先進国株式

eMAXIS先進国株式の運用コストと評価

ネット証券を利用できる人にとって、eMAXIS先進国株式は過去の商品であり、これから投資する対象にはなりえません。でもeMAXIS先進国株式がなければ、スリム先進国株式の誕生もなかったでしょうし、販社の意向を確認することなく三菱UFJ国際投信の判断だけで信託報酬を引き下げられる仕組みも実現されなかったでしょう。

eMAXIS先進国株式

2009年10月28日に税抜き信託報酬0.60%で設定されました。eMAXISシリーズはどれも、設定来信託報酬を引き下げていません。

2013年12月に登場したニッセイ外国株式以降、ローコスト化競争が激化します。三菱UFJ国際投信の対抗策はeMAXISシリーズの値下げではなくて、スリムシリーズの新設でした。スリムシリーズは「業界最低水準の運用コストを目指す」が売り文句ですが、既存の受益者が保有しているeMAXISシリーズの信託報酬が据え置かれていることに、不満の声が多く聞かれました。気持ちは良く分かります。

eMAXIS先進国株式はノーロードで解約時信託財産留保額はなく、つみたてNISA適格です。

eMAXIS先進国株式のトータルコスト

次はeMAXIS先進国株式の運用報告書から計算したトータルコストです。スリム先進国株式と比較しています。

eMAXIS先進国株式のトータルコスト表

隠れコストはeMAXIS先進国株式の方がわずかに安いですが、これは変動するものです。

次は隠れコストの明細です。

隠れコストの明細表

特にこの項目が大きく違う、というものはありません。

隠れコストの推移

次は第6期以降の、運用報告書から計算したトータルコスト一覧です。

第6期以降の、運用報告書から計算したトータルコスト一覧表

隠れコストはけっこう変動しています。次は隠れコストの明細です。

第6期以降の隠れコストの明細表

グラフにすると良く分かります。

隠れコストの推移のグラフ

第7期と第8期が高いですが、売買委託手数料、有価証券取引税、保管費用のどれもが多めでした。いつも第6期のように少ないといいと思うのですが、どうしてこのような差ができるのか分かりません。売買比率とか、解約金額の多さとかとの相関を調べたのですが、有意性のある指標は見つかりませんでした。

まだ資金流入がある

次はeMAXIS先進国株式の設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は411億円です。

eMAXIS先進国株式の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

2016年をピークに減少に転じますが、下げ止まった後、いまだに資金流入があります。売却しないガチホ組がいるために減りづらいとしても、まだ資金流入があるというのは驚きです。明らかにトータルコストが安い、もっと有利な選択肢がいくらでもあるにも関わらずです。

ニッセイ外国株式とスリム先進国株式もプロットすると、eMAXIS先進国株式が過去の商品であることが良く分かります。

資金流出入額の累計の推移グラフにニッセイ外国株式とスリム先進国株式もプロット

SMTグローバル株式に勝てなかったeMAXIS先進国株式

eMAXIS先進国株式はFund of the Year 2009で5位に入賞しましたが、2010年度以降は選外でした。SMTグローバル株式が常連だったのとは対照的です。

次はSMTグローバル株式とeMAXIS先進国株式の設定来の資金流出入額の累計の推移です。緑のラインがSMTグローバル株式です。

SMTグローバル株式とeMAXIS先進国株式の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

見事な相似形です。先行していたSMTグローバル株式の税抜き信託報酬は0.74%でした。eMAXIS先進国株式はそれより十分に安い0.60%で設定されたにも関わらず、SMTグローバル株式の資金流入に大きな変化はありませんでした。

SMTグローバル株式がeMAXIS先進国株式に対抗値下げしたのは9ヶ月後でした。

SMTグローバル株式とeMAXIS先進国株式の信託報酬引き下げ履歴表

その後SMTグローバル株式は税抜き信託報酬を0.50%に引き下げますが、eMAXIS先進国株式は対抗しませんでした。こういうことがあったとは、資金流出入額の累計の推移グラフからは全く想像できません。受益者は信託報酬の差を気にしなかったのでしょうか。それとも、他の商品の存在を知らずに購入していたのでしょうか。

厳しい現実

次はスリム先進国株式とeMAXIS先進国株式から三菱UFJ国際投信が得る年間売上額を比較したものです。

スリム先進国株式とeMAXIS先進国株式の売上比較表

委託会社(=運用会社)の信託報酬に占める取り分は、文字通り桁が違います。スリム先進国株式の純資産総額は、eMAXIS先進国株式の2.5倍以上ありますが、年間売上額はeMAXIS先進国株式の方が3倍あります。

売上を増やすのに、信託報酬は上げられないので、純資産総額を増やすしかありません。eMAXIS先進国株式の純資産総額はもう今以上に増やすのは困難でしょうから、早くスリム先進国株式からまっとうな売上が得られぐらいの純資産総額にしたいところでしょう。

スリム先進国株式に乗り換えていたら

スリム先進国株式は業界最安水準の運用コストを目指すのに、eMAXIS先進国株式の信託報酬は高止まりしたままだということが分かった時点で、eMAXIS先進国株式を売却してスリム先進国株式を買い直す決断をした人がどれぐらいいるのかは分かりません。その決断は、eMAXIS先進国株式の含み益が多ければ多いほど難しいものになったでしょう。

その決断をしていたらその後どうなっていたかを、次の記事でシミュレーションしています。

積立シミュレーション

次はスリム先進国株式の設定来の、eMAXIS先進国株式とのリターン比較です。

スリム先進国株式の設定来の、eMAXIS先進国株式とのリターン比較グラフ

マザーファンドが同じで、運用が安定しているので青のラインはきれいな右肩上がりの直線です。株価暴落で凹んでいるのは想定通りです。

また、青のラインは複利効果により弓なりに曲がっています。理由はともかく、eMAXIS先進国株式をいまだに買っている人は、買う商品を変更するだけで、リスクそのままでリターンを改善できます。

次は2018年年初から、毎月初に5万円を積立投資した場合のシミュレーション結果です。数値は税引き前利益率です。

  • eMAXIS先進国株式:4.58%
  • スリム先進国株式,:5.32%

積立投資でも馬鹿にならない差が生まれました。

eMAXIS先進国株式も下方乖離を起こしていました

eMAXIS先進国株式だって乖離乖離を起こしたことがあります。どんなファンドだって長く運用していれば起こすものです。俺のイチオシファンドに限って、なんて思わない方がいいです。

そんなマニアックな話はいいやって方は、ここまで飛ばして下さい。

以下、グラフは2016年2月1日から10月28日までのリターン比較結果です。

Funds-i 外国株式との比較

Funds-i 外国株式とeMAXIS先進国株式のトータルコスト差は小さいので、その比較期間だと青のラインの傾きはわずかです。でも大きな段差ができています。

Funds-i 外国株式との比較グラフ

赤の矢印の位置で0.08%程度跳ね上がっています。Funds-i 外国株式が上方乖離を起こした可能性もありますが、それは多数決によって否定されました。

ニッセイ外国株式との比較

ニッセイ外国株式とのトータルコスト差は大きいので、青のラインは相応の傾きを持ちます。そして、問題の位置で段差ができています。

たわら先進国株式との比較

たわら先進国株式との比較結果にも段差があります。

たわら先進国株式との比較グラフ

これら比較結果から、eMAXIS先進国株式は0.08%ポイント程度の下方乖離を起こしたと断定します。

誰が買っているのか

まだ資金流入があることに僕は驚くわけですが、いくらなんでもネット証券の利用者ではないでしょう。金融機関の窓口で買うとしても、つみたて先進国株式の方が圧倒的に有利です。

次はeMAXIS先進国株式とつみたて先進国株式の販社を比較したものです。

eMAXIS先進国株式とつみたて先進国株式の販社を比較した表

出典:Yahoo!ファイナンス

ほぼ半分の販社は共通ですが、残り半分は片方しか扱っていません。そのため、eMAXIS先進国株式しか扱っていない金融機関で勧められて、他に確実に有利な選択肢があるにも関わらず、eMAXIS先進国株式を買ってしまうということがあるのかも知れません。

結論:高コストなので新規投資する価値はありません

eMAXIS先進国株式に投資するなら、マザーファンドが同じで信託報酬が圧倒的に安いスリム先進国株式に投資した方が断然有利です。ネット証券じゃなくて金融機関の窓口で買いたいのなら、つみたて先進国株式の方がいいです。いまどき、MSCIコクサイ連動ファンドに投資するのに、税抜き信託報酬が0.60%もする商品を選択する意味などありません。

でも、eMAXIS先進国株式の受益者が売上に貢献することで、間接的にスリム先進国株式を支えているのも事実です。

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