新興国株式

スリム新興国株式の運用コストと評価

新興国株式で人気が高いベンチマークは、MSCIエマージング・マーケットです。つみたてNISA認定の新興国株式インデックスファンド12本中、10本がこのベンチマークを採用しています。

新興国株式は、先進国株式ほどの人気はないものの、そして近年はパフォーマンスが低くて人気が後退気味ですが、一定の資金流入が見込める資産クラスなのは確かです。ところがその勢力図は、先進国株式とは大きく違っています。

更新情報

2020年9月2日に、税抜き信託報酬を0.170%に引き下げると案内されました。SBI新興国株式が売買しているETFの経費率引き下げを要因したものです。

スリム新興国株式の信託報酬引き下げ履歴

スリムシリーズ第一弾から5ヶ月遅れの、2017年7月31日に設定されました。税抜き信託報酬は当時最安水準の0.340%でしたが、その後4回引き下げられて現在は0.170%です。(正しくは2020年9月25日からです。)

次は信託報酬引き下げ履歴です。

スリム新興国株式の信託報酬引き下げ履歴表

特にEXE-i つみたて新興国株式(その後SBI新興国株式に改名)への対抗値下げが話題になりました。EXE-i つみたて新興国株式の驚異的な低信託報酬は、ETFを買うだけのインデックスファンドだからこそ可能だたと思われましたが、それに現物株運用のスリム新興国株式が対抗することに驚いたものです。(でもその姿勢が現在のスリムシリーズの高い人気の礎になっているはずです。)

次はスリム新興国株式の設定日から2018年末までの、資金流出入額の累計の推移に補助線を引いたものです。

スリム新興国株式の設定日から2018年末までの、資金流出入額の累計の推移に補助線を引いたグラフ

税抜き信託報酬を0.339%から0.190%に引き下げてから、ラインの傾きが明らかに変わりました。受益者は敏感に反応したわけです。

受益者還元型信託報酬制度

スリムシリーズは純資産総額が500億円、1,000億円を超えると信託報酬が漸減される「受益者還元型信託報酬制度」を採用しています。漸減率は商品によって異なりますが、スリム新興国株式のものは十分意味があります。

スリム新興国株式の受益者還元型信託報酬制度の表

次はスリム先進国株式のものですが、信託報酬引き下げに伴い漸減率が圧縮されてしまい、効果的でなくなってしまいました。(スリム新興国株式の漸減率の31%でしかありません。)

スリム先進国株式の受益者還元型信託報酬制度の表

でもまだ純資産総額は291億円なので、500億円までの道のりは遠いです。

運用コスト=信託報酬+隠れコスト

運用コスト(トータルコスト)は信託報酬と、運用報告書が公開されるまで分からない隠れコストの合計です。運用報告書にある数値は、運用会社ごとに異なる基準で記載されるようなので、その扱いに難がありますが、一応の目安にはなります。

次は運用報告書から計算したトータルコストです。スリム新興国株式の先輩にあたる、eMAXIS新興国株式と比較しています。

運報告書から計算したトータルコスト表

隠れコストはほぼ同じです。トータルコストで見ると、eMAXIS新興国株式の0.8575%は引いちゃいそうなレベルですね。スリム新興国株式の0.4042%も、もっとローコスト化が進んだ資産クラスの商品から見ると高いと感じることでしょう。

新興国株式は隠れコストが高い

次はスリム新興国株式とスリム先進国株式のトータルコスト比較です。

スリム新興国株式とスリム先進国株式のトータルコスト比較表

スリムシリーズの場合、隠れコストに0.14%ポイント程度もの差があります。次は隠れコストの明細です。高い項目を赤字にしています。

隠れコストの明細表

売買委託手数料と保管費用の高さが目立ちます。運用が安定していてもこの水準なので、新興国株式特有の事情があるのでしょうね。

eMAXIS新興国株式とのリターン比較

次はスリム新興国株式の税抜き信託報酬が0.189%なった2018年7月25日から、株価暴落開始直前の2020年2月20日までの、eMAXIS新興国株式とのリターン比較です。

スリム新興国株式とeMAXIS新興国株式とのリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、スリム新興国株式ーeMAXIS新興国株式です。青のラインの傾きはトータルコスト差を示しています。

次はスリム新興国株式の運用コストを年率0.42%ポイント増量したものとの比較です。

スリム新興国株式の運用コストを年率0.42%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりました。運用報告書から計算したトータルコスト差は0.47%ポイント程度なので、どんぴしゃりではありませんが、ほぼ期待通りです。

信託報酬はニッセイ新興国株式と同率でしたが

スリム新興国株式の信託報酬はニッセイ新興国株式と同率でした。でも運用報告書から計算したトータルコストは、スリム新興国株式の方が安かったです。

スリム新興国株式とニッセイ新興国株式のトータルコスト比較表

これはスリム新興国株式の税抜き信託報酬が0.170%に引き下げられる前のものです。

ニッセイ新興国株式は隠れコストが高いです。でも、運用報告書に書かれた数値を信じるのではなくて、ごまかしの効かない基準価額データの比較で判断するべきです。

次はスリム新興国株式とニッセイ新興国株式のリターン比較です。税抜き信託報酬はどちらも0.189%だった頃のものです。

スリム新興国株式とニッセイ新興国株式のリターン比較グラフ

青のラインの傾向は右肩上がりですが、先進国株式インデックスの比較ほどきれいではありません。新興国株式はそういうものです。

運用報告書から計算したトータルコスト差は0.30%ポイント程度ですが、実際のリターン差はもう少しあるようです。この比較結果から、ニッセイ新興国株式よりスリム新興国株式の方が低コストだと言えます。

Fund of the Yearの順位

次はeMAXIS新興国株式とスリム新興国株式の、Fund of the Yearの順位です。スリム新興国株式は2017年度から対象です。

eMAXIS新興国株式とスリム新興国株式の、Fund of the Yearの順位表

eMAXIS新興国株式はかつて人気の高い商品だったことが分かります。設定されたのは2009年10月28日なので、2009年度は信託報酬だけ見て投票して2位でした。

2016年から選外になったのは、よりローコストな商品の登場と、新興国株式そのものの人気の(相対的な)低下が要因だと思います。それは、圧倒的な低コストのスリム新興国株式ですら、上位にランクインできないことからも分かります。

Fund of the Yearは単なる人気投票に過ぎず、好調な資産クラスが票を集める構図なのでしょう。

新興国株式インデックスでは売れています

次はeMAXIS新興国株式とスリム新興国株式の、設定来の資金流出入額の累計の推移です。

eMAXIS新興国株式とスリム新興国株式の、設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

純資産総額はeMAXIS新興国株式が312億円、スリム新興国株式が348億円です。緑のラインがeMAXIS新興国株式、赤のラインがスリム新興国株式です。

税抜き信託報酬に0.4%ポイント以上の差があるのに、eMAXIS新興国株式の純資産総額がまだそんなにあることに、スリム新興国株式との差が少ないことに驚きます。

次はスリム新興国株式だけをプロットしたものです。

スリム新興国株式の、設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

一定のペースで増加していますが、ラインの反り返りはわずかです。人気が加速すると見事に反り返るものですが、そうではありません。これは新興国株式は手堅い資産クラスではあるものの、より多くの受益者を惹き付けるだけの魅力は(現在)ない、ということでしょうか。

次はMSCIエマージング・マーケット以外も含めた、主な新興国株式インデックスの純資産総額一覧です。

主な新興国株式インデックスの純資産総額一覧表

ローコストなものに絞ると、スリム新興国株式の圧勝です。ニッセイ新興国株式は18.87億円しかありません。先進国株式の王者「ニッセイ外国株式」から受けるイメージと大きく異なっています。

評価:MSCIエマージング・マーケットに投資するならスリム新興国株式一択で

MSCIエマージング・マーケットに投資する場合、スリムシリーズが嫌いでなければ、スリム新興国株式一択でいいです。トータルコスト、人気(純資産総額)を考えるとそうなります。これには僕のポジショントークもいくらか入っていますが、スリムシリーズが嫌いでなければ後悔することはないでしょう。

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