VTやVTIなど商品が限定されてはいるものの、米国籍ETFの買付手数料が無料化されたことで、インデックスファンド vs 海外ETFの比較条件が変わってきました。これまで圧倒的に不利だった、ETFの買付手数料の無料化のメリットは大きく、投資対象の選択肢が広がったことは大歓迎です。
このブログではインデックスファンドと海外ETFのどちらが有利なのかについて、いろいろなシミュレーションを行ってきました。その中で避けていたことがひとつあります。外国税額控除の扱いです。これは、面倒な手続きをすると、外国で課税された分の一部を取り戻せる制度ですが、どれだけ取り戻せるかは各家庭ごとに異なるため「一般的な数値」が存在しません。そのためシミュレーションの条件には適さないと考えました。
が、読者の方から要望を頂きました。
外国税控除をせめて5%返ってくる場合でシュミレーションをのせていただくことはできないでしょうか?
いくらなんでも0パーでの計算ではインデックスとETFの比較は不公平が生まれていると思うんですよね。
所得税がある方なら、外国税控除の計算式上は日本で課税所得から外国での利益分は完全控除になっていますので5%程度(根拠はありませんが3%、5%、8%の場合などで計算していただけると確定申告する方ほぼ全員の参考になるのではと思います。)で計算していただけたらと思います。私自身は計算上では5%以上返ってくるみたいでした!また、現在は10年までの趣味レーションしかないようなので、30年単位でのシュミレーションでお願いしたいです。
比較方法
楽天全米株式と、SBI証券で買付手数料でVTIを買う場合の、現実的なシミュレーションを元にします。外国税額控除を除くと、次の記事の内容と同じです。
外国税額控除
この記事で扱うのは2019年までのものです。2020年から制度に変更がありますが、VTIを保有している場合の配当金への課税の扱いが理解できていないので、それについては無視します。
シミュレーション条件
次の条件でシミュレーションします。
- 毎月の投資可能予算は5万円です。
- 楽天全米株式は、毎月初に5万円ぴったり買います。普通の積立投資です。
- VTIは、毎月初に5万円をドルに替えて、VTIを買えるだけ買います。端数はドルのまま口座に残して、翌月に繰延べます。翌月は、前月の端数と新規資金の合計で、VTIを買えるだけ買います。端数は翌月に繰り延べます。
- VTIから配当金が得られたらドル口座に入れ、端数と合わせた結果VTIを買えるならすぐに買います。
- 為替手数料は1ドルあたり4銭、買付手数料はゼロとします。また、譲渡税の税率は20.315%です。
- 投資開始後12ヶ月毎に、過去4回の配当金への外国課税分の一部を、外国税額控除で取り戻せたとします。取り戻せた額をドル転してVTIの購入資金にします。つまり、可能な限り再投資します。
- 外国税額控除で取り戻せる割合を、3%、5%、8%とします。
- 比較期間は30年とします。
なお、VTIの税引き後評価額を円で手にするには、売付け手数料と為替手数料が必要です。これは売り方で大きく変わるため、いつものように、記事中では無視しています。
毎月5万円の積み立てを30年
毎月5万円の積み立てを30年継続すると、元本は1,800万円になります。老後2,000万円問題が絶望的だと騒ぐ人には実現不可能に思える「難行」でしょう。でもこれは決して不可能な話ではありません。何も20代からやらないと間に合わないわけではなく、既婚者なら夫婦で定年に間に合うようにやればいいのですから。
次はその難行がもたらしてくれる果実です。
楽天全米株式の税引前利益率は267%です。元本1,800万円は、税引き後で5,600万円を超えました。そしてVTIは、楽天全米株式より税引き後で14.9万円有利でした。
青のラインは楽天全米株式ーVTIです。プラス圏から始まりますが、1年後にはマイナス圏に入ります。課税の繰延効果により20年後ぐらいから上昇に転じますが、比較期間30年ではVTIに勝てません。
配当金への現地課税
外国税額控除で取り戻す原資は、VTIの配当金に米国で課税された10%の税額です。次はその金額の推移です。
このシミュレーションではこのうち指定した%を毎年取り戻して再投資します。
3%取り戻せた場合
外国税額控除を考慮しなくても、楽天全米株式よりVTIの方が有利なのですから、当然その差が広がります。
VTIは、楽天全米株式より税引き後で67.0万円有利でした。
5%取り戻せた場合
右軸のスケールを変えています。
VTIは、楽天全米株式より税引き後で102.6万円有利でした。
8%取り戻せた場合
右軸のスケールを変えています。
VTIは、楽天全米株式より税引き後で155.8万円有利でした。
楽天グループの大盤振る舞いのサービスを利用した場合
外国税額控除を受けるための努力に比べたら、楽天グループの大盤振る舞いのサービスで得られるポイントを再投資することなど屁でもありません。
以下、外国税額控除で5%取り戻せた場合のシミュレーションです。
楽天カード決済で付与されるポイントのみ再投資
次は楽天カード決済で付与されるポイントだけを再投資した場合です。
12年後ぐらいからVTIに負け始めます。
年率0.048%のポイントのみ再投資
次は保有資産額に応じて付与されるポイントのみ再投資した場合です。
VTIは、楽天全米株式より税引き後で45.7万円有利でした。
2つの合せ技
次は楽天カード決済で付与されるポイントと、保有資産額に応じて付与されるポイントの両方を再投資した場合です。
VTIに負けなくなりました。
次は8%取り戻せた場合です。
12年後ぐらいからVTIに負け始めます。
結論:外国税額控除で取り戻した税金のVTIへの再投資効果あります
VTIの配当金への現地課税分を取り戻して再投資した場合の効果について確認しました。条件が多岐に渡りましたが、みなさんにとってどうするのが最も有利かつ、長期間継続できるか、という視点で検討されるといいと思います。