バランスファンドはマザーファンドさえあれば容易に組成できることもあって、粗製乱造される傾向にあります。投資対象が同じで投資比率だけを変えて、「何とか型」としたものを3種類揃えるパターンはその典型です。でもその多くは不人気です。
8資産均等型はeMAXISバランス(8資産均等型)時代から人気の組成で、スリムバランス(8資産均等型)は成功が約束されていたようなものです。でもそれにはスリムシリーズ最大の売り文句の堅守が必要だったのも事実でしょう。
更新情報
第五期運用報告書の内容を反映させました。また、参照しているデータを最新版に更新しています。
スリムバランス(8資産均等型)
2017年5月9日に設定されました。スリムシリーズの第一弾が設定されたのが2017年2月27日だったので、約2ヶ月遅れての登場となりました。税抜き信託報酬0.22%で設定されましたが、その後5回引き下げられて0.14%になっています。次はその引き下げ履歴をまとめた表です。
スリムバランスはバランスファンドなら組成内容を気にせずに(8資産均等型でなくても構わず)対抗値下げしました。そのため8資産均等型では単独で最安です。ニッセイバランス(8資産均等型)は0.159%です。
スリムバランスはつみたてNISA適格です。また、iDeCoナビによると、次の金融機関のiDeCo口座で扱われています。
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受益者還元型信託報酬制度
スリムシリーズは純資産総額が500億円、1,000億円を超えると信託報酬が漸減される「受益者還元型信託報酬制度」を採用しています。漸減率は商品によって異なりますが、スリムバランス(8資産均等型)はまだ意味のある水準です。
これがスリム全世界株式3兄弟だと、漸減率が1/10しかなく、宣伝効果以外の御利益はありません。
次は信託報酬が漸減される様子を示したグラフです。純資産総額が500億円までは0.140%、500億円を超えると減り始め、1,000億円を超えると減り方が変わります。右端は2,000億円ですが、それだけ増えても0.1338%ですから、たったの0.0062%ポイントしか減りません。
現在の純資産総額は赤丸の位置で、税抜き信託報酬は0.1351%です。0.140%から減ってはいますが、小さすぎて隠れコストのちょっとした差で消えてしまうレベルです。
運用コスト=信託報酬+隠れコスト
運用コスト(トータルコスト)は信託報酬と隠れコストの合計です。次は運用報告書から計算したトータルコストです。
隠れコストは8資産均等型の中でも低水準です。第五期決算期間は、第四期から微減でした。
運用報告書の数値を信じるなら、8資産均等型バランスファンドでトータルコスト0.21%程度に勝つのは困難です。
eMAXISバランス(8資産均等型)とのリターン比較
スリムバランス(8資産均等型)が利用しているマザーファンドは、兄にあたるeMAXISバランス(8資産均等型)が利用しているものと同じです。そのため、リターン差は運用報告書から計算したトータルコスト差に符合するのが期待値です。
次はスリムバランス(8資産均等型)の税抜き信託報酬が0.140%になった2019年5月14日から、2022年7月1日までの、eMAXISバランス(8資産均等型)とのリターン比較です。
青のラインはリターン差で、スリムバランスーeMAXISバランスです。株価暴落時の凹みを除いて見事な直線です。これはeMAXISバランス(8資産均等型)よりスリムバランス(8資産均等型)の方が(十分に)低コストであることを示しています。
バランスファンドは比較が難しい
バランスファンドはその組成内容がバラバラなため、公平な比較をするのが困難です。たとえば株式比率が高いものの方が、低いものよりパフォーマンスは高い傾向になりますから、それを考慮せずにリターン比較しても有意義ではありません。
では8資産均等型バランスファンドなら公平な比較ができるかと言うと、そうでもありません。次は主なローコスト8資産均等型バランスファンドの、8資産の指数を比較したものです。
新興国株式と新興国債券に違いが見られます。
次はニッセイバランス(8資産均等型)の設定直後を避けた2018年3月1日から2022年7月1日までの、たわらバランス(8資産均等型)、iFree 8資産バランス、スリムバランス(8資産均等型)のリターン比較です。
ほぼ同じ値動きでしたが、株価暴落後に差が開きました。でも直近では差が縮まっています。
セゾングローバルバランスとのリターン比較
次はセゾングローバルバランスとのリターン比較です。スリムバランス(8資産均等型)の設定直後を避けた2017年5月22日から2022年7月1日までです。
赤のラインがセゾングローバルバランスです。青のラインはセゾングローバルバランスースリムバランス(8資産均等型)です。
コロナショックによる株価暴落時に差が開きました。これはセゾングローバルバランスが下落率の高かったリートに投資していないことが主要因だと思われます。
Fund of the Yearの順位
スリムバランス(8資産均等型)は、eMAXISバランス(8資産均等型)の人気を引き継ぐことに成功しました。Fund of the Yearでは安定して5位をキープしていましたが、近年は人気が落ちてきています。
近年は良質なインデックスファンドの選択肢が増えたこと、株式100%インデックスの人気が高まってきたことが背景にあると言えるでしょう。
売れています
8資産均等型バランスファンドでは圧倒的な一番人気です。純資産総額は1,482億円です。次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。
安定した資金流入が続いています。8資産均等型バランスファンドでは一番人気です。
評価:8資産均等型ならスリムバランス一択です
トータルコストと人気(=純資産総額)を考えると、特別な理由でもない限り、8資産均等型ならスリムバランス一択でいいです。ではいろんな組成があるバランスファンドの中で、8資産均等型がいいかどうかは全く別の問題です。