不老不死でないインデックス投資家のみなさん、インデックス投資の出口戦略を考えていますか?
僕は現在スリム先進国株式に集中投資していますが、いずれ資産を取り崩しながら生活するようになります。そうなってからも、株価暴落は定期的にかつ突如やって来ます。その場合、追加投資の絶好のチャンスだなんて歓迎する気にはなれません。スリム先進国株式の評価額は簡単に3割、4割下落します。
そうなっても平気でいられるように、リスク資産の多くをスリム先進国株式からリスクの低い債券に移すことを考えていました。為替ヘッジありの米国債券ファンドを有望視していたのですが、近年の為替ヘッジコスト上昇により、出口戦略には使えないと判断を変更しました。
更新情報
参照しているデータを最新版に更新しています。また、結論を変更しています。
iシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジあり)
iシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジあり)は「FTSE米国債7-10年セレクト・インデックス(国内投信用 円ヘッジ円ベース)」をベンチマークにしています。投資対象は満期7年以上10年未満の米国債です。税抜き信託報酬は0.14%です。
このETFには為替ヘッジなしもありますが、僕の目的にはあいません。
次はiシェアーズ米国債7-10年 ETFの為替ヘッジあり、なしのリターン比較です。2017年10月16日から2023年2月24日までです。
赤のラインがヘッジなし、緑のラインがヘッジありです。ヘッジありの方が値動きの幅が狭かったのですが、2021年春から逆転してしまいました。これは債券金利上昇による基準価額の暴落と急激な円安の組み合わせによる結果です。
このグラフで大事なのは、iシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジあり)も債券金利上昇時には暴落するという当然の事実です。そして20%も暴落したら回復には(株式ファンドよりずっと)長い期間が必要になるはずです。震えますね。
為替ヘッジの効果
次はiシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジなし)とドル円の推移の比較です。
赤のラインがiシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジなし)、緑のラインがドル円の推移です。
次はヘッジなしのデータにドル円の変化を乗じた合成結果と、ヘッジありの比較です。
赤のラインが本物のヘッジあり、緑のラインが合成結果です。合成結果は為替ヘッジがロスなく行えた理想的な状態を示しています。合成結果の方が本物よりリターンが高い理由は、為替ヘッジに必要なコスト(ヘッジコスト)かも知れません。少なくとも、本物のヘッジありは合成結果に近い値動きをしているので、ヘッジありが為替の変動を抑えようとしていることは確かです。
米国長期債の利回りの推移
次は過去30年間の米国10年国債の利回りの推移です。
引用:投資の森
変動しながらも下落傾向が続いていましたが、コロナショック後の金融緩和バブルの後始末のために急上昇しています。
金利が上がると債券価格は下がりますから、出口戦略で債券ファンドを買うなら金利が上がっている時期にしたいものです。iシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジあり)の場合、米国債(特に長期債)の金利の動向さえ把握すれば、このETFの取引価格が安い時期なのか高い時期なのか見当が付きます。
先進国債券インデックスファンドだとそういうふうに考えるのは(先進国に分散しているので)難しいです。
という考えでしたが、金利変動のリスクはとても高いものだと悟り、考えが変わりました。
コロナショックによる株価暴落でどうなった
2020年2月に始まったコロナショックによる株価暴落で、iシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジあり)はどのような値動きだったでしょうか。次は2020年年初からの、スリム米国株式(S&P500)との比較です。縦軸は対数です。
赤のラインがスリム米国株式(S&P500)、緑のラインがiシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジあり)です。株価暴落時にわずかに上昇しています。素晴らしいです。債券の良さが発揮されました。
が、その後ジリジリと下落傾向が続いています。金融緩和バブルでインフレが高まり、それを抑制するために金利を上げ続けているからですね。値動きが小さいことを期待している債券ファンドでこれだけ下がるようでは、リスクを下げるのが目的の出口戦略には使えません。
配当金利率
iシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジあり)は年4回配当金を出します。ETFなので出さないようにはできません。
配当金は年4回出ます。直近1年間の配当利率は1.50%(税引前)でした。それだけの利率の配当金を手にできたら(出口戦略として)満足なのですが、基準価額が簡単に暴落するのでは意味がありません。
iシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジあり)を買った後どうするつもりだったの
以下はiシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジあり)が出口戦略に有望だったころの考えです。
年4回もらえる配当金は再投資しないで使います。資産を取り崩しながら生活しているのですから当然です。
また必要な口数だけ適宜売却します。できれば、購入時よりも取引価格が下がっていない時に売却したいですね。でもなかなかそうも行かないでしょう。だからこそ、できるだけ米国の金利が高い時期に、スリム先進国株式からiシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジあり)への転換をしたいものです。
でも、そもそも、スリム先進国株式の含み益が大きい時の売却代金で購入したのですから、数パーセント下落している時に(このETFを)売却することになってもいいじゃないですか。スリム先進国株式のままだったらそれとは比較にならない高い変動率(ボラティリティ)を許容しなければならないのですから。
もしこのETFを購入時よりも安い価格で売却するのさえイヤだというなら、無リスク資産を選択するしかないですね。個人向け国債10年変動とか。それも出口戦略の選択肢のひとつです。
で、この考えは甘かったです。現実の出口戦略で採用する前に気付いて良かったです。
売買手数料
楽天証券、SBI証券なら売買手数料は無料です。そのため気軽に売買できます。その気になれば、ですが。(もうならないです。)
二重課税の調整対象じゃない?
コメント欄でご指摘いただきました。iシェアーズ米国債7-10年 ETF(ヘッジあり)(ティッカー1482)は、二重課税の調整対象ではないのではないか?というものです。自分で調べた結果そうらしいので、ツイッターで質問してみました。その回答です。
元々債券は外国税額は0%(厳密には外国税額を加えて20.315%)なので、二重課税調整の対象外になる可能性があります。
ETFで買った段階では一時的に外国源泉税が引かれていればそれは還付対象になると思いますが。
HYGを買った時には一時的に外国税額が引かれても還付されています。— takachan🐣寝る子の資産は良く育つ (@takachan_egg) November 16, 2020
結論としてはこうなりました。
- 1482が二重課税の調整対象だとする資料はありません。
- でも状況証拠的に、そもそも二重課税が発生していない(国内課税のみ)だと思われます。
ということで、二重課税ではないので安心というのが結論です。
評価:出口戦略に不向きです
債券ファンドは為替変動の影響を大きく受けるので、為替ヘッジが必要、でも為替ヘッジコストは実は簡単に高くなる、そして債券金利の上昇による基準価額の変動に耐えるのは難しいということが、近年の経済環境で明らかになりました。それより前の、ゆるやかに金利が下げる傾向が長く続いてきたことで感覚が麻痺していたのもあると思います。結論としては、米国債券ファンドはそんなに都合のよいものではなく、僕が夢想していた出口戦略には不向きだということが分かりました。終了です。