米国株式

iFree S&P500の運用コストと評価

インデックスファンドは人気を獲得するのが難しい金融商品です。同じ指数をベンチマークにしていても、早く設定して人気を獲得し、先行者利益を得ながら純資産総額を増やした商品もあれば、後発商品にあっさり抜かれてしまい、先行した旨味は全くなかった商品もあります。

iFree S&P500はスリム米国株式に10ヶ月先行したにも関わらず、人気の獲得ができないままスリム米国株式(S&P500)に負けてしまった残念な商品です。この世界の競争は厳しく、残酷です。

更新情報

参照しているデータを最新版に更新しています。

iFree S&P500

2017年8月31日に税抜き信託報酬0.225%で設定されました。当時としては十分意欲的な設定でした。MSCIコクサイに連動するスリム先進国株式の税抜き信託報酬が0.20%、iFree 外国株式が0.21%だった時代です。

でも、その1ヶ月後にとんでもない商品が登場します。楽天全米株式です。VTIの経費率を含む税抜き信託報酬は驚異の0.16%でした。楽天全米株式のベンチマークはS&P500ではないので、同列での比較はできませんが、米国株式インデックスファンドの話題を全部持って行かれた印象です。

iFree S&P500の信託報酬は設定来一度も引き下げられていません。もし、楽天全米株式登場時に税抜き信託報酬を0.16%に引き下げていたら、米国株式インデックスの現在の勢力図はずいぶん違っていたかも知れません。

なお、iFree S&P500はつみたてNISA適格です。

運用コスト=信託報酬+隠れコスト

運用コスト(トータルコスト)は信託報酬と隠れコストの合計です。隠れコストは運用報告書にある数値から計算しますが、必ずしもすべてのコストが記載されるわけではありません。

次はiFree S&P500とスリム米国株式のトータルコスト比較です。

iFree S&P500とスリム米国株式のトータルコスト比較表

iFree S&P500の第一期決算期間の隠れコストは高かったのですが、第二期になって大幅に削減されました。第三期、第四期はさらに削減されていますが、限界に近づいている印象です。(スリム米国株式はもう少し安いです。)

iFree S&P500の第1から第4期のトータルコスト比較表

iFree S&P500のトータルコストはスリム米国株式(S&P500)にはかないませんが、十分低水準です。

VOOトータルリターンとの比較

iFree S&P500とVOOは、ベンチマークが同じであること以外に関連性はないのですが、VOOの配当金を再投資したトータルリターンと比較することで、運用の様子が分かります。

次はiFree S&P500の設定日直後を避けた、2017年9月15日から2022年5月31日までの、VOOトータルリターンとの比較です。

VOOトータルリターンとiFree S&P500のリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、VOOトータルリターンーiFree S&P500です。コロナショックによる株価暴落時を除いて、期待通り弓なりに曲がった右肩上がりの直線です。

iFree S&P500は現物株運用ではありませんでした

iFree S&P500の目論見書には次のように書かれています。太字にしたのは僕です。

ベンチマークであるS&P500指数(円ベース)への連動をめざしたポートフォリオを構築します。また、運用の効率化を図るため、米国株式の指数との連動をめざすETF(上場投資信託証券)、米国株式の指数との連動をめざす株価指数先物取引を利用することがあります。

引用:目論見書

これは、現物株だけでなく、ETFも売買しますよ、と言っています。そのETFとはS&P500種指数に連動する、ブラックロック社のIVVです。

次はETF比率の推移です。運用報告書から作成しました。

ETF比率の推移表

大きく変動しています。グラフにプロットすると傾向がつかめます。

ETF比率の推移グラフ

ETFを買い増しし、ある比率を超えたら売却、再度買い始めていましたが、第四期決算期間は2%台をキープしました。

目論見書に明記されていることなので、現物株とETFの併用自体は問題ありません。が、現物株運用のものと比べると、ETFの比率が高い時にリターン差が暴れることも確かです。iFree S&P500の組成内容だとETFの比率は(ベンチマークとの連動性が確保できるなら)低い方が好ましいです。

なお、スリム米国株式は現物株運用で、ETFは買っていません。SBI・V・S&P500は、VOOを買うだけのインデックスファンドで、現物株は買っていません。

IVVの経費率の扱い

SBI・V・S&P500の税抜き信託報酬は、信託報酬0.058%+VOOの経費率0.03%で構成されます。楽天全米株式の税抜き信託報酬は、信託報酬0.12%+VTIの経費率0.03%です。

ところが、iFree S&P500の税抜き信託報酬は、信託報酬0.225%とあるだけで、IVVの経費率は出てきません。IVVの経費率は現在0.03%ですが、0.04%だった第二期決算期間のIVVの平均比率は14.3%でしたので、ざっくり0.005%をIVVの経費率で負担していたことになります。この点においても、IVVの比率は低い方が好ましいです。

第四期決算期間はIVVの比率はとても低かったです。今後もこの状態を継続して欲しいものです。できればもうIVVの併用をやめて、完全な現物株運用に切り替えてはどうでしょうか。

リターン比較

ベンチマークが同じ商品と比較します。

スリム米国株式との比較

次はスリム米国株式の運用が安定した2018年11月12日から2022年5月31日までの、iFree S&P500との比較です。

iFree S&P500とスリム米国株式のリターン比較グラフ

青のラインはスリム米国株式ーiFree S&P500です。(時期によって傾きが変化しているものの)傾向としては右肩上がりで推移しているので、スリム米国株式の方がトータルコストが安いと言えます。

SBI・V・S&P500との比較

次はSBI・V・S&P500の運用が安定した2019年10月16日から2022年5月31日までの、iFree S&P500との比較です。

iFree S&P500とSBI・V・S&P500の比較グラフ

青のラインはiFree S&P500ーSBI・V・S&P500です。わずかに右肩上がりで推移していたことから、ごまかしの効かない基準価額データはSBI・V・S&P500よりもiFree S&P500の方が低コストだった、直近はほぼ互角であることを示しています。そんな馬鹿な!と思いますよね。でもこれが現実です。

次は2021年6月1日からの比較です。

iFree S&P500とSBI・V・S&P500の比較グラフ、2021年6月1日から

互角です。SBI・V・S&P500は運用頑張らないといけないです。

Fund of the Yearの順位

次はiFree S&P500とスリム米国株式の、Fund of the Yearの順位です。スリム米国株式は2018年度から対象です。

iFree S&P500とスリム米国株式の、Fund of the Yearの順位表

選外というのは21位以降だったということです。10ヶ月遅れて登場したスリム米国株式との違いが、競争の厳しさを表しています。

でも資金流入が圧倒的だったスリム米国株式も、2020年度は大きく順位を落としてしまいました。Fund of the Yearはごく限られた投資家の投票結果であり、一般の受益者の動向と同じではないという側面が色濃く出た結果となりました。

(相対的に)不人気です

次はiFree S&P500、スリム米国株式、SBI・V・S&P500の、設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は順に603億円1.27兆円5,914億円です。

iFree S&P500、スリム米国株式、SBI・V・S&P500の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

赤のラインがiFree S&P500です。人気の違いは明らかです。iFree S&P500の603億円は大きな金額ですが、米国株式インデックス、それもS&P500種指数連動でこの人気なのは厳しいです。

次はiFree S&P500だけをプロットしたものです。

iFree S&P500の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

一時期頭打ちになっていましたが、その後上昇傾向に回復しています。このグラフだけ見ると順調なんですが、スリム米国株式(S&P500)、SBI・V・S&P500と比べるとがっかりしてしまいます。

ネット証券以外で多く買われているかも

次は直近1年間の、スリム米国株式(S&P500)の営業日ごとの資金流出入額の推移です。

直近1年間の、スリム米国株式(S&P500)の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

緑の丸が付いているところが、月初の買付によるもの、赤の丸が付いているところが、iDeCoの買付によるものです。月初の買付が目立ちます。

次はiFree S&P500の同じグラフです。

直近1年間の、iFree S&P500の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

月の途中でも多く買われています。(iFree S&P500をiDeCoで扱っている金融機関は把握していません。)

これは僕の想像ですが、iFree S&P500はネット証券以外の多くの金融機関で扱われており、それらで買われているのではないでしょうか。ネット証券でスリム米国株式(S&P500)を買う方が有利だということを知らずに。

評価:iFree S&P500より有利な選択肢があります

スリム米国株式の方がトータルコストが安く、人気(純資産総額)に圧倒的な差があることから、iFree S&P500を選択するのは経済的合理性がありません。S&P500種指数に投資する場合、SBI・V・S&P500も候補になりますが、現状ではスリム米国株式の方が有利だと判断しています。将来的にはSBI・V・S&P500は良い選択肢になると予想していますが、残念ながら、iFree S&P500にそのチャンスはもうやって来ない気がしています。

おすすめの関連記事

-米国株式

© 2022 河童のインデックス投資 Powered by STINGER