新興国株式

スリム新興国株式の運用コストと評価

新興国株式で人気が高いベンチマークは、MSCIエマージング・マーケットです。つみたてNISA認定の新興国株式インデックスファンド12本中、10本がこのベンチマークを採用しています。

MSCIエマージング・マーケットに投資する場合、スリム新興国株式は低コストで人気が高く、安心しておすすめできます。

更新情報

SBI・V・新興国株式対抗で信託報酬が引き下げられました。

スリム新興国株式

スリムシリーズ第一弾から5ヶ月遅れの、2017年7月31日に設定されました。税抜き信託報酬は当時最安水準の0.340%でしたが、その後6回引き下げらました。

次は信託報酬引き下げ履歴です。

スリム新興国株式の信託報酬引き下げ履歴表

特にEXE-i つみたて新興国株式(その後SBI新興国株式に改名)への対抗値下げが話題になりました。EXE-i つみたて新興国株式の驚異的な低信託報酬は、ETFを買うだけのインデックスファンドだからこそ可能だたと思われましたが、それに現物株運用のスリム新興国株式が対抗することに驚いたものです。(でもその姿勢が現在のスリムシリーズの高い人気の礎になっているはずです。)

0.170%に下がってからしばらく動きがありませんでしたが、たわら新興国株式への対抗値下げで0.169%に下がりました。そしてVWOに投資するSBI・V・新興国株式の新規設定に対抗して0.138%に下がりました。随分安くなったものです。

意味のない受益者還元型信託報酬制度

スリムシリーズは純資産総額が500億円、1,000億円を超えると信託報酬が漸減される「受益者還元型信託報酬制度」を採用しています。漸減率は商品によって異なりますが、スリム新興国株式のものは(税抜き信託報酬が0.189%の頃は)十分意味がありました。

ところが現在は漸減率が0.0001%ポイントしかなく、コスト削減効果はほぼありません。

スリム新興国株式の受益者還元型信託報酬制度の表

次は信託報酬が漸減される様子を示したグラフです。純資産総額が2,500億円を超えると減り始め、5,000億円を超えると減り方が変わります。右端は3兆円ですが、それだけ増えても0.1388%程度ですから、たったの0.0002%ポイントしか減りません。

スリム新興国株式の信託報酬が漸減される様子を示したグラフ

現在の純資産総額は赤丸の位置で、税抜き信託報酬は0.1380%です。競合商品との比較で、メリットのひとつとして宣伝されるかも知れませんが、実質的な効果は期待できません。

運用コスト=信託報酬+隠れコスト

運用コスト(トータルコスト)は信託報酬と、運用報告書が公開されるまで分からない隠れコストの合計です。運用報告書にある数値は、運用会社ごとに異なる基準で記載されるようなので、その扱いに難がありますが、一応の目安にはなります。

次は運用報告書から計算したトータルコストです。

運用報告書から計算したトータルコスト表

一般的に新興国株式インデックスの隠れコストは、先進国株式や米国株式に比べて高いです。スリムシリーズで見ると、3、4倍もします。

第五期決算期間は、第四期と同じ水準でした。隠れコストの改善も限界が近いのでしょうか。

トータルコストの第三期から第五期の比較表

このスリム新興国株式のトータルコスト0.3635%はMSCIエマージング・マーケット連動商品の中で最低水準です。

税抜き信託報酬が0.138%に引き下げられたことで、トータルコストはさらに下がりますね。

リターン比較

ベンチマークが同じ商品と比較します。スリム新興国株式の税抜き信託報酬が0.189%になった2018年7月25日から2023年6月9日までを比較します。

eMAXIS新興国株式との比較

次はeMAXIS新興国株式との比較です。

スリム新興国株式とeMAXIS新興国株式とのリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、スリム新興国株式ーeMAXIS新興国株式です。青のラインの傾きはトータルコスト差を示しています。コロナショックによる株価暴落時に凹んでいるのは想定通りです。

次はスリム新興国株式の運用コストを年率0.42%ポイント増量したものとの比較です。

スリム新興国株式の運用コストを年率0.42%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインは真っ平らになりました。マザーファンドが同じだからこそ得られる結果です。

ニッセイ新興国株式との比較

次はニッセイ外国株式との比較です。ニッセイ新興国株式の税抜き信託報酬は0.189%ですが、2023年6月14日に0.169%に引き下げられます。

スリム新興国株式とニッセイ新興国株式のリターン比較グラフ

青のラインはスリム新興国株式ーニッセイ新興国株式です。2021年まではおおむね右肩上がりなので、スリム新興国株式の方が低コストと言えました。その後は互角ですね。

たわら新興国株式との比較

次はたわら新興国株式との比較です。たわら新興国株式の税抜き信託報酬は長らく0.34%でした。2023年5月11日に0.169%に(やっと)下がりました。

スリム新興国株式とたわら新興国株式のリターン比較グラフ

青のラインはスリム新興国株式ーたわら新興国株式です。コロナショックによる株価暴落時にリターン差が開いています。新興国株式であれだけの株価変動があったのですから、期待通りの運用ができなくても仕方なかったかも知れません。

青のラインの傾向からも分かる通り、たわら新興国株式は高コストでした。今後はスリム新興国株式と互角になると思います。

売れています

次はスリム新興国株式、たわら新興国株式、ニッセイ新興国株式の資金流出入額の累計の推移です。赤のラインのスリム新興国株式の圧勝です。そしてそのラインの形状から、安定して売れていることが分かります。

スリム新興国株式、たわら新興国株式、ニッセイ新興国株式の資金流出入額の累計の推移

青のラインのニッセイ新興国株式、緑のラインのたわら新興国株式との人気の差は、シリーズの人気の差と言っていいでしょう。

評価:MSCIエマージング・マーケットに投資するならスリム新興国株式一択で

MSCIエマージング・マーケットに投資する場合、スリムシリーズが嫌いでなければ、スリム新興国株式一択でいいです。トータルコスト、人気(純資産総額)を考えるとそうなります。これには僕のポジショントークもいくらか入っていますが、スリムシリーズが嫌いでなければ後悔することはないでしょう。

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