eMAXIS Neoシリーズの各商品は、かなり絞り込まれたテーマに特化しています。eMAXIS Neoウェアラブルはその名の通り「ウェアラブル」という狭い領域の成長に期待するファンドです。対象となる受益者を選びそうですが、低コストで良質な組成のファンドが提供されていることを高く評価します。
更新情報
第三期運用報告書の内容を反映させています。また、参照しているデータを最新版に更新しています。
eMAXIS Neoウェアラブル
2019年5月28日に税抜き信託報酬0.72%で設定されました。eMAXIS Neoシリーズ第三弾の3商品のうちの1本です。S&P Kensho Wearables Indexに連動するインデックスファンドで、日本を含む世界各国のウェアラブル関連企業に投資します。信託報酬はちょっと高めですが、現物株運用でノーロード、解約時信託財産留保額はゼロ、信託期間無期限と期待通りの組成です。
ベンチマークであるS&P Kensho Wearables Indexは、つみたてNISAの指定インデックスではないので、eMAXIS NeoウェアラブルはつみたてNISA適格ではありません。
S&P Kensho Wearables Index
テーマ型ファンドの場合、投資対象をどう選択するかがキモになります。S&P Kensho Wearables IndexはKensho社がAIを活用して作成しています。
引用:目論見書
現在14銘柄に投資しており、その約69%が米国企業です。"Modified equal weighted"であり、均等配分だと1銘柄7.1%程度になりますが、投資割合1位は12.3%と偏りがあるようです。
また、こちらの資料によると、2021年6月に銘柄入れ替えを含み定期リバランスが実施され、S&P Kensho Wearables Indexの1銘柄が追加され、2銘柄が除外されました。
次はeMAXIS Neoウェアラブルの組み入れ上位10銘柄です。全体の約79%を占めます。
出典:月次報告書
投資対象銘柄のS&P500種指数における順位と、NASDAQ100指数における順位も載せています。アップルが投資対象なのには賛否両論ありそうです。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。eMAXIS Neo遺伝子工学、eMAXIS Neoロボットと比較しています。
eMAXIS Neoウェアラブルの隠れコストは、eMAXIS Neoシリーズの中では安い方でしたが、第三期決算期間では他が削減された結果変わらなくなりました。
次は隠れコストの明細です。
隠れコストで支配的なのは、売買委託手数料と保管費用です。
トータルコストは0.98%と安くはありませんが、ウェアラブルというかなり絞り込まれたテーマに投資して、期待通りのパフォーマンスが得られるなら気にならない水準でしょう。なお、僕が探した範囲では、ウェアラブル関連企業への投資に特化したファンドは、eMAXIS Neoウェアラブル以外に見つかりませんでした。
リターン比較
ベンチマークとの比較
こちらでS&P Kensho Wearables Indexのデータがダウンロードできます。次はそのベンチマーク(トータルリターン)を円換算したものと、eMAXIS Neoウェアラブルのリターン比較です。eMAXIS Neoウェアラブルの設定直後を避けた2019年6月17日から2021年10月29日までです。
青のラインはベンチマークーeMAXIS Neoバーチャルリアリティです。期待通り右肩上がりの直線で推移していましたが、2021年2月以降の変動が極端に大きい時期は不自然なリターン差になっています。
次はベンチマークの運用コストを年率1.4%ポイント増量したものとの比較です。
青のラインは2021年2月以降を除いてフラットになりました。やはり2021年2月以降の変動が極端に大きい時期は、運用面で問題があったのかも知れません。
運用報告書から計算したトータルコストからすると、1%程度の増量でいいはずなのですが、それでは足りませんでした。運用報告書には表れていないコスト(あるいはリターンを劣化させる要因)があるのかも知れません。また、直近は増量しすぎになっており、これは運用コストがわずかながら削減されていることを示しています。
スリム米国株式(S&P500)との比較
テーマ型ファンドに投資するのですから、S&P500種指数には負けたくないところでしょう。次は2019年6月17日から2021年11月26日までの、スリム米国株式(S&P500)との比較です。
赤のラインがeMAXIS Neoウェアラブルです。株価暴落前からS&P500より高パフォーマンスでしたが、株価暴落後の伸びは圧倒的です。この比較期間の利益率は157%です。
でも2021年6月以降は互角です。青のラインの傾向がフラットなのはリターン差がないからです。
ベンチマークとVOOトータルリターンの比較
S&P Kensho Wearables Indexのデータは2017年6月27日から作成開始されました。せっかくですからS&P500種指数を代表するVOOトータルリターンと比較しました。2021年10月29日までです。
赤のラインのベンチマークはボラティリティ(変動率)が高いです。S&P500を大きくアウトパフォームしている状態から、同じ水準近くまで簡単に下げたこともありました。一方的に差が広がったのは、2020年になってからです。eMAXIS Neoウェアラブルに投資する人は、この変動率の高さを納得(覚悟)しないと買い持ちできないでしょうね。
コロナショックによる株価暴落後の伸びは凄まじかったですが、そのバブルはもう終わっている気がします。
資金流出が止まりません
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は20.49億円です。なお、グラフからは初期投資の3億円を除外しています。
eMAXIS Neoシリーズあるあるですが、パフォーマンスが高いと資金流入が増え、頭打ちになると潮が引くように売却されます。eMAXIS Neoウェアラブルはその傾向が顕著です。資金流出が止まりません。一時の熱狂は終わりましたね。
eMAXIS Neoウェアラブルは長期投資向きの商品だと思うのですが、長期保有を続けるのが難しい現実がここにあります。
評価:ウェアラブル関連企業に投資するなら良い選択肢
eMAXIS Neoウェアラブル以外に、ウェアラブル関連企業への投資に特化したファンドが見当たらないこと、トータルコストは安くはないもののeMAXIS Neoウェアラブルの組成は長期投資向きで好感が持てることから、ウェアラブルの成長に期待するなら良い選択肢だと思います。
残念ながら単に一時のパフォーマンスの高さに吊られて投資した人がそこそこいるようですが、できれば長く買い持ちできる投資家に買って欲しいものです。