米国株式

iFreeレバレッジNASDAQ100の運用コストと評価

NASDAQ100が現在のように注目されるようになったのは2019年12月以降ですが、iFree NEXT NASDAQ100が設定されたのは2018年8月でした。そして2ヶ月後には2倍ブル型であるiFreeレバレッジNASDAQ100が登場しました。

僕はiFreeレバレッジNASDAQ100を高く評価していますが、「レバナス」の愛称でもてはやされ、リスクの高さを軽視した意見が多く聞かれる現状には危うさしか感じていませんでした。今ではすっかり、雲行きが変わったと思います。受益者は大きな含み損に耐えられるでしょうか。

更新情報

参照しているデータを最新版に更新しています。

iFreeレバレッジNASDAQ100

2018年10月19日に税抜き信託報酬0.9%で設定されました。高いですね。レバレッジのかかっていないiFree NEXT NASDAQ100の税抜き信託報酬は0.45%ですからぴったり2倍です。

  • 株式の先物取引により、日々の基準価額の値動きがNASDAQ100指数の値動きの2倍程度となることを目指します。
  • E-mini NASDAQ100種株価指数先物取引を利用します。米国の株式への直接投資は行っていません。
  • 円で為替ヘッジされます。
  • 購入時手数料税抜き2.0%が設定可能で、証券会社を選ばないとしれっと徴収されます。

楽天証券では次のように案内されています。(赤枠で囲ったのは僕です。)

楽天証券ではすべてのファンドが買付手数料無料

引用:楽天証券

でも、ブル・ベア型ファンドで買付手数料がゼロになると、投機的売買、短期売買を促進してしまう側面は否定できないでしょう。ブル・ベア型ファンドはそもそも、原理的に長期投資に向かないので(そのように考えない人もいますが)、受益者の中には短期売買をする人が一定数いる、よって売買比率が高くなるのでそれに伴うコストを受益者全員で負担しているのだということは、理解して投資すべきです。

もちろん、つみたてNISA適格ではありません。

運用の詳細について

大和アセットマネジメントがiFreeレバレッジNASDAQ100の「よくある質問と回答」を公開しています。とても丁寧に書かれており、正しく理解して欲しいという気持ちがにじんでいます。

以下はそのエッセンスを抽出したものです。

  • 2倍のレバレッジをかけるのに、先物を使った差金決済取引を利用しています。純資産総額が100万円なら、200万円に相当する先物を買い建てます。
  • 差金決済取引のために必要な証拠金は15から20%です。これを米ドルで持ちます。
  • 為替ヘッジの対象となるのはファンドが保有する米ドル部分(純資産の30〜40%程度)です。レバレッジをかけた全資産の200%ではありません。
  • 為替ヘッジの実際のコストはたまに1%を超えることがあるものの、おおむね0.3%から0.5%程度で推移しました。
  • 運用管理費はレバレッジをかけた全資産の200%にかかっているわけではありません。純資産総額にかかっています。
  • 売買しているのは先物で、現物株ではないので配当金は得られませんが、先物の指数が配当金を含んでいるので、(理論的には)配当を受け取っているのと実質的に同等のパフォーマンスとなります。
  • 先物取引には金利がかかりますが、iFreeレバレッジNASDAQ100の基準価額の値動きはその金利を含んだもので、別途受益者に請求されることはありません。

この資料からも分かりますが、iFreeレバレッジNASDAQ100の運用は目論見書通り、期待通りです。

運用コスト

次は運用報告書から計算したトータルコストです。iFreeレバレッジS&P500と比較しています。

iFreeレバレッジS&P500とiFreeレバレッジNASDAQ100のトータルコスト一覧表

iFreeレバレッジNASDAQ100は隠れコストが高いです。

iFreeレバレッジNASDAQ100のトータルコストの三期比較表

第二期は第一期の2.8倍にもなってしまいました。第三期は第二期と変わらずでした。

次は隠れコストの明細です。高さが目立つ項目を赤字にしています。

iFreeレバレッジNASDAQ100の隠れコストの三期比較表

その他費用の「その他」が高いです。この項目は内訳が不明です。iFreeレバレッジS&P500も同様に「その他」が増えていました。なお、レバレッジをかけることで生じる金利は運用報告書には出てこないものと思われます。

iFreeレバレッジNASDAQ100のトータルコストが高いことは確かですが、なんでもかんでもスリムシリーズ並みでないとダメと言うことではありません。その資産クラスの特性、事情、他社商品との競争を含めて判断すべきです。それでも僕は信託報酬税抜き0.9%は高額で、せいぜい0.6%程度なら良かったのにと思います。

金利の影響

iFreeレバレッジNASDAQ100は2倍のレバレッジをかけるのに先物取引を利用しています。その際には金利を負担する必要があり、米国金利が上昇すると金利負担が増えます。これは当たり前の話なのですが、ツイッター界隈でいろんな憶測が飛び交いました。大和アセットマネジメントは見るに見かねたのでしょう、すぐさま金利の影響に関する公式レポートを公開しました。

米国短期金利が3%だと、ざっくり金利負担と為替ヘッジコストで6%はかかると思われます。これは重いですね。強気相場ならまだしも、弱気相場またはボックス相場では無視できないほどの負担になります。

QLD

NASDAQ100でブル型と言えばTQQQ(ProShares社のETF)が超有名です。これは3倍です。2倍はQLDですが、QLDは楽天証券、SBI証券、マネックス証券では買えません。以前サクソバンク証券で買えていましたが、2021年11月で買えなくなりました。

QLDの経費率は0.95%と高額です。

次はQLDのトータルリターンと、レバレッジのかかっていないQQQのトータルリターンの比較です。QLDが設定された翌年の2007年年初から2022年10月28日までです。縦軸は対数です。

QLDのトータルリターンと、レバレッジのかかっていないQQQのトータルリターンの比較グラフ

赤のラインがQLD、緑のラインがQQQです。株価が上昇できなかった2014年より前はQQQに負けていました。2014年以降の強気相場では凄まじい上昇率ですが、下落率も同様に凄まじいです。この乱高下に耐えられない人はレバレッジ型に手を出してはいけません。

このグラフから、QQQの上昇局面では高いリターンが期待できるものの、下降局面では含み益を急速に溶かしてしまうことが分かります。でもコロナショックによる株価暴落時だってQQQよりプラスだから、長期投資に不向きとは言えないかも知れません。それは原資産の値動き次第ですね。(今は)絶好調だからと調子に乗ってリスクを取りすぎると、暴落時にひどく後悔するかも知れません。

iFreeレバレッジNASDAQ100とiFree NEXT NASDAQ100のリターン比較

次はレバレッジのかかっていないiFree NEXT NASDAQ100とのリターン比較です。2018年11月5日から2022年10月28日までです。

iFreeレバレッジNASDAQ100とiFree NEXT NASDAQ100のリターン比較グラフ

コロナショックによる株価暴落時には大きく下落しますが、それまでの上昇率が高かったため、iFree NEXT NASDAQ100よりわずかにマイナスになっただけでした。暴落後の回復力も凄まじく、iFree NEXT NASDAQ100との差をガンガン広げましたが、最近の株安によりコロナショック後の上昇分を全て吐き出してしまいました。(これにはiFree NEXT NASDAQ100が受けている円安効果の影響もあります。)

為替ヘッジの効果

iFreeレバレッジNASDAQ100は円で為替ヘッジされます。それを好ましく思うかどうかは受益者によって異なると思いますが、その(コストの必要な)為替ヘッジはどれぐらい効いているのでしょうか。それを調べることは可能でしょうか。

次はiFreeレバレッジNASDAQ100と、iFree NEXT NASDAQ100の日々の値動きを2倍にしたものの比較です。iFreeレバレッジNASDAQ100の設定直後を避けた、2018年11月5日から2022年10月28日までです。

iFreeレバレッジNASDAQ100と、iFree NEXT NASDAQ100の日々の値動きを2倍にしたもののリターン比較グラフ

青のラインはうねっています。うねりを生み出しているのは為替です。最近大きく落ち込んでいるのは、円安の影響です。

次は同じ期間におけるドル円の推移です。

ドル円の推移グラフ

2022年3月以降の円安が激烈です。

次はQQQ(NASDAQ100指数に連動するETF)トータルリターン(ドルのまま)の日々の値動きを2倍にしたものと、iFreeレバレッジNASDAQ100の比較です。グラフのスケールは同じです。

QQQトータルリターン(ドルのまま)の日々の値動きを2倍にしたものと、iFreeレバレッジNASDAQ100の比較グラフ

青のラインにうねりはありません。青のラインの形状は想定通りです。このことから、iFreeレバレッジNASDAQ100の為替ヘッジは期待通り効いていると断言します。そして最近の急激な円安に対しても為替ヘッジはしっかり効いてます。

為替ヘッジコストは増えているのか

金利差が拡大しているので、iFreeレバレッジNASDAQ100の為替ヘッジコストはびっくりするほど増えているはずです。それは、大和アセットマネジメントも認めています。

では、それを実際の基準価額データから読み取れるでしょうか。

次は前記グラフの比較開始を2020年5月1日して、縦軸のスケールを変更したものです。

前記グラフの比較開始を2020年5月1日して、縦軸のスケールを変更したもの

青のラインは、いろいろはしょって言うと、iFreeレバレッジNASDAQ100のコストの高さを示しています。次は、QQQトータルリターン(2倍ブル、ドルのまま)の運用コストを年率2.5%ポイント増量したものとの比較です。

QQQトータルリターン(2倍ブル、ドルのまま)の運用コストを年率2.5%ポイント増量したものとの比較

2021年9月までは2.5%ポイントの増量でちょうど良かったのですが、その後増量しすぎになります。が、2022年4月からは増量不足です。

この話、怪しいですか?そうかも知れませんが、そこそこ当たっている気がしています。

まだ売れています

次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は1,214億円です。

iFreeレバレッジNASDAQ100の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

長らく不人気でしたが、2019年12月のブラッククリスマスあたりから突然売れ始めました。この人気の源泉は間違いなくNASDAQ100の驚異的なパフォーマンスです。時々頭打ちになりながら、売却もされながら、良く買われています。基準価額の動きからは考えられない売れ行きです。

次はiFree NEXT NASDAQ100もプロットしたものです。純資産総額は498億円です。

iFree NEXT NASDAQ100もプロットしたグラフ

緑のラインがiFree NEXT NASDAQ100です。iFree NEXT NASDAQ100は明らかに勢いが落ちてきていますね。

評価:高コストですが運用が安定しており高評価

iFreeレバレッジNASDAQ100は高コストですが、支配的なのは信託報酬です。隠れコストも高いですが、運用は期待通りで、目論見書通りと言っていいでしょう。さらに、為替ヘッジが期待通り効いていることも分かっています。僕は高く評価しています。

ただし、金利負担と為替ヘッジコストは運用報告書にも記載されず、金利の上昇によってその負担が増えます。受益者はこのことをよく理解しておくべきです。

信託期間は無期限です。購入時手数料が税抜き2.0%もかかるというデメリットがありますが、現在では証券会社を選べば無料なので、これは気にしなくていいでしょう。

iFreeレバレッジNASDAQ100は、人気のNASDAQ100に2倍のレバレッジをかけて投資したい人にとって、この上なく都合の良い選択肢です。100円から気軽に投資できる投資信託ですからね。良い時代になったものです。

でもリスクの取り過ぎには注意した方がいいですね。NASDAQ100指数が暴落した時のことは覚悟しておくべきで、そうなってもいいだけの資金しか投じないことです。2021年はレバナス信者の強気な発言が目立ちますが、最近は元気な受益者が減ってきたようです。(それにしては資金流出がほとんど見られません。みんな含み損に耐えながらホールドしているのかな。)

なお僕はNASDAQ100連動インデックスすら買っていないので、iFreeレバレッジNASDAQ100に手を出すことはありません。

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