何かをきっかけにしてインデックス投資を始める方が、口座開設後に最初にぶつかる問題は「何を選べばいいか分からない」ではないでしょうか。僕もそうでした。最初は、そこそこのリスクでそこそこのリターンを目指すバランスファンドが好きでした。が、それから数年経過して、自分には株式インデックスが向いていることが分かり、2018年10月からはスリム先進国株式だけに投資するようになりました。
では、バランスファンドと株式インデックスのどちらがいいか、自分に向いているかは、どうやって判断すればいいでしょうか。
バランスファンドが債券にも投資する意味
バランスファンドの代表としてセゾングローバルバランス、株式インデックスの代表としてeMAXIS先進国株式を選びました。セゾングローバルバランスは株式と債券の比率が50:50の、王道とも言える組成です。
引用:目論見書
次は2010年年初から2021年3月26日までの、セゾングローバルバランスとeMAXIS先進国株式のリターン比較です。
赤のラインがeMAXIS先進国株式、緑のラインがセゾングローバルバランスです。青のラインはリターン差で、eMAXIS先進国株式ーセゾングローバルバランスです。
リーマンショック後の株価低迷期は互角でしたが、2013年以降eMAXIS先進国株式に差を広げられます。相場に大きく依存しますが、強気相場ではセゾングローバルバランスがeMAXIS先進国株式にリターンで勝つのは無理です。そして2013年以降で見ると強気相場の期間の方が圧倒的に長かったので、数年間の幅を取るとeMAXIS先進国株式の方が高パフォーマンスでした。
積み立てシミュレーション
次はセゾングローバルバランスとeMAXIS先進国株式に、2010年から毎月初3万円を積立投資していた場合のシミュレーションです。
灰色のラインは元本です。赤と緑のラインは税引前評価額です。チャイナ・ショック、コロナショック時には差が縮まりましたが、現在は大差がついています。eMAXIS先進国株式の利益率はセゾングローバルバランスのほぼ2倍です。
この場合、eMAXIS先進国株式の受益者はセゾングローバルバランスの受益者よりも高いリスクを負い、より高い価格変動に耐えて積立投資を継続した成果として、ほぼ2倍の含み益を得ることができました。(でも、次回の株価暴落時にはその比率が再度小さくなるはずです。)
リスク(変動率)の違い
価格変動の大きさを数式で求めた変動率(ボラティリティ)は、リスクを表す指標のひとつです。次は月次で求めたリスクを年率換算したものです。
株式100%のeMAXIS先進国株式に対し、株式比率が50%のセゾングローバルバランスのリスクは低く抑えられています。
バランスファンドはシャープレシオが高い
リターンとリスクの比率から、投資対象の運用効率を示す指標がシャープレシオです。高いほど効率が良いです。次はシャープレシオを比較したものです。
確かに、バランスファンドのシャープレシオは高いです。
債券の値動き
債券はリターンとリスクが低い資産クラスです。単独では資産形成に不向きで、債券100%のファンドはつみたてNISA適格になれません。
また、株式と逆の相関があり、株式と組み合わせることでリスクとリターンを改善できると教科書に書かれていますが、これは話半分に聞いておいた方がいいですね。
以下、eMAXISシリーズを使って株式と債券の値動きを比較します。赤のラインが株式、緑のラインが債券です。
次は先進国株式と先進国債券の比較です。
強気相場でもあまり上昇しませんが、株価暴落時に下落しにくいのが特徴です。
次は新興国株式と新興国債券の比較です。
これでも債券なのかという値動きですが、これが現実です。
次は国内株式と国内債券の比較です。
国内債券はマイナス金利政策によりほとんどリターンを生み出さない状態が続いています。なのに、将来の金利上昇時には価格が暴落するリスクが確実にある、うれしくない資産クラスです。
リターンが高いのは高いリスクを負うから
バランスファンドの組成はピンキリで、文字通りバランスの良いものもあれば、そうでないものもあります。でも乱暴な言い方をすると、リターンが高いバランスファンドは高いリスクを負っています。
ダイワ・ライフ・バランスは典型的な4資産バランスファンドで、株式と債券の比率が異なる3タイプが組成されています。株式比率は70%、50%、30%です。
株式比率は赤のラインが70%、緑のラインが50%、青のラインが30%です。株式比率が低いと上昇率は低くなるものの、株価下落時(暴落時)の下落率が極端に低いため、暴落後しばらくは株式比率が低い青のラインが有利です。
でも強気相場が続くと株式比率が高い方が有利で、リターン差を広げます。そのため、比較期間が長くなればなるほど、株式比率の高い方がパフォーマンスが良くなります。
次は同じ比較を2018年年初から行ったものです。
2020年までは、青のラインの株式比率30%も悪くなかったと思えます。でも2021年はバブルっぽい強気相場も影響もあって株式比率が高い方が有利です。
下落率の高さに耐えられますか?
次はセゾングローバルバランスとeMAXIS先進国株式の、2020年年初からの比較です。
セゾングローバルバランスは、コロナショック時の下落率が17%と低いです。eMAXIS先進国株式の下落率は35%でした。この株式インデックスの下落率の高さに耐えて買い持ちできるなら、バランスファンドより有利です。
次は2018年年初からの比較です。
バランスファンドのメリットとデメリットが良く分かりますね。
時々訪れる株価暴落時に、その下落率の高さに耐えられないで売却・退場してしまったのでは意味がありません。積立投資、買い持ちを続けることが資産形成のカギです。株式100%は無理だけど、バランスファンドなら耐えられるのであれば、バランスファンドが向いています。
株式100%の高い下落率にも耐えられるのであれば、そして長期投資を前提としてバランスファンドより高いリターンを求めるのであれば、株式100%が向いています。ただし、この下落率の高い低いは、バランスファンドの組成(基本的には債券比率)で変わります。リーマンショックを超える超弩級の暴落で、株式100%が60%下落、バランスファンドが30%下落する可能性だってあります。
長期投資前提なら株式100%が有利
株式100%の高い下落率にも耐えて長期投資できるのであれば、バランスファンドより高いリターンが期待できます。それはこれまで見てきたグラフからも分かります。では過去の実績では、どれぐらいの期間保有できたら、株式100%のインデックスファンドはバランスファンドに負けなかったでしょうか。
それをシミュレーションで調べています。コロナショックによる株価暴落だと、4、5年でした。

多くのインデックス投資家にとって4、5年は短いはずです。つみたてNISAの非課税期間は20年もありますしね。もちろん、未来に経験する株価暴落の規模によっては、バランスファンドを選択しなかったことを悔やむ展開もあるでしょう。決めるのは、みなさんです。
株式インデックスの方が圧倒的に売れています
次はつみたてNISA適格商品の2020年の資金流入額上位40までの一覧です。つみたてNISA口座で買われた、ではなくて、つみたてNISA適格商品で買われたランキングです。バランスファンドを黄色に塗ってあります。
40位中13本がバランスファンドで、資金流入額の合計は1,175億円です。株式インデックス27本の合計は7,016億円なので、株式インデックスはバランスファンドの6倍も売れたことになります。
結論:自分で判断して下さい
たとえばコロナショック時の下落率を見て、株式インデックスだと耐えられそうにないなら、バランスファンドがいいです。実際に投資してみないと分からないなら、バランスファンドから始めてみるのもいいでしょう。そして基準価額の変動に慣れてきてから、再度判断をしたのでも遅くはありません。
株式インデックスの高いリスク(下落率)に耐えられるし、10年、20年の長期投資を前提としているけれども、バランスファンドのそこそこのリターンで満足だ、という人もいるでしょう。いつやって来るか分からない暴落時のことを考えると、バランスファンドの下落率の(相対的な)低さから得られる安心感を優先したい人もいるはずです。
バランスファンドと株式インデックスのどちらが向いているかは、各個人ごとに異なります。自分で判断すべきです。決して、好感を持っている投信ブロガーがこう言ってるから、ああしているから同じでいい、とすべきではありません。
とりあえず始めてみるなら、次の組み合わせはどうでしょうか。
- スリム全世界株式(オール・カントリー)
- スリムバランス(8資産均等型)
これらを毎月同額積み立てます。時々値動きの違いを確認しながら1、2年経過したら、どちらが向いているか分かってくると思います。(どちらかに決めた場合も、すでに投資している商品はそのままガチホするのがいいと思います。)