グローバル3倍3分法ファンドが異常な資金流入を始めてから、他社から類似商品が多数販売されました。人気が出る組成が分かれば、それを真似たものが登場するのは、この業界の普通の光景です。2019年8月から12月の5ヶ月間に、(バリエーションを除いて)6商品が組成されました。まさに雨後の筍ですね。
そして、もうじき株価暴落が始まることも知らずに設定されたのが、グローバル5.5倍バランスファンドです。運用会社はグローバル3倍3分法ファンドと同じ、日興アセットマネジメントです。
更新情報
参照しているデータを最新版に更新しています。
グローバル5.5倍バランスファンド
圧倒的な純資産総額の獲得に成功したグローバル3倍3分法ファンドの設定から1年4ヶ月後の2020年2月12日に、レバレッジ強度を上げた姉妹品が登場しました。グローバル3倍3分法ファンドの税抜き信託報酬は0.44%で値ごろ感がありましたが、グローバル5.5倍バランスファンドは0.99%と他社の類似商品を見て上げてきた印象です。
グローバル3倍3分法ファンドには1年決算型と隔月決算型がありますが、グローバル5.5倍バランスファンド1年決算型だけでした。その後、毎月分配を行う(予想分配金提示型)も組成されました。ターゲット層が透けて見えます。
- 販売手数料は税抜き3%を上限にして販売会社が設定可能で、金融機関を選ばないと徴収されてしまいます。
- 信託財産留保額はありません。
- 信託期間は約10年で2029年12月21日までです。
もちろんつみたてNISA適格ではありません。
グローバル3倍3分法ファンドは当初信託期間10年でしたが、無期限に変更されました。グローバル5.5倍バランスファンドも多額の資金を集めることができれば、無期限に変更されるかも知れません。
16年で25倍ですか
レバレッジ型バランスファンドは煽情的なシミュレーション結果を喧伝するのがお約束になっています。競争ですからね、他社がやっているからうちもやれってのは、営業部門の口癖です。
グローバル3倍3分法ファンドは、2003年3月末から2018年9月末の約15年で10倍以上とありました。グローバル5.5倍バランスファンドは2003年3月末から2019年11月末の約16年で25倍でしょうか。意外なことに、販売用資料にその何倍のデカい表示がありませんでした。
引用:販売用資料
仕組み
次の図は目論見書からの引用です。グローバル3倍3分法ファンドのレバレッジ強度を上げただけではありませんでした。投資対象に金が追加され、資産配分比率も変更されています。
値動きのイメージも説明されていますが、全く理解できません。
グローバル3倍3分法ファンドは複数の投資信託証券に投資するファンド・オブ・ファンズ方式でしたが、グローバル5.5倍バランスファンドはファミリーファンド方式に変更されました。
高コストになりがちなファンド・オブ・ファンズ方式から、受益者にメリットのあるファミリーファンド方式に変更したことは高く評価します。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。グローバル3倍3分法ファンドと比較しています。
グローバル5.5倍バランスファンドのトータルコストは1.288%と、グローバル3倍3分法ファンドの2倍です。高いですね。その高さに見合うパフォーマンスは得られているでしょうか。
リターン比較
グローバル5.5倍バランスファンドが設定されたのはコロナショックによる株価暴落が始まる9日前でした。タイミイング的には最悪だったかも知れません。
いつもならリターン比較するのに設定直後は避けるのですが、この記事ではあえてグローバル5.5倍バランスファンドの設定日から比較しています。右端は2022年3月25日です。
赤のラインがグローバル5.5倍バランスファンド、緑のラインが比較対象です。青のラインはリターン差で、グローバル5.5倍バランスファンドー比較対象です。グラフのスケールは同じです。
スリム米国株式(S&P500)との比較
株価暴落時の下落率はスリム米国株式(S&P500)より大きかったですが、回復のペースが速かったです。が、2020年8月以降の上昇率はスリム米国株式(S&P500)と変わらず、劣後することもありました。2022年は冴えないです。
このパフォーマンスなら、わざわざ高い運用コストを負担する意味を感じないです。
グローバル3倍3分法ファンドとの比較
大先輩であるグローバル3倍3分法ファンド(1年決算型)との比較です。
グローバル3倍3分法ファンドは株価暴落後のパフォーマンスが期待はずれです。コロナショックからの回復は速かったものの、2020年8月以降青のラインは横ばいで推移していました。パフォーマンスはグローバル3倍3分法ファンドと変わらなかったということです。それでもこの比較期間で見ると、グローバル3倍3分法ファンドに勝っています。
次はスリム米国株式(S&P500)とグローバル3倍3分法ファンドの比較です。
赤のラインがスリム米国株式(S&P500)です。株価暴落開始後、グローバル3倍3分法ファンドはスリム米国株式にすら負けています。
逆に言えば、グローバル5.5倍バランスファンドの組成はこの株価暴落に(2020年7月までは)うまく対処できた、がその後は期待したほどではなかった、ということですね。
楽天米国レバレッジバランスとの比較
楽天米国レバレッジバランスは株価暴落時の下落率が小さかったです。グローバル5.5倍バランスファンドはその高い回復力で楽天米国レバレッジバランスに追い付きますが、その後は互角です。
米国分散投資戦略ファンド(5倍コース)との比較
米国分散投資戦略ファンド(5倍コース)の残念さが良く分かります。
人気は頭打ち
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は101億円です。
設定直後の資金流入は多かったのですが、すぐに株価暴落に見舞われます。その後一定のペースで資金流入が続いていましたが、2020年10月以降は頭打ちです。先代のグローバル3倍3分法ファンドの成功から見ると期待ハズレですが、先代も株価暴落後は資金流出が止まらなかったので、この状況はやむを得ないでしょう。
次は先代もプロットしたものです。
株価暴落による(この商品の対象)顧客の心理の冷え込みと、グローバル3倍3分法ファンドの株価暴落後の期待ハズレのパフォーマンスを反映してか、長らく資金流出が止まりませんでした。最近は資金流出ペースは落ちたものの、資金流出傾向は変わっていません。
評価:おすすめしません
レバレッジの強度が高いということは、それだけリスクも高いということです。2020年2月の株価暴落にはうまく対処できたようですし、パフォーマンスは良好でしたが、S&P500と比べると高い運用コストを負担する意味を感じません。今後、素晴らしいパフォーマンスを発揮できるかどうかは運次第という気がします。
この様子だと、グローバル5.5倍バランスファンドへの投資はおすすめできないですね。高い運用コストに見合うパフォーマンスを期待するより、他の商品を検討した方がいいと思います。