国内株式指数と言えば日経平均かTOPIXが頭に浮かぶと思います。それらをベンチマークにしているローコストインデックスファンドがたくさんあります。
それらよりマイナーですが、JPX日経インデックス400という指数もあります。これをベンチマークにしているインデックスファンドは、日経平均やTOPIXよりは少ないです。スリムシリーズにはラインアップされていません。
JPX日経インデックス400をベンチマークにしている主なインデックスファンドのリターン実績を確認したところ、ニッセイJPX日経400は運用に問題があることが分かりました。
おことわり
ニッセイJPX日経400の運用に問題があるとの判断は、複数のインデックスファンドとの比較による「多数決」を根拠にしています。同じ指数をベンチマークにしているインデックスファンドが6本あり、そのうちの1本の基準価額の推移が他と違うなら、ベンチマークに忠実でないのはその1本だという論法です。これは相対的な判断なので間違っている可能性があることをご了承下さい。
JPX日経インデックス400
iFree JPX日経400の目論見書にはこうあります。
引用:目論見書
この指数ができたのは2014年です。
eMAXISシリーズには日経平均、TOPIX、JPX日経インデックス400の3種類が揃っています。次は一番遅く設定されたeMAXIS JPX日経400の設定直後を避けた2014年4月20日からの基準価額の推移です。
この比較期間だとリターンの高い順に、青の日経225、緑のTOPIX、赤のJPX日経400となりました。
比較対象
次の6本に登場して頂きます。
まずトータルコストが最安のiFree JPX日経400と他の5本を比較します。赤のラインがiFree JPX日経400です。青のラインはリターン差で、右肩上がりの角度が大きいほど、比較対象のコストが高い(リターンが低い)ことを意味します。
iFree JPX日経400 vs Funds-i JPX日経400
青のラインはほぼきれいな直線です。
iFree JPX日経400 vs eMAXIS JPX日経400
青のラインはほぼきれいな直線です。
iFree JPX日経400 vs SMT JPX日経インデックス400
青のラインはほぼきれいな直線です。
iFree JPX日経400 vs 三井住友JPX日経インデックス400
青のラインはほぼきれいな直線です。傾きが大きいのは三井住友JPX日経インデックス400のトータルコストが高いのと一致します。
iFree JPX日経400 vs ニッセイJPX日経400
お待たせしました。問題児の登場です。
青のラインは明らかにおかしいです。突然高くなっているのは、ニッセイJPX日経400が下方乖離を起こしたからだと思われます。
Funds-i JPX日経400 vs eMAXIS JPX日経400
ここからはiFree JPX日経400を外し、ニッセイJPX日経400の設定日直後を避けた2015年2月20日からの比較です。
青のラインがほぼフラットなのは、トータルコスト差が小さいことと一致します。
Funds-i JPX日経400 vs SMT JPX日経インデックス400
青のラインはほぼきれいな直線です。
eMAXIS JPX日経400 vs 三井住友JPX日経インデックス400
青のラインはほぼきれいな直線です。
Funds-i JPX日経400 vs ニッセイJPX日経400
トータルコストはFunds-i JPX日経400の方がニッセイJPX日経400より高いので、青のラインは右肩下がりで推移するのが期待値です。その傾向も見られますが、頻繁に跳ね上がっています。それだけ下方乖離を起こしています。これが下方乖離でないとするなら、理由を知りたいです。
信託報酬は同じでも
iFree JPX日経400とニッセイJPX日経400の信託報酬は(2016年11月18日以降は)税込み0.2106%で同じです。トータルコストはニッセイJPX日経400の方が0.029%ポイント高いです。ですが、ニッセイJPX日経400は下方乖離を起こしているので、リターンは劣化します。それはごまかしの効かない基準価額データに現れます。
次はiFree JPX日経400とニッセイJPX日経400のリターン比較です。
iFree JPX日経400の利益率は21.0%ですが、ニッセイJPX日経400の利益率は20.0%です。その差は1.0%ポイントもあり、それは主に下方乖離によるものです。つまり、ニッセイJPX日経400の受益者は下方乖離によって相応のリターンを失っているのが現実です。
ニッセイJPX日経400の運用報告書では
赤の矢印のところで起きた下方乖離を、ニッセイJPX日経400の運用報告書ではどのように説明しているか確認しました。
軽く0.5%ポイントを超えているので、無視するわけには行かないでしょう。
引用:運用報告書
ベンチマークをマイナス0.8%ポイント下回ったとありますが、理由は書かれていません。僕は受益者じゃないので怒りませんし、運用報告書に下方乖離を起こしたと書きたくない気持ちは良く分かります。
なお、ニッセイJPX日経400は分配金を出していません。
売れ行きは
次は設定来の総口数の推移です。
信託報酬が安いiFree JPX日経400とニッセイJPX日経400だけプロットします。
ニッセイJPX日経400の純資産総額は13億円ありますので、それなりの数の受益者がいるはずです。その多くは、運用の実情を認識していないと想像します。
ニッセイJPX日経400の運用に不安があることを考えると、iFree JPX日経400を選択するのが賢明です。
なお、ニッセイ外国株式は過去に下方乖離を起こしたことで知られています。
おまけ
iFree JPX日経400とのリターン比較で見られる、黄色の丸で囲った部分が気に入りません。
これは2018年12月下旬の急落時に起きたものですが、iFree JPX日経400で顕著です。次は比較対象をFunds-i JPX日経400に変えたものです。
落ち込みの程度が小さいです。
このようにインデックスファンドの運用には大変なことが多々あり、運用会社はどこも苦労しながらベンチマークに忠実な運用を目指しているのだと想像しています。