スリムシリーズはインデックスファンドのローコストリーダーですが、他社対抗でしか信託報酬を引き下げない姿勢は批判されることもあります。それでも宣言どおりに信託報酬を引き下げきた姿勢は多くの受益者から評価されており、それは商品の人気に表れています。
更新情報
純資産総額と売上高を更新しました。スリムシリーズの純資産総額が3兆円になり、推定売上高はほぼ12億円になりました。
eMAXISシリーズの廉価版としてスタート
スリムシリーズの第一弾が設定されたのは2017年2月27日でした。eMAXISシリーズと同じマザーファンドを利用し、信託報酬を低く抑え、さらに「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」をうたい文句にした新シリーズの登場でした。が、eMAXISシリーズの信託報酬を引き下げるのではなくて、別シリーズの新設だったことから、既存の(eMAXISシリーズの)受益者から大いに批判されました。
スリムシリーズは資産クラスによって異なるものの、うたい文句通りに信託報酬を引き下げてきました。ところがeMAXISシリーズは設定来、一度も信託報酬を引き下げていません。そのことへの不満は、今でも機会があるごとに耳にします。
でもこれは、スリムシリーズ登場後にインデックス投資を始めた人にとっては関係のない昔話であり、スリムシリーズとeMAXISシリーズの関係は重要ではありません。
他社対抗でしか信託報酬を引き下げていません
スリムシリーズの最大の特長は「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」をうたい文句にしていることです。あくまで目標であって、必ずそうすると約束されているわけではありませんが、これまでのところはそれを守っており、シリーズの圧倒的な人気の源泉となっているのは間違いないでしょう。
実際スリムシリーズは宣言どおりに信託報酬を引き下げてきました。が、他社対抗で同率水準に引き下げることしかせず、単独で最安にしたことは一度もありません。そのことを批判する人もいますが、スリムシリーズの人気を見れば、戦略的に成功していることは確かです。
対抗する商品の幅は広い
対抗する商品の信託報酬と同率に引き下げるけど、それより安くしたり、自発的に引き下げることはしないと批判的に言われます。でも、対抗値下げする商品の幅は広いです。普通に考えれば、ベンチマークが同じ商品に限定したいところでしょうが、ベンチマークは無視して三菱UFJ国際投信の判断で決めています。
実例をあげます。
- EXE-iつみたて先進国株式(現在のSBI先進国株式)とスリム先進国株式
- EXE-i つみたて新興国株式(現在のSBI新興国株式)とスリム新興国株式
- SBI全世界株式とスリム全世界株式(オール・カントリー)
- Smart-i 8資産バランス(これは8資産均等型ではない)とスリムバランス(8資産均等型)
また、現物株運用に限定せず、ETF運用の商品も対象にしています。ETFを1本から数本買うだけの運用で良い商品と、銘柄数が500を超える現物株運用ではコスト構造が違うはずで、それに同率で対抗するのは厳しい面もあると思われます。(ETFの経費率がないため、信託報酬の構成上有利な面もありますが。)
野村スリーゼロ先進国株式投信は対象外
スリム先進国株式は、野村スリーゼロ先進国株式投信の10年間信託報酬がゼロには(当然のことながら)対抗しませんでした。そのことで揚げ足を取ってた人もいたようですが、アホらしくて相手する気になれません。
SOMPO123 先進国株式も対象外
SOMPO123 先進国株式は先進国株式に投資するアクティブファンドで税抜き信託報酬は0.07%と激安です。でもインデックスファンドではないため、スリム先進国株式は対抗値下げしないと思っています。対抗しなくても一般の受益者から不満が出るとは考えにくいです。
実際、対抗値下げしていませんし、それに対して不満の声も出ていません。
対抗値下げできない日が来るかも
どうせ売れないからと儲ける気はなく、ETFを買うだけのインデックスファンドで信託報酬を思いっきり下げた商品が、米国株式や全世界株式で組成されるかも知れません。その場合、コスト構造的にスリムシリーズでは対抗値下げできない可能性は十分あります。
その時のための布石と言うと語弊がありますが、スリムシリーズの基本理念について次のように表明しています。
私どもが何よりも大事にしたいことは、投資家のみなさまの長い将来にわたる資産形成に、よりよい形で寄り添い続けることです。信託報酬率の引き下げ等コストの削減はその一つですが、そのためにファンドの継続性等が懸念されるような事態は避けるべきと考えています。
引用:スリムシリーズの基本理念
これは、対抗値下げできない限界はありますよ、と言っているのです。
期待できない受益者還元型信託報酬制度
スリムシリーズは受益者還元型信託報酬を採用しています。純資産総額が500億円、1,000億円を超えると、超えた部分について低減された信託報酬が適用されるというものです。全体ではなくて、超えた部分について、というのがミソです。
この制度、スリムシリーズ登場当初は十分意味があったのですが、信託報酬引き下げ競争の結果、漸減率が圧縮されてしまい、ほとんど意味がなくなった商品もあります。
でもセールストークとしては有効で、それにより受益者数、純資産価額が増えれば既存の受益者にも間接的なメリットが期待できます。
スリムシリーズ全商品レビュー
スリム米国株式(S&P500)
スリムシリーズで最も売れています。純資産価額、資金流入額ともに圧倒的です。
スリム全世界株式(オール・カントリー)
純資産価額はスリムシリーズ2位ですが、直近の資金流入額はスリム米国株式(S&P500)を上回っています。驚異的な人気を獲得しています。
スリム先進国株式
スリム全世界株式(オール・カントリー)、スリム米国株式(S&P500)にそのポジションを奪われてしまいましたが、かつてはスリムシリーズを代表する商品でした。
スリムバランス(8資産均等型)
このブログで扱っているバランスファンドとしては、セゾングローバルバランスの次に良く売れています。
スリム全世界株式(除く日本)
かつては全世界株式と言えば日本を含まないのが当たり前でしたが、楽天全世界株式が登場してから、日本を含む全世界株式に時価総額比で投資するのが最適解と言われるように変わりました。
スリム新興国株式
MSCIエマージング・マーケット指数連動商品では一番人気です。
スリム国内株式(TOPIX)
スリムシリーズなら何でも一番人気になれるかと言うと、そんなに甘くはありません。このブログで扱っているTOPIX連動商品では純資産価額で3位です。
スリム国内株式(日経平均)
驚いたことに、つみたて日本株式(日経平均)より不人気です。スリムシリーズの一角と言えども、手放しではおすすめできません。
スリム先進国債券
トータルコスト、人気(純資産価額)、信託報酬引き下げ余力への期待を考えると、先進国債券インデックスに投資するならスリム先進国債券一択でいいでしょう。
スリム国内債券
国内債券インデックスに投資するなら、一番人気ではないものの、信託報酬が最安で今後の引き下げも期待できるスリム国内債券をおすすめします。
スリム先進国リート
スリムシリーズ嫌いでなければ最良の選択肢です。
スリム国内リート
パフォーマンスに不満があるものの、国内リートインデックスの中では一番おすすめできます。
スリムシリーズが嫌いなら、Smart-i Jリートか、Funds-i J-REITがいいです。
スリム全世界株式(3地域均等型)
ものすごく不人気ですが、3地域均等型を嗜好する人には素晴らしい商品です。
純資産総額一覧
スリムシリーズは商品によって人気に偏りがあります。次は純資産総額順でソートしたものです。
シリーズ全体で5.1兆円あります。凄いですね。
でも人気の差が大きく、上位3商品で全体の80%を超えます。円グラフで見ると、良くわかります。
でもこれは資産クラスそのものの人気を反映しており、3地域均等型を除いて良く売れていると言えます。
売上高
現在の純資産総額が維持されると、三菱UFJ国際投信が信託報酬から手にする1年間の売上額がいくらになるか試算しました。受益者還元型信託報酬制度を勘案しています。
総額17.93億円です。純資産総額5.1兆円でたったのそれだけ?と思ってしまいますが、それほど利益の少ない、純資産総額の桁を増やさないと成立しないビジネスです。
まとめ
スリムシリーズは年数をかけて高い人気を獲得してきました。商品の組成内容、運用の安定性も申し分なく、信託報酬以外のコスト削減への取り組み姿勢も評価できます。また、マーケティング活動にも幅広く注力しており、ブロガーミーティング、オンラインセミナー、ファンミーティングを積極的に開催しています。
ローコスト商品で勝負するには、受益者数と純資産総額を増やすしかないからでしょう。スリムシリーズはこれまでのところ、うまくやれていると思います。これからもそうできるかどうかは、未来になってみなければ分かりません。でも、受益者の期待に応え続けるのは、簡単なことではないですね。