米国株式

MAXIS米国株式の運用コストと評価

MAXIS米国株式(S&P500)はスリム米国株式(S&P500)のETF版です、と言い切っていいのかどうか自信がありません。でもマザーファンドは同じで、明らかに一般的なETFではありません。

MAXIS米国株式(S&P500)の仕組み

引用:目論見書

設定されたのは2020年1月8日です。税抜き信託報酬が0.078%と、スリム米国株式の0.088%より安いと、一瞬話題になりました。でも信託報酬以外にもコストがかかります。

MAXIS米国株式(S&P500)のその他のコスト

引用:目論見書

マザーファンドはスリム米国株式と同じなので、信託報酬以外のいわゆる隠れコストはほぼ同じと見ていいはずです。(売買金額に比例するコストは各ベビーファンドごとに変わります。)MAXIS米国株式の税抜き信託報酬はスリム米国株式より0.01%ポイント安いですが、ETF特有のコストが付加されるため、単純に考えるとスリム米国株式の方が低コストなはずです。

なお、MAXIS米国株式はETFなので、証券会社を選ばないと売買手数料がかかります。楽天証券なら無料です。

問題は配当金の扱いです。ETFは配当金を出さねばならないルールになっており、MAXIS米国株式は年に2回出します。ここから超ややこしい世界にみなさんをお連れします。

本当にスリム米国株式の方が低コストなのか

次はスリム米国株式とMAXIS米国株式のリターン比較です。設定日から2020年4月24日までです。

スリム米国株式とMAXIS米国株式のリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、スリム米国株式ーMAXIS米国株式です。黄色に塗った期間は株価暴落によりリターン差が「へたる」のですが、傾向として右肩上がりなのが分かると思います。マザーファンドが同じで、運用コストが違うもののリターン比較をさんざん行ってきた経験から、この青のラインは期待通りと判断します。

ちょっと無理がありますが、次はスリム米国株式のリターンを年率0.12%ポイント増量したものとの比較です。

スリム米国株式のリターンを年率0.12%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりました。そこで、この記事ではMAXIS米国株式はスリム米国株式より年率0.12%ポイント、リターンが劣る(運用コストが高い)とします。

配当金の扱い

スリム米国株式のマザーファンドは505銘柄を売買します。それらから得られる配当金は米国で10%課税後に、マザーファンド内で再投資されます。国内課税20.315%が適用されるのは、スリム米国株式を課税口座で売却した時です。それまで課税の繰り延べをしてくれるわけです。

MAXIS米国株式はETFなんですが、スリム米国株式と同じマザーファンドを利用する点が、普通のETFと異なっています。僕には、年2回分配を行うファンドがETFとして売買できる商品、に思えます。

ETFなので配当金と呼びますが、その原資はMAXIS米国株式のベビーファンドの資産です。保有している株式から得られた配当金はマザーファンドにて再投資されてしまっているからです。

ここからがめんどくさいです。2020年から税制が改正されて、国内籍のETFは配当金への海外と国内の二重課税を回避できるようになりました。よって、保有している株式から得られた配当金を1とすると、マザーファンドには米国での10%課税後の0.9が入ります。そして年2回の決算時に、0.9を配当金として分配します。課税口座の場合、譲渡税20.315%が課税されますが、配当金への二重課税が行われないように調整がなされます。米国での10%課税が取りすぎになるので、それを相殺してくれるのです。

たとえばVOO(S&P500に連動するETF)を課税口座で買うと、年4回もらえる配当金は、米国で10%課税後に、国内で20.315%課税されてから、ドルで口座に入ります。この場合、二重課税された分を取り戻すには外国税額控除を申請するしかないのですが、これは所得税からの還付であり制度的に不利です。(適切に取り戻すのが難しいです。)

次は税制改正前と改正後の、配当金への課税の違いを説明している楽天証券の図です。

配当金への課税の違いを説明している楽天証券の図

引用:楽天証券

MAXIS米国株式の場合、年2回もらえる配当金への国内課税は10.315%で済みます。一方、スリム米国株式は分配金を出さずに、配当金を再投資していますが、課税口座で売却すると利益に対して20.315%課税されます。

2つの異なる配当金

ここで、MAXIS米国株式の保有で年2回もらえる配当金を全額再投資できるとしましょう。ETFは取引価格の倍数でないと買えないから、という話はここでは無視します。

  • MAXIS米国株式は、保有する株式から得られた配当金の0.797を再投資します。再投資によって元本が増えます。
  • スリム米国株式は、保有する株式から得られた配当金の0.9を再投資します。再投資で元本は増えず、売却時に利益に対して20.315%課税されます。

この2つは大きく違います。また、MAXIS米国株式は運用コストがスリム米国株式よりちょっとだけ高いです。さて、どちらが有利でしょうか?

もうわけが分からなくなった人もいると思います。それは僕の説明が下手くそだからです。

シミュレーション条件

次の条件でシミュレーションしました。

  • スリム米国株式の期待リターンを年率6%とします。
  • 投資対象株式から得られる配当金を、米国課税前で年率2%とします。
  • MAXIS米国株式から年2回出る分配金を、端株対応で(全額無駄なく)再投資できるものとします。
  • 投資期間を2020年から10年間とします。
  • 課税口座で100万円一括投資し、スリム米国株式は追加投資なし、MAXIS米国株式は分配金の再投資のみ、とします。
  • 売却時の、税引き後評価額を比較します。

シミュレーション結果

次は税引き前評価額の比較です。

税引き前評価額の比較グラフ

赤のラインがスリム米国株式、緑のラインがMAXIS米国株式です。青のラインはリターン差で、スリム米国株式ーMAXIS米国株式です。

大事なのは税引き後評価額の比較です。右軸のスケールを変えています。

税引き後評価額の比較グラフ

最初MAXIS米国株式が有利ですが、終盤はスリム米国株式の方が有利になっています。

次は比較期間を20年にしたものです。

税引き後評価額の比較グラフ、比較期間20年

20年間で4%ポイントに満たない差ですが、スリム米国株式の方が有利です。

なぜこのような結果になるのか

シミュレーション用プログラムが正しいとしてですが、なぜこのような結果になるのでしょうか。

  • 運用コストはMAXIS米国株式の方が高いので、分配金を無視するとスリム米国株式の方が有利です。
  • 分配金を出さないスリム米国株式は、配当金への課税が繰り延べされますが、その効果が出るのには年数がかかります。
  • 課税の繰り延べ効果が出ない時期は、課税上有利な分配金を再投資するMAXIS米国株式の方が有利です。
  • でも比較期間が長くなると課税の繰り延べ効果が勝るようになります。課税の繰り延べ効果は複利で作用します。

結論:MAXIS米国株式は運用コストが高く、長期投資ならスリム米国株式の方が有利です

運用コスト、配当金への課税、課税の繰り延べと、複数の要素が関係しますが、長期投資を前提とするならスリム米国株式の方が有利と言えます。

ETFは取引価格の整数倍でしか買えません。そのため積立投資や分配金の再投資に制約があり、投資信託の方が便利だし実用的です。

でもMAXIS米国株式の持つ(ETFゆえの)独特なメリットを活かせる人には、良い選択肢になり得るでしょう。時間が経過してMAXIS米国株式の運用実績が明らかになれば、VOOとの比較もできるはずです。今から楽しみです。

マザーファンドが同じであるメリット・デメリット

MAXIS米国株式の純資産総額は29億円程度ですが、マザーファンドはスリム米国株式と同じです。今後、MAXIS米国株式が売れるようになると、マザーファンドの規模拡大に寄与することになります。これはメリットです。

でもETFゆえ短期売買の対象にされる懸念もあります。MAXIS米国株式で発生する売買コストを、スリム米国株式の受益者に(できるだけ)負担させないような仕組み・運用であって欲しいものです。それは、三菱UFJ国際投信も良く分かっているはずです。

貸株金利0.1%を再投資したら

コメント欄で質問を頂きました。貸株金利が0.1%として、それを再投資したらどうなるか調べました。貸株金利は毎月もらえますが、年2回の分配金再投資のタイミングで一緒に再投資することにしました。つまり、半年分貯めてから、分配金に合算して再投資です。投資期間は20年間です。

貸株金利0.1%を再投資した場合の結果

MAXIS米国株式が有利です。

ここで貸株金利に課税していないことに気付きました。次は源泉徴収されて金利が0.08%になった場合です。

貸株金利に譲渡税を考慮した場合

この結果は納得できますね。でもこのシミュレーションはあくまで「端株対応」で行っている点に注意して下さい。

配当金が出ました

2020年6月8日にMAXIS米国株式(S&P500)の配当金(収益分配金と記載)の額が決定しました。(その案内がこちら。)一口あたり27円です。これはMAXIS米国株式(S&P500)のベビーファンドから分配されますので、それだけMAXIS米国株式(S&P500)の基準価額が下がります。

次はMAXIS米国株式(S&P500)の設定来のスリム米国株式(S&P500)とのリターン比較です。右端は2020年6月12日です。

MAXIS米国株式(S&P500)の設定来のスリム米国株式(S&P500)とのリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、スリム米国株式ーMAXIS米国株式です。スリム米国株式の方が低コストなので青のラインは右肩上がりで推移し(それは分かってるって)、赤の矢印の位置で跳ね上がっています。跳ね上がったのは6月8日、分配金が出たその日です。分配金が出たのでリターンが劣化した証拠です。

6月8日のリターン差は0.2743%です。この差は、毎営業日天引きされる運用コスト+配当金によるものですが、一口あたり27円の配当金と符号するでしょうか。計算しました。

配当金の利率の確認表

6月8日の基準価額に対して、26円では不足、28円では過剰、27円が最適となりました。よって、MAXIS米国株式(S&P500)の基準価額の変化は、配当金の金額とぴったり符号しました。

目論見書には分配方針についてこうあります。

分配方針

引用:目論見書

今回の配当金の利率0.2743%が多いか少ないかは、何と比較するかで変わるでしょう。でも三菱UFJ国際投信は、計算期間における配当金全額を分配するとあります。そして、それはファンド内で再投資されてキャピタルゲインの恩恵を受けている純資産から分配されているので、たとえ少ないと感じても損しているわけではありません。

もしこの分配の仕組みが気に入らないなら、MAXIS米国株式(S&P500)はあなた向きの商品ではないとうことです。

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