仮想データの配当金の扱いに間違いがあったことが発覚したため、記事の内容を改めました。青のラインの形状、税引き後の評価額の差が間違っていました。大変申し訳ございません。結論は変わっていません。なお、間違っていた過去の記事は恥ずかしいので非公開としました。
次の記事で、楽天全米株式は配当金の再投資における有利さを、運用コストの高さが帳消しにしていることについて再確認しました。
シミュレーションで明らかになったのは、買付手数料無料化後のSBI証券で買うVTIは、楽天全米株式の運用コストの高さを再認識させてくれる、ということでした。
が、現実世界での投資では、楽天全米株式は毎月必ず5万円が投資されるのに対し、VTIは一株価格の倍数でしか買えないため端数が生じ、それが翌月に繰り越されるという「機会損失」が起きます。これまでさんざん行ってきた、インデックスファンド対ETFの購入シミュレーションでは、公平な比較となるように、次の買い方をしていました。
- 月額予算が5万円の場合、毎月初にそれをドルに替えて、それで買える株数だけETFを買います。手数料も引いて残った端数は、翌月に繰延しません。
- インデックスファンドは、上記株数だけETFを買うのにかかった費用分(手数料を含みます)だけ、毎月初に購入します。
現実世界では、こういう買い方はしません。そこで、次の買い方だとどうなるのか調べてみました。
- 楽天全米株式は、月額予算が5万円なら、毎月初に5万円ぴったり買います。普通の積立投資です。
- VTIは、月額予算が5万円なら、毎月初にそれをドルに替えて、VTIを買えるだけ買います。端数はドルのまま口座に残して、翌月に繰延べます。翌月は、前月の端数と新規資金の合計で、VTIを買えるだけ買います。端数は翌月に繰り延べます。
- VTIから配当金が得られたらドル口座に入れ、端数と合わせた結果VTIを買えるならすぐに買います。
この記事でも、数学的に生成した仮想データで比較します。
比較方法
次の条件で比較用データを生成します。
- VTIの期待リターンを年率6%とします。
- VTIの配当金実績から、米国での10%課税後の配当金の利率を年率1.72%とします。
- 1ドルは109円固定とします。
- 楽天全米株式の運用コスト(VTIの経費率を除きます)を0.20%とします。
こうして生成したデータで、楽天全米株式の(普通の)積立投資と、SBI証券でVTIを積立投資する現実的な比較を行います。為替手数料は1ドルあたり4銭、買付手数料はゼロとします。また、譲渡税の税率は20.315%です。
なお、積立投資の約定日はどちらも毎月初、VTIは配当金が出た日に再投資可能ならその日に約定したことにしています。
また、VTIの税引き後評価額を円で手にするには、売付け手数料と為替手数料が必要です。これは売り方で大きく変わるため、いつものように、記事中では無視しています。
比較期間2年間
楽天全米株式の運用コストの重さを痛感する結果になりました。
青のラインは税引き後評価額の差です。税引き後評価額の求め方はこうです。
- 楽天全米株式は、含み益に譲渡税が課税された残りです。
- VTIは、含み益(=保有株数✕株価ー元本)に譲渡税を課税した残り+ドルで口座に残っている端数です。
青のラインが左端で大きく暴れるのは、(計算式と)分母が小さいためで、正常です。安定した後は、最初はプラスですが、傾向は右肩下がりです。
青のラインにある氷柱(つらら)のようなものは、配当金が出たタイミングで再投資できたことで生じたものです。想定通りです。
ここで見ているのは、次の2つの差です。この記事でフォーカスしている機会損失です。(配当金の再投資効率も含まれます。)
- 楽天全米株式は毎月初5万円をきっちりリスク資産に投じることで、その全額がキャピタルゲインの恩恵を受けます。
- VTIは取引価格の整数倍でしか買えないので、端数が翌月に繰り延べされます。その端数はキャピタルゲインの恩恵を受けません。これが機会損失です。
僕は、この機会損失はもっと大きいと思っていたのですが、たった1年程度で逆転されてしまいました。
比較期間10年間
10年間で0.45%の差が生まれました。
運用コストを0.10%に削減
次は楽天全米株式の運用コストを0.10%に削減した結果です。
11年後ぐらいから互角になり、その後VTIに負けなくなります。長期間の保有による課税の繰延効果によるものだと思われます。
運用コストを0.05%に削減
次は楽天全米株式の運用コストを0.05%に削減した結果です。現状からは夢物語ですね。
VTIに負けなくなりました。
月額予算が1万円の場合
月額予算1万円でVTIを買うのは条件としておかしい、とは思いますが、機会損失対運用コストの様子を見たかったのです。
予算1万円だとVTIは2ヶ月に1回程度しか買えません。そのため、機会損失の度合いが大きくなるわけですが、それでも、運用コストの方が重いです。青のラインの傾きが緩やかになりましたが、右肩下がりであることは変わりません。
結論:楽天全米株式の運用コストはVTIの機会損失より重い
楽天全米株式の、保有資産全体にかかる運用コストの重さを再認識できました。VTIの買付には機会損失があるものの、楽天全米株式の運用コストはそれを相殺して余りあるほど重いということです。
だからと言って、楽天全米株式から、SBI証券で購入時手数料が無料化されたVTIを買うことに変更する受益者が続出するとは思えません。ほとんどの一般人は、楽天全米株式の利便性だったり、つみたてNISAで買えることをメリットと捉えるのではないでしょうか。さらに余裕資金があるなら、VTIを自分で買う煩わしさ、売却時のコストも考慮した上で選択すれば良いと思います。
月額予算が10万円、15万円ならどうなるか
訂正前の記事のコメント欄で要望を頂きました。月額予算が10万円、15万円ならどうなるか?です。やってみました。
次は月額予算が10万円の場合です。
次は月額予算が15万円の場合です。
次は月額予算が20万円の場合です。
差はわずかですが、月額予算が増えると、VTIを買う時に生じる機会損失の程度が小さくなるので、10年後の税引き後利益率の差が広がります。
入金力がある人ほど、VTIの方がより有利になる、ということです。