SBI資産設計オープン(資産成長型)は新興国を除いた6資産に投資するバランスファンドです。かつてはそこそこの人気を獲得していましたが、もう資金流入も頭打ちで、盛り返すこともないと思われます。
今では高コストなので、その組成内容が好みだとしても、他の選択肢を考えた方がいいです。
SBI資産設計オープン(資産成長型)
商品名がSBIで始まりますが、運用会社は三井住友トラスト・アセットマネジメントです。設定当時は住信アセットマネジメントでした。SBI証券専売商品として組成されました。
2008年1月9日に税抜き信託報酬0.68%で設定されました。設定来一度も引き下げられていません。これでも当時は意欲的な水準でしたが、現在ではすっかり高コストになってしまいました。
解約時信託財産留保額0.15%が設定されています。またつみたてNISA適格ではありません。
組成内容
投資対象は6資産、スリムバランスの8資産から新興国株式と新興国債券を外したのと同じです。投資割合はこうなっています。
引用:目論見書
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。スリムバランス(8資産均等型)と比較しています。
SBI資産設計オープン(資産成長型)は隠れコストが異様に安いです。次は隠れコストの明細です。安さが目立つ項目を青字にしました。
SBI資産設計オープン(資産成長型)は新興国に投資しないためコスト的にスリムバランスより有利ですが、それでもこれは安すぎると思います。このまま鵜呑みにしない方がいいでしょうね。
リターン比較
バランスファンドは商品によって組成内容がバラバラです。組成内容が違うもののリターン比較をしても、どちらが良いという判断をするのは困難です。
ここでのリターン比較は、あくまでその商品同士で見た時の、過去の実績でしかありません。
eMAXISバランス(8資産均等型)とのリターン比較
次はeMAXISバランス(8資産均等型)の設定日直後を避けた、2011年12月15日から2020年7月3日までの、SBI資産設計オープン(資産成長型)とのリターン比較です。
青のラインはリターン差で、SBI資産設計オープン(資産成長型)ーeMAXISバランス(8資産均等型)です。長期で見れば、大差ありません。
セゾングローバルバランスとのリターン比較
次はSBI資産設計オープン(資産成長型)の設定日直後を避けた、2008年2月1日から2020年7月3日までの、セゾングローバルバランスとのリターン比較です。
青のラインSBI資産設計オープン(資産成長型)ーセゾングローバルバランスです。長期で見れば、大差ありません。
世界経済インデックスとのリターン比較
次は世界経済インデックスの設定日直後を避けた、2009年2月2日から2020年7月3日までの、SBI資産設計オープン(資産成長型)とのリターン比較です。
青のラインはSBI資産設計オープン(資産成長型)ー世界経済インデックスです。リターン差は大きいですが、どちらか一方が有利ということではありません。
SBI資産設計オープン(分配型)
SBI資産設計オープン(資産成長型)には姉妹品があります。(分配型)です。そうです。資産形成には全く向かないにも関わらず、それが理解できないカモ相手の商売道具にされる商品です。年6回分配します。こちらもSBI証券専売商品です。
次は収益分配の説明図です。年に2回はより多く分配します。
引用:目論見書
本来、分配は配当金を原資にしますが(普通分配)、この商品は配当金以上を分配(特別分配)することがあるとしています。
分配型の話はいいやって方は、ここまで飛ばして下さい。
分配金実績
次は2017年から2019年5月までの分配金実績です。
おおむね0.24%ですが、加算分配時に0.71%と4.91%がありました。投資対象の株式、債券から得られる配当金は一旦再投資され(純資産総額の取り込まれ)、年6回ある決算日に純資産総額から取り崩していると思われます。
分配金を出すことのデメリット
次は2018年3月1日からの資産成長型と分配型のリターン比較です。
青のラインはリターン差です。階段状になっているところで分配金が出ており、それによって分配型のリターンが劣化しています。分配金率と劣化の程度は一致しています。
手にできる総額で比較
計算を簡単にするために次の条件で比較します。
- AさんもBさんも特定口座を利用しました。
- Aさんは資産成長型を2016年12月1日に100万円購入しました。
- Bさんは分配型を2016年12月1日に100万円購入しました。
- Bさんはもらった分配金をそのまま証券口座にプールしていました。
- AさんもBさんも2019年6月末に全額売却しました。
AさんとBさんが手にした総額はいくらになっていたでしょうか。
次は評価額の推移です。左軸の下限を80万円にしています。
一括投資のみなので、元本を示す灰色のラインは水平です。分配型は元本割れした時期もありました。
- Aさんの売却額:1,094,118円
- Bさんの売却額:1,020,134円
次はBさんが分配型から得た分配金履歴です。もちろん、分配金は20.315%課税されてから証券口座に入金されます。
分配金は合計66,856円になりました。これを1年半利息のもらえない証券口座に放置したBさんを責めないでください。
Bさんの売却益に分配金を加えた総額は1,086,990円でした。よってAさんはBさんより7,128円得しました。
- Aさんの税引き後利益率は9.41%でした。
- Bさんの税引き後利益率は8.70%でした。
意味のない分配型
次は設定来のリターン比較です。
分配型は年6回分配金を出す都度、基準価額が下がります。また、その分、複利効果を得られないのでこのように大きなリターン差が生まれてしまいます。分配型は存在価値ゼロです。
もし定期的に現金を手にしたいなら、必要な分だけ解約すればいいだけのことです。
売れ行きは
人気の動向は資金流出入額の累計に表れます。
売れなくなった資産成長型
次は資産成長型の設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は294億円ありますが、その大半は2016年までに獲得したものです。
2017年代になると明らかに売れなくなりました。低コストな選択肢がたくさんある今、SBI資産設計オープン(資産成長型)が勢いを取り戻すことはないでしょう。
キング・オブ・バランスファンドであるセゾングローバルバランスもプロットすると、王者の人気の高さに驚きます。
高コストなバランスファンドで人気を維持をするには、並の営業活動ではダメってことだと思います。
売れなかった分配型
次は分配型の設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は0.99億円しかありません。
設定日の純資産総額が2.06億円ありましたが、事前募集によるものかも知れません。結果的に全く売れなかったと言っていいでしょう。分配型なんて買う価値ありませんから、そもそも組成するべきではありません。情弱に売り込むネタにする以外に、組成する理由などないでしょう。
iDeCoで多く買われている
次は直近1年間の毎営業日ごとの資金流入額の推移です。
大きなトゲがある日は、iDeCoの約定日と一致しています。よって、現在買い付けの多くはiDeCoによるものと言えます。iDeCoナビによると、次の2金融機関が扱っています。
- SBI証券(オリジナルプラン)
- SBIベネフィット・システムズ
SBI証券専売商品なので当然そうなりますね。
評価:他の選択肢の方がいいです
新興国に投資しないこの6資産が好きという場合であっても、もっとローコストな選択肢の方がいいです。コストは確実にリターンを蝕むからです。
でも、自分のお気に入りの組成が他にないので、コストよりも好みの組成を優先するのであれば、その方がいいと思います。期待した成果が得られなかった時に、そうした方が後悔しないで済むからです。