あなたもどこかのブログでこんな記述を見たことがあるかも知れません。「S&P500に毎月5万円を40年間積み立てるだけで資産を1億円にできます。」本当だったらめちゃくちゃ凄いと思います。人生100年時代と言われ、年金支給開始年齢が現在の65歳から70歳に繰り延べされそうな風潮のある今、これから社会人になる若者にとって大きな福音になります。僕はとてもうらやましいです。
現在22歳の人が62歳になる頃には、年金支給開始年齢は75歳になっているかも知れません。きっと、62歳でリタイアするのは「アーリーリタイア」だと言われてもおかしくないでしょう。62歳で金融資産1億円を手にできる人とそうでない人の差は絶望的です。
でもそんなことが本当に可能でしょうか。一時期一世を風靡した(いえ、世間をおおいに騒がせた)「いつかはゆかし」の類ではないのでしょうか。
数学的には
S&P500種指数のリターンを年率6から7%と考えるのは無理のない想定です。そこで、期待リターンを年率6.5%として毎月5万円を40年間積み立て続けたら数学的には次のようになります。
元本2,400万円が1.14億円に増えます。複利効果を示すグラフのカーブが凄いです。これは非課税の場合なので、仮に40年後の譲渡税率が30%で各種非課税制度を活用した結果税率を20%に抑えられたとして9,100万円程度になります。
よって、数学的には十分実現可能です。
S&P500の実績
次はS&P500の1979年からの40年間のリターンの推移です。ドルのままで配当金は含まれていません。
年率61.7%ですが、これは40年間の騰落率を40で割った数値です。年利8.5%で40年だと複利効果でこれぐらいになります。よって、S&P500は配当金を含まないでも過去40年、年率8.5%程度の成長をしたことになります。凄いです。
でも未来は過去と同じではなく、S&P500のリターンを上昇させた技術革新、人口増加、経済発展も頭打ちになるかも知れませんが、未来のデータは存在しないので過去40年がこれからも繰り返されるとします。
もし過去40年間毎月積み立てていたら
ドル円換算用のTTMデータが1990年以降しかないので、ドルのままでシミュレーションします。単位は円ですが、米国民の話だとしてください。
数学的計算と同じく元本は2,400万円です。税引前評価額は1.49億円です。税率を20%に抑えられたとして1.19億円を手にできます。
このことから、S&P500が今後40年も過去40年と同様の成長を達成できるなら、iFree S&P500またはスリムS&P500に毎月5万円積み立てるのを40年間継続するだけで1億円近い金融資産を築くことができると思われます。
そして、それができる人なら何度か迎えるであろう暴落時に効果的に追加投資することであと数千万円を上乗せできるでしょう。
スリム先進国株式だと
スリム先進国株式と同じMSCIコクサイをベンチマークにしたインデックスファンドで(僕が知っているもので)最も古くから存在しているステートストリート外国株式の過去データを見ます。
次はステートストリート外国株式の過去20年間の基準価額の推移です。年率4.0%です。
これを見てS&P500とのあまりの違いに悲観してはいけません。次は同じ期間のS&P500のリターンの推移です。
年率5.1%です。過去20年だとS&P500もこんなものです。
このことから、これからスリム先進国株式に40年間、毎月5万円を積み立ててもそれだけではS&P500に投資したようにはならないと思われます。
スリム先進国株式の期待リターンが5%なら
まさしく取らぬ狸の皮算用です。
税引前で7,600万円です。税率を20%に抑えられたとしても6,080万円にしかなりません。いや、ここまでの計算で感覚が麻痺していますが、62歳で6,000万円の金融資産を築けるのです。毎月5万円積み立てるだけで。他にもっと確実で有利な資産形成方法があるでしょうか。
結論
S&P500への投資は、世界分散投資を嗜好する人から見るとハイリスクですが、過去40年間の目覚ましい成長が再現されるなら、40年で資産1億円は可能でしょう。それに、毎月5万円の積み立てを40年間継続できるだけの金融リテラシーがあるなら、40年で1億円は楽勝だと思います。
米国株式への集中を嫌ってスリム先進国株式を選択した場合、毎月5万円の積み立てを40年間続けただけでは6,000万円程度にしかならないかも知れません。でも同様に、それができる人なら40年で1億円は十分達成可能だと思います。
最大の問題は、22歳から毎月5万円を40年間積み立てできるか?でしょう。ストレートで大学を卒業して22歳で社会人になったとして初年度から年間60万円をインデックスファンドに投資するのは無理でしょう。だからと言って27歳から始めようとしないで、毎月5,000円でもいいから始めるべきです。つまるところ、資産形成できるか否かは金融リテラシーで決まると言っていいでしょう。もちろん、勤勉に働き、浪費をつつしみ、無理のない範囲でしっかり貯蓄・投資を続ける努力が欠かせません。それができた人だけが、40年後に大きな果実を手にして一足先にリタイアできるのです。
それができなかった人との差は、残酷なまでに大きいと、数年後に社会人になる子供にはいずれコンコンと話すつもりです。