全世界株式

MAXIS全世界株式の運用コストと評価

MAXIS全世界株式(オール・カントリー)は、形式上はスリム全世界株式(オール・カントリー)のETF版です。が、マザーファンドは同じで、明らかに一般的なETFではありません。その関係は、MAXIS米国株式(S&P500)とスリム米国株式(S&P500)と同じです。

ファンドの仕組みの説明図

引用:目論見書

設定されたのは2020年1月8日です。税抜き信託報酬が0.078%と、スリム全世界株式(オール・カントリー)の0.104%より安いと、一瞬話題になりました。でも信託報酬以外にもコストがかかります。

信託報酬以外の費用

引用:目論見書

マザーファンドはオール・カントリーと同じなので、信託報酬以外のいわゆる隠れコストはほぼ同じと見ていいはずです。(売買金額に比例するコストは各ベビーファンドごとに変わります。)MAXIS全世界株式の税抜き信託報酬はオール・カントリーより0.026%ポイント安いですが、ETF特有のコストが付加されるため、単純に考えるとオール・カントリーの方が低コストなはずです。

なお、MAXIS全世界株式はETFなので、証券会社を選ばないと売買手数料がかかります。楽天証券なら無料です。

問題は配当金の扱いです。ETFは配当金を出さねばならないルールになっており、MAXIS全世界株式は年に2回出します。VTの配当金のようなものをイメージしているかも知れませんが、違います。

スリム全世界株式(オール・カントリー)とのリターン比較

次はオール・カントリーとMAXIS全世界株式のリターン比較です。設定日から2020年5月29日までです。

オール・カントリーとMAXIS全世界株式のリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、オール・カントリーーMAXIS全世界株式です。黄色に塗った期間は株価暴落によりリターン差が期待した状態になっていません。こういうことは良く観測されます。黄色に塗った期間を除くと、青のラインの傾向は右肩上がりです。それはオール・カントリーの方が低コストであることを示しています。

データ量が十分でないため、リターン差からトータルコスト差を推測するのは控えますが、オール・カントリーの方が低コストであることは間違いないです。

配当金の扱い

オール・カントリーのマザーファンドは約3,000銘柄を売買します。それらから得られる配当金は現地国(日本国外)で課税後に、マザーファンド内で再投資されます。国内課税20.315%が適用されるのは、オール・カントリーを課税口座で売却した時です。それまで課税の繰り延べをしてくれるわけです。

MAXIS全世界株式はETFなんですが、オール・カントリーと同じマザーファンドを利用する点が、普通のETFと異なっています。僕には、年2回分配を行うファンドがETFとして売買できる商品、に思えます。

ETFなので配当金と呼びますが、その原資はオール・カントリーのベビーファンドの資産です。保有している株式から得られた配当金はマザーファンドにて再投資されてしまっているからです。

ここからがめんどくさいです。2020年から税制が改正されて、国内籍のETFは配当金への海外と国内の二重課税を回避できるようになりました。話を簡単にするため、外国での配当金への税率を10%とします。保有している株式から得られた配当金を1とすると、マザーファンドには10%課税後の0.9が入ります。そして年2回の決算時に、0.9を配当金として分配します。課税口座の場合、譲渡税20.315%が課税されますが、配当金への二重課税が行われないように調整がなされます。外国での10%課税が取りすぎになるので、それを相殺してくれるのです。

たとえばVTを課税口座で買うと、年4回もらえる配当金は、外国での課税後に、国内で20.315%課税されてから、ドルで口座に入ります。この場合、二重課税された分を取り戻すには外国税額控除を申請するしかないのですが、これは所得税からの還付であり制度的に不利です。(適切に取り戻すのが難しいです。)

次は税制改正前と改正後の、配当金への課税の違いを説明している楽天証券の図です。

配当金への課税の違いを説明している楽天証券の図

引用:楽天証券

(考え方としては)MAXIS全世界株式の場合、年2回もらえる配当金への国内課税は10.315%で済みます。一方、オール・カントリーは分配金を出さずに、配当金を再投資していますが、課税口座で売却すると利益に対して20.315%課税されます。

MAXIS全世界株式の配当金を再投資する場合

MAXIS全世界株式の保有で年2回もらえる配当金を全額再投資できるとしましょう。ETFは取引価格の倍数でないと買えないから、という話はここでは無視します。

  • MAXIS全世界株式は、保有する株式から得られた配当金(二重課税を避ける調整済み)を再投資します。再投資によって元本が増えます。
  • オール・カントリーは、保有する株式から得られた配当金(国内課税前)を再投資します。再投資で元本は増えず、売却時に利益に対して20.315%課税されます。

この2つは大きく違います。また、MAXIS全世界株式は運用コストがオール・カントリーよりいくらか高いです。さて、どちらが有利でしょうか?

わけが分からなくなった人もいると思います。

シミュレーション結果

こちらで、ほぼ同じシミュレーションをしています。

  • 運用コストはMAXIS全世界株式の方が高いので、分配金を無視するとオール・カントリーの方が有利です。
  • 分配金を出さないオール・カントリーは、配当金への課税が繰り延べされますが、その効果が出るのには年数がかかります。
  • 課税の繰り延べ効果が出ない時期は、課税上有利な分配金を再投資するMAXIS全世界株式の方が有利です。
  • でも比較期間が長くなると課税の繰り延べ効果が勝るようになります。課税の繰り延べ効果は複利で作用します。

結論:MAXIS全世界株式は運用コストが高く、長期投資ならオール・カントリーの方が有利です

運用コスト、配当金への課税、課税の繰り延べと、複数の要素が関係しますが、長期投資を前提とするならオール・カントリーの方が有利と言えます。

そもそもETFは取引価格の整数倍でしか買えません。そのため積立投資や分配金の再投資に制約があり、投資信託の方が便利だし実用的です。

でもMAXIS全世界株式の持つ(ETFゆえの)独特なメリットを活かせる人には、良い選択肢になり得るでしょう。が、特段ETFに関心のない人で、長期投資を前提とするなら、普通に投資信託を選択した方が有利だということです。わざわざETFを選択して手間をかける意味はありません。

マザーファンドが同じであるメリット・デメリット

MAXIS全世界株式の純資産総額は24億円程度ですが、マザーファンドはオール・カントリーと同じです。今後、MAXIS全世界株式が売れるようになると、マザーファンドの規模拡大に寄与することになります。これはメリットです。

でもETFゆえ短期売買の対象にされる懸念もあります。MAXIS全世界株式で発生する売買コストを、オール・カントリーの受益者に(できるだけ)負担させないような仕組み・運用であって欲しいものです。それは、三菱UFJ国際投信も良く分かっているはずです。

解約時信託財産留保額がある

MAXIS米国株式には解約時信託財産留保額はありませんが、MAXIS全世界株式には0.1%が設定されています。近年は、解約時信託財産留保額は設定されないことが多いのですが、これがあると解約時に発生するコストを補う効果が期待できます。

MAXIS米国株式にはないのに、MAXIS全世界株式に設定したのには、三菱UFJ国際投信の深い読みがあるのかも知れません。

配当金が出ました

2020年6月8日にMAXIS全世界株式の配当金(収益分配金と記載)の額が決定しました。(その案内がこちら。)一口あたり39円です。これはMAXIS全世界株式のベビーファンドから分配されますので、それだけMAXIS全世界株式の基準価額が下がります。

次はMAXIS全世界株式の2020年4月10日からのオール・カントリーとのリターン比較です。右端は2020年6月26日です。

MAXIS全世界株式の2020年4月10日からのオール・カントリーとのリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、オール・カントリーーMAXIS全世界株式です。オール・カントリーの方が低コストなので青のラインは右肩上がりで推移し(しつこい)、赤の矢印の位置で跳ね上がっています。跳ね上がったのは6月8日、分配金が出たその日です。分配金が出たのでリターンが劣化した証拠です。

6月8日のリターン差は0.4923%です。この差は、毎営業日天引きされる運用コスト+配当金によるものですが、一口あたり39円の配当金と符号するでしょうか。計算しました。

配当金の利率の確認表

予想に反して符号しませんでした。計算上は48円が最適でした。MAXIS米国株式とスリム米国株式の比較では見事に符号したのですが、そんなに単純な話ではないのかも知れません。

目論見書には分配方針についてこうあります。

分配方針

引用:目論見書

今回の配当金の利率0.40%が多いか少ないかは、何と比較するかで変わるでしょう。でも三菱UFJ国際投信は、計算期間における配当金全額を分配するとあります。そして、それはファンド内で再投資されてキャピタルゲインの恩恵を受けている純資産から分配されているので、たとえ少ないと感じても損しているわけではありません。

もしこの分配の仕組みが気に入らないなら、MAXIS全世界株式はあなた向きの商品ではないとうことです。

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