新興国株式

SBI新興国株式の運用コストと評価

つみたてNISAで認定されている、単独で組成可能な新興国株式指数(ベンチマーク)は3種類あります。一番人気はMSCIエマージング・マーケットで、つみたてNISA適格商品12本中、10本がこのベンチマークを採用しています。SBI新興国株式は、つみたてNISA適格商品で唯一、FTSEエマージング・インデックスを採用しています。

SBI新興国株式の運用コストは激安ですが、予定通り信託報酬が引き下げられ、さらに低コストになりました。

SBI新興国株式

スリム新興国株式に約4ヶ月遅れの、2017年12月6日に税抜き信託報酬0.19%という、新興国株式インデックスでは驚異的な低価格で設定されました。当時の名称はEXE-i つみたて新興国株式でしたが、その後雪だるまシリーズとしてSBI新興国株式に改名されました。

SBI新興国株式はETFを買うだけのインデックスファンドで、SBIアセットマネジメントが設定した信託報酬(0.06%)とETFの経費率(0.13%)で構成されています。合計で税抜き信託報酬0.19%というのは、当時最安の0.339%の56%でしかなく、ETFを買うだけのインデックスファンドだから実現可能だと思われました。ところが、現物株運用のスリム新興国株式が対抗値下げしたことから、逆にそちらの方が話題になりました。

その後ニッセイ新興国株式によって最安水準が0.189%に下がりましたが、SBI新興国株式は対抗値下げしていません。でも、新興国株式インデックスの画期的な超ローコスト化に寄与したことは間違いありません。

FTSEエマージング・インデックス

SBI新興国株式のベンチマークはFTSEエマージング・インデックスです。楽天新興国株式のベンチマークはFTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)・インデックスで、ちょっとだけ違いますが、こちらはつみたてNISAの指定インデックスではありません。SBI新興国株式は、つみたてNISA適格とするために、指定インデックスに連動するETFを選択する必要があり、採用したのがSCHE(Schwab Emerging Markets Equity ETF)でした。もちろん、現物株運用とするならもっと自由度があるのですが、雪だるまシリーズでは現物株運用は選択していません。

次はスリム新興国株式の月次報告書と、SCHEの資料から作成した表です。

MSCIエマージング・マーケットとFTSEエマージング・インデックスの違いの表

投資対象国数、銘柄数は似たようなものです。次は投資割合の上位国比較です。

投資割合の上位国比較表

SBI新興国株式は韓国に投資しません。他には目立った違いはないですね。

運用コスト

次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。スリム新興国株式と比較しています。

運用報告書から計算したトータルコスト表

隠れコストが安いです。運用報告書にある数値を信じるなら、スリム新興国株式より0.11%ポイント以上安いです。

次は隠れコストの明細です。

隠れコストの明細表

保管費用を含む、その他費用の安さが目立ちます。

SCHEトータルリターンとの比較

SBI新興国株式が買っているSCHEのトータルリターンと比較することで、SBI新興国株式固有の運用コストを推測することができます。次はSBI新興国株式の設定直後を避けた、2017年12月25日から株価暴落開始直前の2020年2月20日までの、SCHEトータルリターンとの比較です。

SBI新興国株式とSCHEトータルリターンの比較グラフ

青のラインはSCHEトータルリターンーSBI新興国株式です。巨大なヒゲが3本ありますが、無視して下さい。

青のラインは右肩上がりで推移するのが期待値ですが、黄色に塗った期間はそうなっていません。基準価額がゴリゴリ下がっていたので、その影響を受けたためと思われます。そこで、黄色に塗った期間の後から比較します。

SBI新興国株式とSCHEトータルリターンの比較グラフ、期間変更後

楽天新興国株式とVWOトータルリターンとの比較とは様子が違いますが、その理由は分かりません。次はSCHEトータルリターンの運用コストを年率0.25%増量したものとの比較です。

SCHEトータルリターンの運用コストを年率0.25%増量したものとの比較グラフ

青のラインは右肩上がりでも右肩下がりでもなくなったので、SBI新興国株式のSCHEの経費率を除いた運用コストは、0.25%程度だと推測します。運用報告書の数値通りなら、0.14%程度が期待値なんですが、まあそんなにうまい結果が得られる推測方法ではありません。(楽天バンガードシリーズではいい感じの結果が得られるのですが。)

MSCIエマージング・マーケットとどちらがいいか

新興国株式に投資したい場合に、選択肢の豊富な(でもスリム新興国株式一択ですけど)MSCIエマージング・マーケットがいいのか、FTSEエマージング・インデックスを採用しているSBI新興国株式がいいのか、判断に迷うかも知れません。

次はSBI新興国株式の設定直後を避けた、2017年12月25日から株価暴落開始直前の2020年2月20日までの、スリム新興国株式とのリターン比較です。

SBI新興国株式とスリム新興国株式とのリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、SBI新興国株式ースリム新興国株式です。この様子だとどちらのパフォーマンスが高いかは時期によりそうです。

2010年からeMAXIS新興国株式と比較

次は2010年1月15日からの、SCHEトータルリターンとeMAXIS新興国株式の比較です。

SCHEトータルリターンとeMAXIS新興国株式の比較グラフ

青のラインはSCHEトータルリターンーeMAXIS新興国株式です。はやりどちらのパフォーマンスが高いかは時期による言えそうです。

高い三重課税コスト

日本人が米国以外の資産に投資する米国籍ETFを買う場合、三重課税問題が発生します。VWOと楽天新興国株式にあるように、SCHEとSBI新興国株式にもあります。

SCHEの投資先は100%米国外の株式なので、SCHEが得る配当金は米国外での現地課税と、米国での10%課税が適用されます。ここまでが二重課税で、日本でさらに20.315%課税されると三重課税になる、というものです。

そんなマニアックな話はいいやって方は、ここまで飛ばして下さい。

2018年度は0.222%

SCHEの2018年度の年次レポートから、配当金の源泉徴収税率は10.62%だと分かりました。次は課税関係をまとめた図です。

SCHEの2018年度の年次レポートから、配当金の課税関係をまとめた図

特定口座でSBI新興国株式を買っている場合、売却時に譲渡税20.315%が課税されますので、米国での10%課税が余剰(多重)です。それは配当金の8.94%に相当します。

SCHEの2018年の配当金は年利2.48%だったので、2.48×8.94%=0.222%が三重課税コストになります。信じたくないほど高いですね。

2019年度は0.257%

SCHEの2019年度の年次レポートから、配当金の源泉徴収税率は9.85%だと分かりました。次は課税関係をまとめた図です。

SCHEの2019年度の年次レポートから、配当金の課税関係をまとめた図

日本国民から見て、米国での10%課税が余剰(多重)です。それは配当金の9.02%に相当します。

SCHEの2019年の配当金は年利2.85%だったので、2.85×9.02%=0.257%が三重課税コストになります。スッゲー高いですが、楽天新興国株式(VWO)の三重課税コストも似たようなものです。

三重課税問題は現物株運用のファンドにはありません

三重課税問題は、スリム新興国株式のような現物株運用のファンドには存在しません。配当金への課税は現地(外国)と国内の譲渡税のみで、余剰となる米国課税がないからです。この課税の仕組み上、三重課税問題は都市伝説ではありませんが、大半の受益者はその存在すら知らないと思います。

ベンチマークが同じ商品を比較するなら、三重課税問題のない方が有利ですが、SBI新興国株式かそれ以外かという話をする場合はベンチマークが異なります。そのため、三重課税問題よりもベンチマークを優先して考えた方がいいでしょう。

Fund of the Year非選出

SBI新興国株式のベンチマークが好まれなかったのか、あるいは他の理由によるものなのかは分かりませんが、Fund of the Yearで入賞したことはありません。

Fund of the Yearの順位

SBI新興国株式は2018年度から投票対象ですが、スリム新興国株式の信託報酬を大幅に引き下げた功労者であるにも関わらず、票を集めることができませんでした。インデックスファンドが人気を獲得するには、コスト以外の何かも必要ということですね。

人気上昇中でも厳しい売れ行き

次はSBI新興国株式の設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は48.01億円です。

SBI新興国株式の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

ラインは反り返っているので、人気は明らかに上昇中です。でも増加ペースがまだまだ少ないです。

新興国株式インデックスで一番人気のスリム新興国株式もプロットすると、現状の厳しさを認識させられます。

スリム新興国株式とSBI新興国株式の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

緑のラインがスリム新興国株式ですが、SBI新興国株式の登場と同時に角度が変わっています。これは、SBI新興国株式に対抗して信託報酬を税抜き0.19%に引き下げた効果です。

将来的に、1つのアセットクラスにつき生き残れるインデックスファンドが2つまでとするなら、SBI新興国株式はもっと人気を獲得する必要がありますね。

朗報:信託報酬が引き下げられました

実はSCHEの経費率は0.13%から0.11%に引き下げられています。いつ引き下げられたか確認できなかったのですが、2019年8月末の年次レポートでは0.13%、2020年2月の資料では0.11%だったので、その間のどこかになります。

でも、SBI新興国株式の目論見書(2020年2月13日版)には、ETFの経費率は0.13%だとあります。そこでSBIアセットマネジメントに電話して教えてもらいました。

  • SCEHの経費率は確かに0.11%に下がっています。
  • 現在目論見書の改定を準備中です。8月13日版で反映し、税込み0.176%に引き下げられます。
  • 月次レポート中の数値は6月末作成分から変更予定です。

予定通り、目論見書は8月13日版で反映されていました。SBI新興国株式の信託報酬は税抜き0.06%、それにETFの改定後の経費率0.11%を加えた、税抜き0.17%が「実質的な運用管理費用」です。信託報酬は変わりません。

この改定を受けて、スリム新興国株式は期待通り対抗値下げしました。税抜き信託報酬は0.170%になりました。

評価:低コストで良い選択肢です

新興国株式に投資するのに、ベンチマークにこだわりがない場合、SBI新興国株式は良い選択肢になります。

  • 運用報告書から計算したトータルコストは激安です。
  • でも三重課税コストを考慮するとスリム新興国株式の方が安いです。
  • 人気(純資産総額)はスリム新興国株式の圧勝ですが、SBI新興国株式はもっと人気が出ても良いと思います。

なお、残念ながらSBI新興国株式はiDeCoでの取り扱いがないようです。姉妹品と言えるEXE-i 新興国株式はSBI証券のオリジナルプランで扱われていますが、どう考えてもSBI新興国株式の方が良い商品です。ここにもiDeCoのいびつな制約が暗い影を落としています。

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