バランスファンドが投資する各資産への投資割合をどうするかは、組成に関わる重要な要素です。均等型なら議論の余地なく「均等配分」ですが、そうでない場合は固定比率にすることが多いです。例外として、GDP比率をもとに配分するものもあります。
楽天バランスは株式部分が楽天全世界株式であるため、投資割合が時価総額比で可変です。これは実に合理的で、もっと評価されて良いものです。でも現実には、不人気で販売に苦戦しています。
更新情報
第三期運用報告書の内容を反映させました。また、参照しているデータを最新版に更新しています。
楽天バランス
2018年7月20日に設定されました。株式と債券の比率が異なる3タイプがあります。税抜き信託報酬は、0.12%+売買するETF/ファンドの管理報酬で構成されるため、タイプによって変わります。(後述する債券ファンドの管理報酬引き下げ適用後です。)
良くあるバランスファンドと違って、債券比率が高いほど信託報酬が高いです。信託報酬は設定来、引き下げられていません。
楽天バランスは3タイプとも、つみたてNISA適格です。
債券ファンドの管理報酬引き下げ
楽天バランスの債券部分のファンドの「投資シェアクラス」が変更され、管理報酬が0.15%から0.10%に引き下げられました。
2021年3月23日に発表され、すでに適用されているようです。
組成内容
楽天インデックスバランスファンドには均等型、株式重視型、債券重視型の3タイプがありますが、どれも株式部分がVT、債券部分がバンガード・グローバル・ボンド・インデックス・ファンドとなっています。
引用:目論見書
株式部分は楽天全世界株式がVTを買っているのと同じです。債券部分はアイルランド籍のインデックスファンドを買います。債券部分は円でヘッジされるのが特長です。
3タイプは良くある配分です。
株式部分は楽天全世界株式と同じなので、おかしな組成内容のバランスファンドよりよっぽど安心です。ところが債券部分は良く分かりません。目論見書に詳しい説明がないし、月次報告書には上位5地域までの配分しか載っていません。
次は債券部分の投資先上位5地域を示したものです。
出典:月次報告書
せめて先進国、日本、新興国の比率を目論見書か月次報告書に記載して欲しいです。
運用コスト
次は第三期運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。債券ファンドの管理報酬引き下げ適用後です。
高かった隠れコストが大幅に削減されました。超ローコスト投信と胸を張って言える水準です。
ちなみに、次は第二期運用報告書から計算したトータルコストです。
次は株式重視型の隠れコストの明細比較です。
第二期は売買委託手数料と「その他」の印刷費用が高かったのですが、第三期で大幅に削減されました。全体的に安くなっており、相応の努力をしたのだと思われます。
僕は、本気出して売るのなら隠れコストの削減にも本気を出して欲しいと思っていたので、この隠れコストの大幅な削減は高く評価します。
3タイプのリターン比較
次は楽天バランスの設定直後を避けた、2018年8月6日から2021年6月18日までの、3タイプの比較です。
この比較期間だと、どれも大して変わらない値動きに見えますが、2021年は差が開いています。そして比較期間が長くなると株価下落・暴落を加味しても逆転されないだけの大きな差が生まれると予想されます。必ずそうなるわけではないのですが、期待値はそうです。
スリムバランス(8資産均等型)とのリターン比較
組成内容が全く違うので、過去の実績はこうだった、ぐらいに捉えてください。比較期間は2018年8月6日から2021年6月18日までです。青のラインはリターン差で、楽天バランスースリムバランス(8資産均等型)です。
株式重視型とスリムバランス(8資産均等型)の比較
コロナショックによる株価暴落前は互角、暴落後は楽天バランス(株式重視型)の方が高パフォーマンスです。
均等型とスリムバランス(8資産均等型)の比較
スリムバランス(8資産均等型)の方が変動率が高いようです。8資産均等型の債券比率が37.5%であることを考えると、まあそうかなと思います。
コロナショック直後は楽天バランス(均等型)の方が高パフォーマンスでしたが、直近では差が縮まっています。
債券重視型とスリムバランス(8資産均等型)の比較
債券重視型は変動率がかなり抑えられています。
楽天バランス(債券重視型)はコロナショック時の下落率が低かったものの、スリムバランス(8資産均等型)に追い抜かれてしまいました。これは、債券重視型は変動率を抑える代わりに、期待リターンが低いので当然の結果です。
均等型とセゾングローバルバランスとのリターン比較
おそらく楽天投信投資顧問は楽天バランスを組成するにあたり、セゾングローバルバランスを意識したことでしょう。株式と債券の比率が50:50の伝統的な組成ですが、圧倒的な人気を誇ります。
大差ありません。いい勝負です。
株式重視型は人気が出てきました
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。株式重視型は人気が出てきましたが、他は不人気です。
均等型、債券重視型も資金流入は続いていますが、流入金額が少なすぎます。3タイプあるとパフォーマンスが最も高いものを(特に現在の相場環境では)選びがちなので、この結果は無理からぬことだとも思います。
株式重視型の人気が出てきたことで、楽天バランスシリーズ全体としては、激戦区のバランスファンドのジャンルで希望の光が見えてきました。
株式重視型は楽天証券以外で買われている?
資金流入を見ると、均等型と債券重視型は注文日が1日のものが支配的です。楽天証券のクレジットカード決済で買われているのだと想像します。が、株式重視型は注文日が1日ではなく、iDeCoによる買付でもない(楽天バランスはiDeCoで扱われていないはず)、一体どこで買われているのだ?というものが多いです。
評価:セゾングローバルバランスの代わりになれるはずなのに
楽天バランスは、意味不明な組成内容が多く見られるバランスファンドにおいて、非常に好感が持てるものです。株式部分はVTだし、債券部分を為替ヘッジ付きにしたのはいい判断だと思います。
特に均等型は、セゾングローバルバランスの代わりになれるはずだったと思いますし、今でもその素質はあると思います。でも純資産総額の少なさ(不人気さ)が気になります。現在の株式重視型ぐらい売れていい商品だと思います。
株式重視型は人気が出てきました。楽天投信投資顧問が本気で売る気になれば、均等型も売れるようになると考えます。もっと魅力的でない組成のバランスファンドなのに、楽天バランスより売れているものを見ると、そう思ってしまいます。
懸案だった隠れコストの削減もできました。短い比較期間ですが、パフォーマンスはセゾングローバルバランスと互角です。足りないのはセールスプロモーションと時間でしょうか。
確定拠出年金専用の姉妹品があります
楽天バランス3姉妹はつみたてNISA適格で一般販売されています。投資対象が同じで債券比率が85%もある商品が、確定拠出年金専用で販売されています。楽天バランス(DC年金)です。現在、楽天証券のiDeCo口座のみで扱われているようです。

iDeCoで保守的な運用をしたい人にとっては良い選択肢になります。