スリムシリーズの最大の売り文句は、「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」です。スリム国内株式(日経平均)もそれを守っていましたが、最近ちょっと不安になってきました。PayPay投信日経225に対抗していないのです。
更新情報
第四期運用報告書の内容を反映させました。また、参照しているデータを最新版に更新しています。
スリム国内株式(日経平均)
スリム国内株式(TOPIX)に遅れること約1年、2018年2月2日に税抜き信託報酬0.159%で設定されました。単独で最安でした。スリムシリーズなのに単独で最安水準に設定するのって変ですよね。また、その後2回引き下げていますが、その理由がどちらも、スリム国内株式(TOPIX)と同率への引き下げです。
そのような、不自然に思える信託報酬設定をしたのは、スリム国内株式(TOPIX)とスリム国内株式(日経平均)をひとまとめにしているからです。ちょうど、次の3商品の信託報酬を同一にしているのと同じです。
- スリム全世界株式(3地域均等型)
- スリム全世界株式(除く日本)
- スリム全世界株式(オール・カントリー)
現在、日経平均連動インデックスで信託報酬が最安なのは、PayPay投信日経225の税抜き0.13%です。スリム国内株式(日経平均)は追随するものと期待されていましたが、まだしていません。
スリム国内株式(日経平均)はつみたてNISA適格です。松井証券のiDeCo口座で扱われています。
受益者還元型信託報酬制度
スリムシリーズは純資産総額が500億円、1,000億円を超えると信託報酬が漸減される「受益者還元型信託報酬制度」を採用しています。漸減率は商品によって異なりますが、スリム国内株式(日経平均)はまだ意味のある水準です。
でも現在のスリム国内株式(日経平均)の人気だと、500億円を超えるのはいつになるか見当も付かないほど先になりそうです。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。
日経平均連動インデックスは隠れコストが安くて当たり前です。この隠れコストはスリム先進国株式やオール・カントリーよりひと桁安いです。
eMAXIS日経225とのリターン差は期待通りか
スリム国内株式(日経平均)の先輩にあたる、eMAXIS日経225とのリターン差は期待通りでしょうか。次はスリム国内株式(日経平均)の税引き信託報酬が0.140%に引き下げられた2019年5月14日から2021年7月2日までの、eMAXIS日経225とのリターン比較です。
リターン差を示す青のラインはきれいな右肩上がりの直線で、その傾きはトータルコスト差を示しています。マザーファンドが同じなので、ベビーファンドの運用に問題がない限りこのようなきれいな直線になることが知られています。なお、株価暴落時に凹んでいるのは正常です。
この比較期間のトータルコスト差は、運用報告書によれば、0.29%ポイント程度です。次はスリム国内株式(日経平均)の運用コストを年率0.29%ポイント増量したものとの比較です。
青のラインはフラットになりました。よって、スリム国内株式(日経平均)のeMAXIS日経225とのリターン差は、期待通りと判断します。
ニッセイ日経平均とのリターン比較
運用が優秀だと分かっている、ニッセイ日経平均とリターン比較をします。青のラインはスリム国内株式(日経平均)ーニッセイ日経平均です。
税抜き信託報酬が0.140%で並んでから比較
次はニッセイ日経平均の税抜き信託報酬が、スリム国内株式(日経平均)と0.140%で並んだ2019年6月27日から2021年7月2日までの比較です。
青のラインはリターン差で、スリム国内株式(日経平均)ーニッセイ日経平均です。期待通りほぼフラットです。
スリム国内株式(日経平均)の設定来の比較
次はスリム国内株式(日経平均)の設定直後を避けた、2018年2月21日から2021年7月2日までの比較です。
この比較期間だと信託報酬にわずかな差があるので、青のラインはフラットでなくて当然です。この形状なら何も問題は起きていないと言っていいでしょう。
Funds-i 日経225とのリターン比較
次はスリム国内株式(日経平均)の設定直後を避けた、2018年2月21日から2021年7月2日までの、Funds-i 日経225との比較です。Funds-i 日経225の税抜き信託報酬は0.40%固定です。
運用コストにしっかりとした差があるので、青のラインはこのように右肩上がりで推移します。期待通りです。
売れ行きは
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は130億円です。スリムシリーズにしては少ないですね。
スリム国内株式(日経平均)も短期売買のおもちゃにされているようです。税抜き信託報酬が最安で並んでいるニッセイ日経平均、iFree日経225もプロットすると、スリム国内株式(日経平均)の厳しさが良く分かります。
緑のラインがiFree日経225、青のラインがニッセイ日経平均です。赤のラインのスリム国内株式(日経平均)は、積極的に信託報酬を引き下げてきたとは思えないです。
でも最近は(やっと)資金流入が増えてきています。
つみたて日本株式(日経平均)より不人気
つみたて日本株式(日経平均)は、スリム国内株式(日経平均)と同じマザーファンドを利用しながら、販路、対象顧客、信託報酬を変えた商品です。税抜き信託報酬は0.180%を堅守しています。ネット証券利用者にとっては買う価値のない商品です。
ところが、情けないことに、スリム国内株式(日経平均)はつみたて日本株式(日経平均)より不人気です。次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。つみたて日本株式(日経平均)の純資産総額は285億円と、スリム国内株式(日経平均)の2.2倍程度あります。
驚くべきは安定した資金流入です。短期売買のおもちゃにされていません。不思議です。(なお、つみたて日本株式(TOPIX)はおもちゃにされています。)
評価:スリムシリーズが好きなら良い選択肢
人気が圧倒的ではありませんが、スリムシリーズが好きなら良い選択肢です。