日本で先進国株式インデックスと言えば、MSCIコクサイ連動商品が人気です。つみたてNISA適格商品だけで11本もあります。(為替ヘッジありを除きます。)iFree外国株式は先進国株式インデックスの超ローコスト化が進む変革期に登場しました。一瞬だけその先頭に立ちましたが、信託報酬引き下げ競争に付いていくことができませんでした。
iFree外国株式
iFree外国株式は2016年9月8日に税抜き信託報酬0.21%で設定されました。当時ニッセイ外国株式は0.24%、たわら先進国株式は0.225%でした。スリム先進国株式が登場する6ヶ月前です。
次はiFree外国株式の信託報酬引き下げ履歴です。
その後も信託報酬引き下げ競争は続いたのですが、iFree外国株式は対抗していません。
iFree外国株式の運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。スリム先進国株式と比較しています。
隠れコストが安いです。運用報告書にある数値は鵜呑みにできませんが、本当なら素晴らしいです。次は隠れコストの明細です。
iFree外国株式は有価証券取引税が安いです。
次はiFree外国株式の第一期から第四期までの、トータルコスト比較表です。隠れコストが徐々に改善されているのが分かります。
スリム先進国株式の隠れコストにもまだ改善の余地がありそうですね。
iFree外国株式とスリム先進国株式のリターン比較
次はiFree外国株式とスリム先進国株式のリターン比較です。iFree外国株式の第四期以降、株価暴落開始直前の2020年2月20日までです。
青のラインはリターン差で、スリム先進国株式ーiFree外国株式です。青のラインの傾きはトータルコスト差を示すのが期待値ですが、そもそのその差が小さいので期待通りにならないこともあります。黄色に塗った期間はリターン差がありません。
黄色に塗った期間は、次のどちらかだと思われます。
- スリム先進国株式のリターンが期待値より低かった。(運用コストが期待値より高かった。)
- iFree外国株式のリターンが期待値より高かった。(運用コストが期待値より低かった。)
それを確認するのに、つみたて先進国株式に登場して頂きます。つみたて先進国株式は、マザーファンドがスリム先進国株式と同じで、税抜き信託報酬が0.20%固定です。次は同じ期間のスリム先進国株式とつみたて先進国株式のリターン比較です。
青のラインはスリム先進国株式ーつみたて先進国株式です。マザーファンドが同じだからこその結果ですが、青のラインはわずかに弓なりに曲がったきれいな直線です。
次はiFree外国株式とつみたて先進国株式のリターン比較です。
青のラインはiFree外国株式ーつみたて先進国株式です。比較期間の最初はiFree外国株式の方が低コストだったものの、その後はほぼ同じだったと言えます。(隠れコストは変動するのでこういう現象は普通です。)
次は比較開始を2019年5月7日に変更した、スリム先進国株式とiFree外国株式のリターン比較です。
次はスリム先進国株式の運用コストを年率0.15%ポイント増量したものとの比較です。
青のラインはほぼフラットになりました。このことから、現在、スリム先進国株式のトータルコストはiFree外国株式より0.15%ポイント程度安いと推測されます。運用報告書から計算したトータルコスト差は、0.0755%ポイントなので、iFree外国株式の実際の運用コストは計算値より高いと思われます。
つみたて先進国株式とリターンが変わらない
次はiFree外国株式とつみたて先進国株式のトータルコスト比較です。
計算上のトータルコスト差は0.04%ポイント程度あります。ところが現在、リターンにほとんど差がありません。
次は2019年5月7日から2020年2月20日までの、iFree外国株式とつみたて先進国株式のリターン比較です。
青のラインはiFree外国株式ーつみたて先進国株式です。運用報告書にある数値を鵜呑みにしてはいけないという良い例です。
運用は安定しています
次はiFree外国株式の設定来の、eMAXIS先進国株式とのリターン比較です。
青のラインは弓なりに曲がったきれいな直線です。運用に問題があると、このスケールでもバレてしまいます。
売れ行きは
次はiFree外国株式の設定来の資金流出入額の累計の推移です。
一度頭打ちになりかけましたが、その後息を吹き返し、人気を加速させています。ラインはいい感じに反り返っています。それでも純資産総額は43.2億円しかありません。
ニッセイ外国株式とスリム先進国株式をプロットすると、人気に絶望的な差があることが分かります。
評価:おすすめできません
運用は安定していますし、隠れコストも低水準です。でも信託報酬引き下げ競争に付いて行けなかったため、トータルコストではニッセイ外国株式やスリム先進国株式に大きく負けています。
ベンチマークが同じで、運用の安定性にも差がないなら、トータルコストが安い方を選択すべきです。さらに、純資産総額(人気)の高さは競争を継続する原資になるので、無視できません。それらの観点から、iFree外国株式はおすすめできません。
iFree外国株式は、超ローコスト化が進んでしまった、先進国株式インデックスというジャンルで戦うことを諦めたのかも知れません。そういうビジネス上の選択も必要です。