巷にあふれるポイントサービスはピンキリです。お得に見えて実はそうでないってのも「あるある」です。
主要ネット証券5社は、投資信託の保有額に応じてポイントを付与するサービスを実施中ですが、これもピンキリです。そして投資対象商品によって、一番お得なところが変わります。(楽天証券は撤退することになりました。)
各社のポイントサービスを徹底比較、わかりやすく解説します。
更新情報
マネックス証券でポイント投資ができるようになりました。
前説
比較しているのは投資信託の保有額に応じてポイントが付与されるサービスです。各社共通の制約事項があります。
- 国内の投資信託のみが対象です。ETFは国内籍、海外籍ともに対象外です。
- 特定口座、NISA口座、ジュニアNISA口座、つみたてNISA口座は対象ですが、iDeCo口座は対象外です。
この記事に登場する信託報酬はすべて税抜きです。
SBI証券
「投信マイレージサービス」と呼ばれます。歴史のあるサービスですが、信託報酬の超ローコスト化の進行と、ポイント制度の競争激化によりその内容を変更して現在に至ります。
ポイント付与率
投資信託の銘柄によってポイント付与率が変わります。
引用:SBI証券
指定銘柄一覧はこちらにあります。最安でも信託報酬が0.40%のeMAXISシリーズは「通常銘柄」で、付与率0.10%です。たとえば信託報酬0.45%のiFree NEXT NASDAQ100の付与率は0.10%です。
2022年2月からはこちらになります。以下はそれ以前のものです。
2021年4月1日より、26商品のポイント付与率が増量されました。次は対象の26商品のポイント付与率の変化を分かりやすくした表です。
スリムシリーズ13商品はこうなります。
セルを赤くしたところが増量されます(増量後です)。スリムシリーズであっても、信託報酬が0.140%以上のものは(SBI証券の取り分が多かったものは)、前から0.05%でした。
こちらのポイント付与率が変更された商品の一覧表によると、95商品のポイント付与率が0.1%から0.05%に半減されています。
ポイントの原資は信託報酬のうちの販売会社の取り分ですから、取り分が少なければポイント付与率が下がるのは、ある意味当然です。そこを、26商品に限るとは言え、改善する取り組みは素晴らしいです。
2022年2月から
2022年2月(3月付与分)から、ポイント付与率が改定されました。ポイント付与率はSBI証券が受け取る手数料の税抜き分を上限とします。
次はSBI証券の説明です。
この度の変更は、ポイント付与率の上限は販売会社が受け取る手数料(信託報酬)等の「税抜き」分までとすることが適切と判断したことによるものであり、現在、販売会社が受け取る『税込み』の信託報酬率と同率程度のポイント付与率としている一部の銘柄について、『税抜き』の信託報酬率と同率程度のポイント付与率まで引き下げを行います。
なお、本変更は投信マイレージサービスのプログラム自体を大きく変更するものではなく、また、現時点で他の銘柄も含め、更なるポイント付与率の引き下げやポイント付与日の変更等は予定しておりません。引用:SBI証券
主な超ローコスト商品のポイント付与率一覧です。上記改定の対象となった商品を緑色にしています。
1,000万円以上保有している場合
通常銘柄でないものも含めて、1,000万円以上保有している場合、通常銘柄の付与率が2倍の0.20%になります。たとえばスリムバランス(8資産均等型)を900万円、iFree NEXT NASDAQ100を100万円保有している場合、スリムバランス(8資産均等型)の付与率は0.05%ですが、iFree NEXT NASDAQ100の付与率は0.20%に上がります。
ポイント計算方法
計算式はこうです。
- 対象銘柄の月間平均保有金額×ポイント付与率×対象月の実日数÷365
- 1円未満の端数切捨て
良心的です。
SBIプレミアムチョイス銘柄
2022年2月付与分から、次の銘柄ポイント付与率は0.15%(マイレージ対象銘柄の月間平均保有金額が1,000万円以上の場合は0.25%)になりました。
- 野村未来トレンド発見ファンドBコース(為替ヘッジなし)(愛称:先見の明)
- 農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね
- モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式OP為替ヘッジなし
- ひふみプラス
- フィデリティ・米国株式ファンド Bコース資産成長型・為替ヘッジなし
- iTrust世界株式 (愛称:世界代表~勝ち組企業厳選~)
- スパークス・新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)
- コモンズ30ファンド
- キャピタル世界株式ファンド
- アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース為替ヘッジなし
- One国内株オープン(愛称:自由演技)
当然ですが高コスト商品ばかりです。でも対象商品の受益者にとってはうれしいですね。
ポイントの価値
投資信託の保有で付与されるポイントは次の3種類から選択できます。
- Tポイント、他社でも使えます。
- Pontaポイント(2021年11月から)、他社でも使えます。
- dポイント(2022年2月から)、他社でも使えます。
ポイントサービスの特徴です。
- 付与率はどのポイントを選択しても同じです。
- TポイントとPontaポイントは、投資信託の購入に1ポイント1円から利用できます。dポイントは現在は対応していません。
- 対象のポイントサービスは、設定画面からいつでも変更可能です。
楽天証券
まず現時点のハッピープログラムについて説明します。それはいいやって方はここまで飛ばして下さい。
「ハッピープログラム」と呼ばれます。楽天銀行と楽天証券の口座連携サービス「マネーブリッジ」を利用し、「楽天銀行ハッピープログラム」に登録するとこのサービスを受けられます。
ポイント付与率
従来は、商品の信託報酬に関わらず、保有資産10万円ごとに毎月4ポイントが付与されていました。10万円未満の端数を無視すると、年率0.048%でした。信託報酬のうち、楽天証券の取り分からポイント付与率を引くと、マイナスになるものもたくさんありました。そしてついに、2021年8月1日より、楽天証券の取り分に応じてポイント付与率が変わる仕組みに変更されます。
引用:楽天証券
これまでは4ポイント固定でした。高コストファンドは増えますが、超ローコストファンド7銘柄は3ポイントに削減されます。対象外となった3銘柄は雪だるまシリーズです。なお、楽天証券ではSBI・Vシリーズを扱っていませんが、扱う際にはポイント付与の対象外となります。
次は主な超ローコストインデックスファンドのポイント付与率です。付与率が下がった7本と、対象外になった3本のセルをオレンジにしています。
ポイント計算方法
年率0.048%や0.036%というのは便宜上の表現です。毎月10万円ごとに4ポイント付与されたら0.048%としています。10万円未満の端数が切り捨てられるのはちょっと残念ですね。
ポイントの価値
付与されるのは通常の楽天スーパーポイントです。使い勝手はこの上なく良いと思います。そして投資信託の購入に1ポイント1円から利用できるのがいいですね。
ポイント付与率変更の印象
どんな超ローコスト投信であっても、一律0.048%のポイントを付与するという大盤振る舞いは、いずれ終わりが来ると思っていました。そのため「ついに来たか」というのが感想です。
- 下がったのは全部で10本と、影響を抑えた印象です。SBI証券を意識したのは間違いないでしょう。
- 上がったのは明らかな高コスト商品だけです。たとえば人気のiFree NEXT NASDAQ100はSBI証券だと0.1%ですが、楽天証券は0.048%のままです。
終了したハッピープログラム
2022年4月より、投資信託の保有資産額に応じたポイント付与から、保有資産額がある金額を初めて超えたときにポイントが付与される制度に変更されます。(詳細はこちらの公式案内を参照して下さい。)
引用:楽天銀行
つまり、終了です。楽天証券はこのサービスから撤退したのに等しいです。
マネックス証券
「投信保有ポイント」と呼ばれます。
ポイント付与率
対象銘柄を3種類に分類します。
- 年率0.08%のもの
- 年率0.03%のもの
- 対象外のもの
一覧表がこちらにあります。そのまま解釈するとこうなります。
- 雪だるまシリーズ、SBI・V・S&P500は対象外です。
- スリムシリーズは0.03%です。
- eMAXISシリーズも0.03%です。
- 信託報酬が0.72%のeMAXIS NEOシリーズも0.03%です。
- ところが信託報酬が0.45%のiFree NEXT NASDAQ100は0.08%です。
その一覧表の精度に疑問があり、マネックス証券に問い合わせましたが、一覧表の通りとの回答を頂きました。また、iFree NEXT NASDAQ100は0.08%で間違いないそうです。
ポイント計算方法
計算式はこうです。
- 対象銘柄の月間平均保有金額×ポイント付与率÷12
- 1円未満の端数切上げ
良心的です。
ポイントの価値
付与されるのはマネックスポイントですが、有効期限があり、ポイントを獲得した日の翌々年度末(3月末日)までです。印象悪いですね。
使いみちは3種類です。
- 株式売買手数料に充当。
- 仮想通貨と交換。
- 他のポイントと交換。
- 投資信託の購入。(2022年10月20日から)
投資信託の購入に1ポイント1円から利用できます。
次は交換できる他のポイントサービス一覧です。
引用:マネックス証券
TポイントかPontaポイントに交換してSBI証券で投資信託を買うことはできます。(SBI証券は他から交換したTポイントまたはPontaポイントで投資信託が買えます。楽天証券だと、交換したポイントでは買えません。)またauカブコム証券はPontaポイントで投資信託を買うことができます。
マネックス証券はポイント投資への対応が遅れていましたが、2022年10月20日から可能になりました。
松井証券
「投信毎月ポイント・現金還元サービス」と呼ばれます。2022年1月4日にリニューアルされましたが、他社のサービスより複雑です。また、松井証券ポイントはとても残念な設計で、それはリニューアル後も変わっていません。
なお、このリニューアルは楽天証券がハッピープログラムを事実上終了させると発表する前から案内されていたものです。
現金還元率
従来は現金を還元するのが基本でした。新サービスは現金またはポイントが還元されます。現金の還元率は信託報酬に占める販売会社の取り分ー0.3%です。普通に考えると信託報酬が0.60%未満のものはほぼ対象外です。
もちろんスリムシリーズは全滅です。iFree NEXT NASDAQ100も対象外です。信託報酬が0.90%のiFreeレバレッジNASDAQ100の還元率は0.135%です。
こちらで商品名を入力して還元率を確認することができます。(スクロールすると次の画面が出てきます。)
このWebサービスは素晴らしいです。マネックス証券にも欲しいです。
現金の還元率はリニューアル後も変わっていません。変わったのは次の2点です。
- ポイントでの還元を選択できます。(条件があります。)
- ポイントでの還元率は現金での還元率の10%増しです。
還元額計算方法
現金での還元率の計算式はこうです。
- 対象銘柄の月間平均保有金額×(販売会社の取り分ー0.3%)÷12
- 1円未満の端数切り捨て
高コストファンドほど還元額が高くなります。ローコストファンドはまず間違いなく対象外です。事情があって高コストファンドを保有している場合に考えるのがいいですね。
ポイントでの還元率は現金の10%増しです。
ポイントでの還元が基本ですが
リニューアル後はポイントでの還元が基本となりますが、現金での還元も選択可能です。ポイント還元に戻すこともできます。
2022年1月4日のサービス開始以降、還元方法の基本設定はポイントでの受け取りとなります。初回の還元日は2022年2月15日です。現金での受け取りをご希望の場合、下記、還元方法変更ボタンからお申し込みください。毎月月末までに選択いただいた還元方法に基づき、翌月にポイントまたは現金を還元します。なお、一度お申し込みいただければ、その後お客様から再度お申し込みがない限り、還元方法が変更されることはありません。
引用:松井証券
が、投資信託を他社から移管した分については、現金での還元のみとなります。この制限は設けて欲しくなかったですね。
使えない松井証券ポイント
リニューアル前は、基本は現金での還元で、松井証券ポイントの付与に変更することもできました。リニューアル後はポイントでの還元率を10%増し、ポイントを主力に置きたい意図が見えます。
が、松井証券ポイントはあり得ないほど使いづらいです。
使いみちは4種類です。
- 投資信託を積み立てる。
- カタログ商品と交換。
- 100ポイント以上1ポイント単位で、dポイントと等価交換。
- 1ポイント1円として、1,000円単位で1,000円~10,000円のAmazonギフト券と交換。
積み立てられる投資信託は次のどれかです。
- ひふみプラス
- スリム先進国株式
- スリムバランス(8資産均等型)
不自由すぎます。また、ポイントはスポット購入には使えません。ため息出ますね。
さらに ポイントには有効期限があり、ポイント付与日の翌々年の3月末日です。
auカブコム証券
以前2つのプログラムがありましたが、現在は「auカブコムの資産形成プログラム」に一本化されています。
毎月ポイント終了
予想通り毎月ポイントは終了しました。
投資信託 毎月ポイントについて2020年12月21日(月)のポイント付与をもちまして終了させていただきます。また、ポイントの現金への交換期限は、2021年1月20日(水)AM10:00 迄とさせていただきます。
今まで長い間ご愛顧いただき誠にありがとうございました。引用:auカブコム証券
auカブコムの資産形成プログラム
投資信託の保有残高に応じて、Pontaポイントが付与されます。1円で1Pontaポイントです。
ポイント付与率は保有残高で変わります。
- 2.4万円~100万円未満:年率0.05%
- 100万円以上~3,000万円未満:年率0.12%
- 3,000万円以上:年率0.24%
100万円以上だと年率0.12%なので、楽天証券の年率0.048%より圧倒的に有利ですね。
そして、以前は計算方法がケチくさかったのですが、いつの間にか改訂されて普通になっていました。
次は改定前です。
対象投資信託の前月(営業日)の月間平均保有額×ポイント加算条件記載の年率÷365日×保有日数(営業日)
年率0.12%と言いながら、前月の営業日の日数で計算していました。年間の営業日数は約242なので、年間では0.12%×242÷365=0.0796%にまで下がってしまいます。(もし銀行の定期預金の利息計算がこんなのだったら非難轟々ですよね。)
次は改定後です。普通の計算方法になりました。
月間平均保有額(投資信託)×加算年率÷12(ヶ月)
毎月ポイント(2020年12月21日のポイント付与で終了)
auカブコム証券はもうひとつポイントサービスを実施しています。毎月ポイントです。
auIDを登録すると自動的に資産形成プログラムの対象となり、auIDを登録していない場合のみ、毎月ポイントの対象となるようです。
ポイント付与ルールはこうです。
- 投資信託の保有残高100万円ごとに、毎月1ポイント付与。
- 投資信託の保有残高が3,000万円以上なら、100万円ごとに毎月2ポイント付与。
年率換算すると100万円ごとに0.12%、保有残高が3,000万円以上なら100万円ごとに0.24%です。
ポイントは100ポイントを10,000円に交換できます。
ポイント付与率0.12%だけ見ると良さそうですが、次の制約が非効率です。
- 100万円未満の端数が切り捨てられる。
- 100ポイント貯めないと換金できない。
- さらにポイントは付与されてから3年しか有効でない。
保有残高が300万円の場合、毎月3ポイント付与されますので、100ポイント貯めるのに2年10ヶ月かかります。
ローコスト投信のポイント付与率は0.005%
auカブコム証券の2つのポイントサービスは、信託報酬に占める販売会社の取り分が(税込み信託報酬ではないです)税込み0.24%未満のものは対象外でしたが、2021年8月1日から0.005%付与されるようになりました。SBI証券や楽天証券より一桁少ないです。
Webサイトの表記内容も変わっていて、単に通常銘柄と指定銘柄に分類しただけになりました。指定銘柄のポイント付与率は0.005%です。スリムシリーズはすべて指定銘柄です。コスト意識のある受益者が選択する商品の多くは、指定銘柄だと思っていいです。
以前はiFree NEXT NASDAQ100も対象外でしたが、2021年8月1日からは通常銘柄に昇格したようです。通常銘柄と指定銘柄を分ける判断基準を公表して欲しいですね。
ポイントの価値
auカブコムの資産形成プログラムで付与されるのはPontaポイントです。日常生活での使い勝手は人によります。
2020年9月26日から、投資信託の購入に1ポイント1円から利用できる「ポイント投資」に対応しました。素晴らしいです。楽天証券、SBI証券に追い付いたわけです。
結論:超ローコスト商品ならSBI証券一択
超ローコスト商品ならSBI証券一択です。 高コスト商品は証券会社によって有利不利が変わるので、個別に調べないと分かりません。
- 楽天証券のハッピープログラムは2022年3月で事実上終了です。
- マネックス証券よりSBI証券の方が付与率が高いです。
- 松井証券は高コスト商品に付与率が高いものがありますが、超ローコスト商品は全滅です。
- auカブコム証券は高コスト商品に付与率が高いものがありますが、超ローコスト商品の付与率が0.005%とSBI証券より一桁少ないです。
主な商品の付与率一覧です。SBI証券は2022年2月以降のものです。
- auカブコム証券での付与率は100万円以上3,000万円未満の場合です。
- 松井証券はポイントでの還元なら10%増しです。
楽天証券は耐えられませんでした
楽天証券はどんなにローコストな商品であっても、ポイント付与率は年率0.048%でしたが、2021年8月から一部商品のポイント付与率を下げました。さらに2022年3月で時事上の終了となりました。
次は口座シェア比較です。
おそらく楽天モバイルの巨額赤字が重いのでしょう、楽天証券はSBI証券との競争に不利になるのを分かった上で大盤振る舞いをやめる決断をしました。SBI証券はいつまで現在のサービスを継続できるでしょうか。