eMAXISバランス(8資産均等型)が何も考えずに8資産を均等に買うなら、eMAXISバランス(波乗り型)は頭を使って伸びている資産をより多く買います。前者はパッシブ運用、後者はアクティブ運用です。でも不思議なことに、頭を使わないパッシブ運用の方がパフォーマンスが高いことがあります。
eMAXISバランス(波乗り型)は、アクティブ運用の難しさを教えてくれます。
eMAXISバランス(波乗り型)
eMAXISバランス(8資産均等型)と共に、2011年10月31日に設定されました。信託報酬などの諸条件はeMAXISバランス(8資産均等型)と同じです。違うのは組成内容だけです。どちらも8資産に投資しますが、8資産均等型が文字通り均等配分であるのに対し、波乗り型は現時点で伸びている資産をより多く買うという選り好みをします。そうです、アクティブファンドです。(でも決まったアルゴリズムで実現できるので、運用は自動化されていて、ファンドマネージャーは頭を使っていないと思います。)
次は波乗り型の資産配分です。先進国リート、国内リート、新興国債券、先進国債券の比率は8資産均等型と同じ12.5%固定です。残りの4資産を5%に減らすことで、トレンドフォロー戦略に使う30%の余裕を作ります。
そしてトレンドフォロー戦略の30%の部分を25等分して、ユニット1から25と呼びます。このユニットに、伸びている資産を入れていくのです。
違う資産が入ることになる場合、伸びてなかった資産は売却されます。各ユニットは25営業日は維持され、25営業日ごとに入れ替えの判断が行われます。
よって、国内株式、先進国株式、新興国株式、国内債券の資産比率は5%から30%の間で変化します。
トレンドフォローの様子
次は運用報告書にあるモノクロの図に着色したものです。
出典:運用報告書
伸びている資産の比率を高くするのだから、国内債券の比率はほぼ5%じゃないかと思った方、不正解です。僕もそう思いましたよ。3地域の株式が皆マイナスなら国内債券が王者になるので、そもそもリターンが期待できない資産でありながらも、高い比率を獲得してしまいます。
次は同じ期間における、4資産の基準価額の推移です。
トレンドフォローによる資産配分比率の推移と一致しているようです。ではこの戦略、うまく行ったでしょうか。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。8資産均等型と比較しています。
ユニットの入れ替えにより売買が増えることから、隠れコストが高くなるのではないかと思ったのですが、違いました。運用報告書を入手できた過去6期分を見た限り、隠れコストは8資産均等型と変わりませんでした。
eMAXISバランス(8資産均等型)とのリターン比較
次は設定来のeMAXISバランス(波乗り型)とeMAXISバランス(8資産均等型)のリターン比較です。
青のラインはリターン差で、8資産均等型ー波乗り型です。2014年11月以降、少しずつ差が開き、その差を縮められない傾向が続いています。8年8ヶ月で20%ポイント近い差が生まれてしまっています。
バランスファンドのリターン比較では、長期で見れば大差ないことも多いわけですが、この比較では波乗り型は8資産均等型より不利だと言えるでしょう。
売れませんでした
次はeMAXISバランス(波乗り型)の設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は38億円です。eMAXISシリーズにしては少ないですね。
2017年からは増えなくなっています。eMAXISバランス(8資産均等型)もプロットすると人気の違いが良く分かります。
組成してみたものの、波乗り型はパフォーマンスが悪かったので、積極的なセールスをしなかった結果かも知れません。
次はeMAXISシリーズの主な商品(全てではありません)を純資産総額順に並べたものです。
波乗り型は不人気でしたね。でも4資産均等型はもっと不人気だったようです。
結論:トレンドフォロー戦略は失敗でした
過去8年8ヶ月の実績から判断すると、eMAXISバランス(波乗り型)が採用したトレンドフォロー戦略は失敗でした。何も考えずに8資産に均等に投資する、eMAXISバランス(8資産均等型)の方が高パフォーマンスでした。
これは8資産均等型の良さを教えてくれているのかも知れません。
なお、eMAXISバランス(波乗り型)は(現状)つみたてNISA適格になれません。アクティブファンドに求められる、次の2つの条件を満たせないためです。
- 純資産総額が50億円以上。
- 運用期間において、資産流入超の期間が2/3以上。
2つ目はギリギリセーフかも知れませんが、1つ目はアウトです。