フィンテック関連企業に投資したいけど、個別株を選択する高いリスクは避けたいという人にとって、eMAXIS Neoフィンテックは手軽に投資できる、この上なく都合が良い商品です。一般的な資産クラスに投資するインデックスファンドと比べると、信託報酬は高く感じますが、相応のパフォーマンスが出るなら気にならない水準だと思います。
問題は、相応のパフォーマンスは約束されてはいないので、フィンテックの未来に賭けられるかどうかです。
更新情報
第三期運用報告書の内容を反映させています。また、参照しているデータを最新版に更新しています。
eMAXIS Neoフィンテック
2019年5月28日に税抜き信託報酬0.72%で設定されました。eMAXIS Neoシリーズ第三弾の3商品のうちの1本です。S&P Kensho Democratized Banking Indexに連動するインデックスファンドで、日本を含む世界各国のフィンテック関連企業に投資します。信託報酬はちょっと高めですが、現物株運用でノーロード、解約時信託財産留保額はゼロ、信託期間無期限と期待通りの組成です。
ベンチマークであるS&P Kensho Democratized Banking Indexは、つみたてNISAの指定インデックスではないので、eMAXIS NeoフィンテックはつみたてNISA適格ではありません。
S&P Kensho Democratized Banking Index
テーマ型ファンドの場合、投資対象をどう選択するかがキモになります。S&P Kensho Democratized Banking IndexはKensho社がAIを活用して作成しています。
引用:目論見書
現在65銘柄(eMAXIS Neoシリーズで最多)に投資しており、その約61%が米国企業です。"Modified equal weighted"であり、均等配分だと1銘柄1.5%程度になりますが、投資割合5.3%からのゆるやかな傾斜となっています。
また、こちらの資料によると、2021年6月に銘柄入れ替えを含み定期リバランスが実施され、S&P Kensho Democratized Banking Indexの17銘柄が追加され、6銘柄が除外されました。
次はeMAXIS Neoフィンテックの組み入れ上位10銘柄です。全体の約30%を占めます。
投資対象銘柄のS&P500種指数における順位と、NASDAQ100指数における順位も載せています。
eMAXIS Neoフィンテックの組み入れ銘柄数はeMAXIS Neoシリーズの中では突出して多いです。AIがどうしてそういう選択をしたのか、公式サイトで解説してもらえるとうれしいです。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。eMAXIS Neo遺伝子工学、eMAXIS Neoロボットと比較しています。
eMAXIS Neoフィンテックは隠れコストが(eMAXIS Neoシリーズの中でも)高いです。
次は隠れコストの明細です。保管費用が高いです。
eMAXIS Neoシリーズの保管費用は第三期決算期間で削減されているのですが、eMAXIS Neoフィンテックはそれでもまだ他の商品より高いです。相応の事情があるのでしょうね。
トータルコストは1.05%と高いですが、フィンテックという尖ったテーマに投資して、期待通りのパフォーマンスが得られるなら気にならない水準でしょう。
リターン比較
ベンチマークとの比較
こちらでS&P Kensho Democratized Banking Indexのデータがダウンロードできます。次はそのベンチマーク(トータルリターン)を円換算したものと、eMAXIS Neoフィンテックのリターン比較です。eMAXIS Neoフィンテックの設定直後を避けた2019年6月17日から2021年10月29日までです。
青のラインはベンチマークーeMAXIS Neoフィンテックです。期待通り右肩上がりの直線ですが、株価暴落時の様子は明らかにおかしいです。
次はベンチマークの運用コストを年率1.2%ポイント増量したものとの比較です。
株価暴落時のおかしな動きを除くと、青のラインはほぼフラットになりました。おそらく、eMAXIS Neoフィンテックは株価暴落時に運用上の問題を起こしたと思われます。でも株価暴落時だとこういうことはどんなファンドでも起こり得ます。この場合、1%ポイント近い下方乖離が起きたと思われるので、もちろん、好ましくはないです。
また直近は増量しすぎです。これは運用コストが削減されていることと符合します。
スリム米国株式(S&P500)との比較
テーマ型ファンドに投資するのですから、S&P500種指数には負けたくないところでしょう。次は2019年6月17日から2021年11月26日までの、スリム米国株式(S&P500)との比較です。
赤のラインがeMAXIS Neoフィンテックです。株価暴落前はS&P500に劣後していましたが、株価暴落後の回復はS&P500より速く、しばらくS&P500をアウトパフォームしていました。ところが2021年2月以降は頭打ちになり、S&P500と互角です。
イノベーション・インデックス・フィンテックとの比較
イノベーション・インデックス・フィンテックは、テーマ型インデックスファンドです。eMAXIS Neoフィンテックより7ヶ月早く設定されました。
赤のラインがeMAXIS Neoフィンテックです。株価暴落時の下落率はeMAXIS Neoフィンテックの方が大きかったのですが、その後の回復が速くしばらくイノベーション・インデックス・フィンテックをアウトパフォームしていました。ところが2021年2月以降は互角です。
eMAXIS Neoシリーズの中ではやや不人気
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は16.41億円です。なお、グラフからは初期投資の3億円を除外しています。
eMAXIS Neoシリーズは、テーマ型ファンドのジャンルでは売れている方ですが、eMAXIS Neoフィンテックはやや苦戦していました。それはパフォーマンスが凡庸だからだと思われます。
S&P500種指数などと比べてパフォーマンスが高いと資金流入が増え、頭打ちになると買われなくなる(もしくは売却される)のは、eMAXIS Neoシリーズ共通です。
次はイノベーション・インデックス・フィンテックもプロットしたものです。設定日の(運用側の初期投資を含んだ)純資産総額からスタートさせているので、左端が浮いています。
緑のラインのイノベーション・インデックス・フィンテックはもっと不人気です。
評価:フィンテック関連企業に投資するなら良い選択肢
フィンテックの成長に期待するなら、eMAXIS Neoフィンテックは良い選択肢になると思います。トータルコストは安くはありませんが、eMAXIS Neoフィンテックの組成は長期投資向きで好感が持てます。eMAXIS Neoシリーズの中ではやや不人気ですが、繰上償還を心配するほどではありません。
直接の競合商品になりそうなのがイノベーション・インデックス・フィンテックですが、こちらはもっと売れていませんが、2商品とも長期投資向きの組成です。長い目で見てあげたいです。