SBI資産設計オープン(資産成長型)は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが運用しているSBI証券専売商品です。6資産に投資します。三井住友トラスト・アセットマネジメントは、組成内容の異なる6資産バランスファンド「世界経済インデックス」も運用しています。世界経済インデックスは32社で販売されています。
どちらも今では高コストですが、その人気には大きな違いがあります。
以下、eMAXIS Slimをスリムと表記します。
世界経済インデックス
2009年1月16日に税抜き信託報酬0.68%で設定されました。先行していたSBI資産設計オープン(資産成長型)と同率でしたが、世界経済インデックスはその後2回引き下げています。
世界経済インデックスは、名前にそぐわずアクティブファンドです。そんな馬鹿なと思われるかも知れませんが、投資割合をファンドマネージャーの意思で変更したきたので、インデックスファンドではありません。実際、つみたてNISAの指定インデックス投資信託以外で適格認定を受けています。
組成内容
投資対象はスリムバランス(8資産均等型)から国内リートと先進国リートを外したものと同じです。株式と債券の比率は50:50の伝統的なものですが、地域別投資割合は均等ではありません。
引用:目論見書
国別投資割合はGDP比を参考にして決定しますが、ファンドマネージャーの意思で変更されます。
引用:目論見書
現在のGDP比に従うなら、新興国比率は約40%にするべきですが、世界経済インデックスは約30%です。GDP地域別構成比をうんぬんというのは、ファンドマネージャーの意思で変えられているので、全くあてにならないです。
指定インデックス投資信託の要件を満たすためには、次のどれかでなければいけません。(3番目は苦肉の策です。)
- 認められているベンチマークに連動する。(バランスファンドではおそらく不可能。)
- 固定比率にする。(均等型でなくてもOK。)
- GDP比率に従う。
世界経済インデックスはこのどれでもありません。目論見書には次のように書かれています。
基本組入比率は原則として年1回見直しを行う場合があります。また、市場動向等に応じて必要と認める場合には、一定の乖離幅の範囲内で組入比率を調整する場合もあります。
実際、この比率は変更されています。確認できた範囲で、新興国比率を一度上げ、その後元に戻しています。
そして、運用報告書には次の記述があります。
当ファンドの運用の基本方針に適した指数が存在しないため、ベンチマーク及び参考指数を特定しておりません。
引用:運用報告書
これではつみたてNISAの「指定インデックス投資信託」で適格認定を受けるのは不可能です。で、世界経済インデックスは厳しい要件を満たしていたので、「指定インデックス投資信託以外」で適格認定を受けたのです。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。SBI資産設計オープン(資産成長型)、スリムバランス(8資産均等型)と比較しています。
運用報告書にある数値を信じるなら、隠れコストは新興国の比率が高いことを考えると低水準だと言えるでしょう。次は隠れコストの明細です。
SBI資産設計オープン(資産成長型)と世界経済インデックスの、次のマザーファンドは同じです。
- 国内株式
- 国内債券
- 先進国株式
- 先進国債券
高コストになりがちな新興国がないとは言え、SBI資産設計オープン(資産成長型)の隠れコストの安さは、やはり、怪しい気がしますね。
リターン比較
組成内容の違うバランスファンドのリターン比較から、どちらが良いという判断をするのは困難です。パフォーマンスの良し悪しを決める最大の要因は、資産クラスの値動きなので、投資対象や投資比率が違うものは、同じ土俵で比較できません。それでも、比較結果見たいですよね。
ここでのリターン比較は、あくまでその商品同士で見た時の、過去の実績でしかありません。
セゾングローバルバランスとのリターン比較
次は世界経済インデックスの設定日直後を避けた、2009年2月2日から2020年7月3日までの、セゾングローバルバランスとのリターン比較です。
時代によって有利不利が入れ替わっています。長い目で見れば、大差ないと言えます。
SBI資産設計オープン(資産成長型)とのリターン比較
次は世界経済インデックスの設定日直後を避けた、2009年2月2日から2020年7月3日までの、SBI資産設計オープン(資産成長型)とのリターン比較です。
時代によって有利不利が入れ替わっています。どちらがパフォーマンスが高いかは、時代による、つまり運次第です。
eMAXISバランス(8資産均等型)とのリターン比較
次はeMAXISバランス(8資産均等型)の設定日直後を避けた、2011年11月15日から2020年7月3日までの、世界経済インデックスとのリターン比較です。
青のラインは世界経済インデックスーeMAXISバランス(8資産均等型)です。この比較期間ではeMAXISバランス(8資産均等型)の方が好調でしたが、2020年2月に始まった株価暴落ではリートの下落率が高かったので差が縮まりました。長い目で見れば大差ないと言っていいでしょう。
Fund of the Yearの順位
SBI証券専売商品で信託報酬を引き下げなかったSBI資産設計オープン(資産成長型)と違い、世界経済インデックスは人気の獲得に成功しました。それはFOYの順位にも表れています。
キング・オブ・バランスファンドであるセゾングローバルバランスは別格なので除きますが、eMAXISバランス(8資産均等型)と順位を競っていた時代がありました。でも、ローコスト化が進んだ2017年以降は過去の商品になってしまいました。
いまだに売れています
次は世界経済インデックスとSBI資産設計オープン(資産成長型)の設定来の資金流出入額の累計の推移です。世界経済インデックスの純資産総額は700億円です。
赤のラインが世界経済インデックス、緑のラインがSBI資産設計オープン(資産成長型)です。2016年まではほぼ同じ資金流入ペースでしたが、その後、世界経済インデックスが人気を加速させた一方、SBI資産設計オープン(資産成長型)は頭打ちになりました。
近年、明らかに高コストでありながらも世界経済インデックスに資金流入があるのは驚きです。
セゾングローバルバランスもプロットすると、その人気の高さに圧倒されます。
超ローコストバランスファンドで人気のスリムバランス(8資産均等型)も、まだ世界経済インデックスに負けています。
でもあと数年も経てば、スリムバランス(8資産均等型)は世界経済インデックスの手の届かない水準に達しているでしょう。
評価:おすすめしません
たとえ世界経済インデックスの組成内容が好みであっても、他のもっとローコストなバランスファンドを考えた方がいいと思います。それでも世界経済インデックスがいいと思うなら、それがあなたにとっての最良の選択肢です。