次は著名な投信ブロガーである水瀬ケンイチさんの著書「お金は寝かせて増やしなさい」からの引用です。
株式クラスと債券クラスという値動きが違うアセットクラスを組み合わせることによって分散効果が働き、あまり期待リターンを下げずにリスクを効果的に下げることができます。
引用:お金は寝かせて増やしなさい 93ページ
これは正しいと思いますが、このことから次のように期待する人がいると思います。
「債券クラスを組み込んだバランスファンドは株価下落時(暴落時)に、株式だけに投資するファンドよりも下落率が小さくてすむに違いない。」
本当でしょうか。直近3回の急落時にどういう値動きをしたか、実績データを確認しました。
珍しくない株価急落
次はeMAXIS Slim先進国株式の設定来の基準価額の推移です。
青の丸で囲ったところ、左から順にこうです。
- 2018年2月の株価調整。
- 2018年10月に始まった世界同時株安。
- 2020年2月21日に始まった、まだ呼称が定着していない急落。
比較対象インデックスファンド
株式インデックスファンドから3本、バランスファンドから3本選択しました。
- 楽天全米株式
- eMAXIS Slim先進国株式
- eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)
- eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)
- セゾングローバルバランスファンド
- ニッセイバランス(4資産均等)
2018年2月の株価調整での値動き
次は株価調整が始まる直前の2018年2月1日から2月23日までのリターンの推移です。
見事に2つのグループに分かれています。下落率の低いのがバランスファンド、高いのが株式インデックスファンドです。確かにバランスファンドの下落率は低かったです。
2018年10月に始まった世界同時株安での値動き
次は世界同時株安が始まる直前の2018年10月1日から、底値から反発を始める2019年1月4日までのリターンの推移です。
バランスファンドと株式インデックスファンドの違いが明確に表れていますね。
2020年2月21日に始まった急落での値動き
次は株価急落が始まる前日の2020年2月20日から2020年3月6日までのリターンの推移です。
青のラインのeMAXIS Slim国内株式(TOPIX)が中途半端ですが、この株価急落でもバランスファンドは下落率が低く抑えられています。
バランスファンドは変動率が小さい
バランスファンドは、株価急落時の下落率が、株式インデックスファンドより低いです。でも同時に、強気相場での上昇率も、株式インデックスファンドより低くなります。
次は2018年2月からの、楽天全米株式とeMAXIS Slimバランス(8資産均等型)のリターン比較です。
赤のラインの楽天全米株式は変動率が高いです。この変動率は、数値で表せるリスクのひとつです。緑のラインはeMAXIS Slimバランスは、変動率が小さく、値動きがおとなしいです。
次は最高値からの下落率をプロットしたものです。
赤のラインの下落率の高さに不安を感じる人は、バランスファンドがいいかも知れません。
でも、数年以上の期間で見ると、バランスファンドは株式100%のインデックスファンドにリターンで勝てなくなります。バランスファンドの値動きの少なさは、高いリターンを犠牲にした結果なのです。
まとめ:バランスファンドは株価下落時に強みを発揮できています
僕は債権不要論者なので、資産形成のためには株式100%のインデックスファンドが良いという立場です。が、インデックス投資による資産形成は、株価調整時、株価暴落時に狼狽売りすることなく、積立投資を継続できてこそ、成功させることができます。ところが価格変動への耐性が低いと(=株価の変動に慣れていないと)、狼狽売りしたり、積立設定を解除してしまうリスクが高まります。これは、数値で表せないリスクのひとつです。
そのため、人生で初めてのインデックス投資では、値動きがおとなしいバランスファンドを選択するのも良い選択だと思っています。株価急落時に自分がどれだけ平常心を保てるかは、経験してみなければ分からないというのも真理だからです。そして、2年もすれば何度か株価調整ぐらいは経験するでしょうから、そのあとで、リスクとリターンと自分の好み、気持ちを天秤にかけて、バランスファンドへの投資を継続するか、株式100%インデックスファンドに切り替えるかを判断しても良いでしょう。
僕もかつてはバランスファンドの、そこそこのリスクでそこそこのリターンを目指せる組成を嗜好していました。でもバランスファンドのリターンの低さに嫌気がさして、債権不要論者に転向しました。