株式投資で利益を得る原則は「安く買って高く売る」です。これをインデックス投資で言い換えると「平均取得価額が下がる買い方をする」となります。これが真理であるにも関わらず、普通の教科書には書かれていないためか、批判的に見られることがあるようです。
インデックス投資の目的が資産形成であるならば、より利益を得られる方がいいわけです。もちろん高いリターンを期待するためには相応の高いリスクを負う必要がありますが、暴落時の追加投資はその話とは質が異なります。
僕は積立投資教の信者ですが、同時に暴落時(基準価額が大きく下落した時)に追加投資するのが大好きです。それは次の2つの理由によります。
- 余裕資金があっても一括投資は怖くてできない。
- 基準価額が下がってからの追加投資は、平均取得価額を下げるのに効果的である。
さらにもうひとつ、保証はないものの確率的には数年以内に暴落を迎えられる可能性が高いからです。
永遠に続く強気相場はない
リーマンショック後の米国株式は(チャイナ・ショックを除くと)10年間強気相場を維持してきました。強気相場の継続年数に決まった上限はないので、あと3から5年続くかも知れませんが、控え目な人は1年以内には景気後退(リセッション)入りしてもおかしくないと思っているでしょう。いつかは分かりませんが、「永遠に続く強気相場はない」と言われるので、いずれ弱気相場に変わるはずです。
強気相場がいつ終わるのかは予見できませんが、終わったことは認識できます。株価がそれなりに下落するからです。強気相場が終わったと言われるなら、その下落率は20%を超えているでしょう。(明確な定義はないようです。)当然、基準価額も下落します。
積立投資は万能ではない
インデックス投資歴が10年未満の人で、含み益の利率が異様に高い場合は、間違いなく普通に積立投資によって得られたものではありません。
たとえば、たわら先進国株式の含み益が40%を超えている人がいたとします。次はたわら先進国株式が設定された翌月から2019年7月末まで、毎月初5万円を積立投資したシミュレーション結果です。
利益率は19.53%です。次はこの期間の基準価額の推移です。
青の丸で囲ったところはチャイナ・ショックによる下落ですが、ここでたわら先進国株式への投資のほとんどを行わないと、利益率は40%を超えられません。数学的に不可能なのです。
一括投資であれ、数ヶ月に分散した投資であれ、チャイナ・ショックによる下落中に投資の大半を実施することにより、平均取得価額をそのあたりにできます。投資信託の含み益(の利率)は現在の基準価額と平均取得価額の比率だけで決まります。
積立投資は誰にでも推奨できる堅実な方法ですが(積立投資教の信者の考え)、リターンを追求する上では最良の方法ではありません。投資可能な余裕資金がある場合は、積立投資のペースを早める方が有利になる場合があります。それが、暴落時の追加投資です。でも、この方法もうまく行く保証はありません。
2014年以降のMSCIコクサイ
次はeMAXIS先進国株式の2014年からの基準価額の推移です。
次は下落率をプロットしたものです。
チャイナ・ショックで最高値からほぼ20%下落しました。この、基準価額が下落した時期に追加投資できるかどうかで投資成績が大きく変わります。
次は毎月初5万円積み立て投資を続けた場合です。
利益率は24.75%です。これでも十分満足な人も少なくないでしょう。でも、暴落時に追加投資をすることで利益率を大きくできます。
次は最高値から10%以上下落している時に毎営業日5万円追加投資した場合です。追加投資予算は1,000万円です。
利益率は37.01%に上がりました。
相場を読む必要はありません
これは今夜の基準価額が最高値から10%以上下落していたら、翌朝追加投資をするというものです。約定するのに2営業日かかるので、基準価額はより下がっているかも知れませんし、上がっているかも知れません。それは読めないので、読みません。約定する基準価額は考えませんし、気にすべきではありません。機械的に対応するのです。
同じルールでなくても構いませんが、暴落時の追加投資は平均取得価額を下げられるので、投資可能な余裕資金が手元にある場合はおすすめです。でも、少しでも抵抗感がある場合はやめたほうがいいです。うまく行く保証はないからです。
うまく行かないケース
基準価額が次のような下落の仕方をする場合に上手に対応するのは困難です。
最初にどーんと下落したところで追加投資をしたとします。そこから回復しそうに見えますが、その後さらに下落して二番底を形成します。こうなることを前もって知る手段はないので、最初の低迷期に追加投資可能予算を使い果たしてしまうかも知れません。そうなった場合に、二番底を暗い気持ちで過ごすようなら、この記事で薦めていることは避けた方がいいでしょう。
暴落の規模と期間は予見不可能
基準価額が最高値から10%以上下落したからと言って、暴落が始まったとは限りません。軽い調整程度で終わり、暴落はしばらく後で始まるかも知れないからです。それでもおそらく、普通の毎月初積み立てよりは平均取得価額を下げられると思いますが、確実ではありません。予見不可能な未来の事象について、常時最適な結果が出せる方法などないからです。
つまり、暴落時の追加投資にも特有のリスクが伴います。そのリスクを負ってより高いリターンを求めるかどうかはみなさん次第です。