(8資産均等型)の設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は303億円です。
2017年以降は増加ペースが落ち、近年はほとんど増えなくなりました。
セゾングローバルバランスと世界経済インデックスもプロットすると、実はeMAXISバランス(8資産均等型)の人気は限定的だったことが分かります。
でもeMAXISバランス(8資産均等型)の使命はスリムバランス(8資産均等型)に引き継がれています。8資産均等型バランスファンドでは一番人気です。
緑のラインのスリムバランス(8資産均等型)は先輩を軽く抜き去ってからも、人気を加速させています。
三菱UFJ国際投信が得る売上
次は三菱UFJ国際投信が信託報酬から得る売上を試算したものです。純資産総額はスリムバランス(8資産均等型)の方が多いのですが、手にできる売上はeMAXISバランス(8資産均等型)の方が倍あります。
いかに超ローコストファンドが儲からないかが分かりますね。同時に、高コストでありながらもeMAXISバランス(8資産均等型)を売却しないでホールドしてくれている受益者は、運用会社にとって大切な存在です。
評価:過去の商品です
8資産均等型バランスファンドを買うなら、スリムバランス(8資産均等型)一択です。eMAXISバランス(8資産均等型)は過去の商品であり、新規投資する価値はありません。でも、その売上は少ないながらもeMAXISシリーズ(スリムシリーズを含みます)を支えているのも事実で、eMAXISバランス(8資産均等型)の受益者はスリムバランス(8資産均等型)の受益者にとってありがたい存在です。