全世界株式

たわら全世界株式の運用コストと評価

日本を含む全世界の株式に時価総額比で投資する、全世界株式インデックスファンドの一番人気は楽天全世界株式です。eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は、ベンチマークは異なりますが、短期間で楽天全世界株式に次ぐ人気を獲得できました。その背景には、信託報酬の安さ、同率ながら競合商品への対抗値下げの姿勢が評価されたことがあると思われます。

たわら全世界株式はオール・カントリーに約9ヶ月遅れて設定されました。もちろんオール・カントリーを目標にしたことでしょう。ところが現状はとても厳しいです。

以下、eMAXIS Slimをスリムと表記します。

更新情報

株価暴落後の様子を追加しました。参照しているデータを最新版に更新しました。

たわら全世界株式

ある組成のファンドが売れることが分かると同じ、あるいは類似の組成で参入するのがこの業界の習慣です。これは適切な競争を促進する効果が期待できるので良いことです。たわらノーロードシリーズで有名なアセットマネジメントOneは2019年7月22日に、たわら全世界株式を設定しました。

ベンチマークはスリム全世界株式(オール・カントリー)と同じMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスです。言わば先行したオール・カントリーに真っ向勝負を挑んだわけです。

たわら全世界株式は、もちろん、つみたてNISA適格です。

意欲的な信託報酬、だったのに

たわら全世界株式は、オール・カントリーより0.022%ポイント安い、税抜き信託報酬0.120%で設定されました。でも三菱UFJ国際投信は期待通りにオール・カントリー(を含む全世界株式インデックスファンド3種)の信託報酬を税抜き0.120%に引き下げました。そうなることは事前に分かっていたはずなので、僕はアセットマネジメントOneがあえてそのような選択をした理由が理解できません。

ベンチマークと信託報酬が同じ、どちらもつみたてNISA適格となると、ブランド力・販売力がものを言います。

その後、SBI全世界株式が、税抜き信託報酬を0.104%に引き下げました。オール・カントリーは対抗値下げをして同率になりましたが、たわら全世界株式は対抗値下げしていません。

運用コスト

次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。スリム全世界株式(オール・カントリー)と比較しています。

 トータルコスト比較表

たわら全世界株式は第一期決算期間が短く、コスト的に不利なのがモロに表れています。運用報告書にある数値を真に受けてはいけませんが、数値上は隠れコストに1.88倍もの差があります。結果、推定トータルコストには0.10%ポイントもの差ができてしまいました。でも、第二期以降は差が縮まるはずです。

次は隠れコストの明細です。差が大きいものを赤字にしました。

売買委託手数料と、その他「信託事務の処理に要する諸費用」が高いです。

スリム全世界株式(オール・カントリー)とのリターン比較

株価暴落前まで

次はたわら全世界株式とオール・カントリーのリターン比較です。あえてたわら全世界株式の設定日から、コロナショックによる株価暴落が始まる直前の2020年2月20日までです。

たわら全世界株式とスリム全世界株式(オール・カントリー)のリターン比較グラフ

赤のラインがオール・カントリー、緑のラインがたわら全世界株式です。青のラインはリターン差で、オール・カントリーーたわら全世界株式です。

設定日直後に青のラインは跳ね上がっています。これはオール・カントリーよりリターンが極度に悪いことを意味しますが、避けがたいものです。大なり小なり、ファンドの設定直後には見られる現象です。

たわら全世界株式の運用報告書には次の記述があります。

ファンドはベンチマークを0.3%下回りました。設定当初マザーファンドを非保有であったことや、信託報酬の影響を除くと、概ねベンチマークに連動した運用成果となりました。

引用:運用報告書

僕はこの設定直後のことを非難する気はありません。

次は設定日直後を避けた、2019年8月15日からの比較です。

たわら全世界株式とスリム全世界株式(オール・カントリー)のリターン比較グラフ、2020年8月15日から

青のラインはプラス圏内で推移しています。傾向としてはわずかに右肩上がりです。

オール・カントリーの信託報酬引き下げにより、2019年11月12日以降は税込み信託報酬差が0.0176%ポイントあります。次は2019年11月12日以降のリターン比較です。

2019年11月12日以降のリターン比較グラフ

期待に反して青のラインはフラットです。これは現在、オール・カントリーとたわら全世界株式のトータルコストにほとんど差がないことを示しています。信託報酬には差があるので、オール・カントリーの方が隠れコストが大きいということでしょう。

株価暴落以降

次はたわら全世界株式の設定日直後を避けた、2019年8月15日から2020年11月6日までの、スリム全世界株式(オール・カントリー)との比較です。

たわら全世界株式とスリム全世界株式(オール・カントリー)との比較グラフ

黄色に塗った、コロナショックによる株価暴落時に差が開いています。あの暴落は、純資産総額が少ないたわら全世界株式には厳しかったのかも知れません。

次は株価暴落から回復過程にある、2020年4月1日以降を切り出したものです。

たわら全世界株式とスリム全世界株式(オール・カントリー)との比較グラフ、2020年4月1日以降を切り出したもの

この2商品には、税込み信託報酬差が0.0176%ポイントありますが、小さすぎて実績データによるリターン比較では認識できません。

これらの比較結果から、こう考えられます。

  • たわら全世界株式の現在のトータルコストはオール・カントリーと変わらず、非常に低コストです。
  • まぐれではリターン差はこのように推移できないので、どちらも運用は順調だと言って良いです。
  • 株価暴落時に差が生まれていますが、それをもってたわら全世界株式のパフォーマンスがオール・カントリーより劣っていると言うのは酷でしょう。

不人気です

たわら全世界株式の純資産総額は3.8億円です。人気のジャンルで、設定されてから1年4ヶ月でそれだけしか集められないというのは、非常に厳しいです。(純資産総額で見ると、もっと売れていないファンドは掃いて捨てるほどありますが、それはなぐさめになりません。)

次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。

たわら全世界株式の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

設定直後の立ち上がりは良かったのですが、ひと月で減衰します。その後一定の増加ペースを維持していますが、増加率が低すぎます。

オール・カントリーもプロットすると状況が絶望的だと分かります。オール・カントリーの純資産総額は583億円です。

オール・カントリーとたわら全世界株式の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

たわら全世界株式は右下に張り付いています。

ネット証券を中心に販売中

販社数はオール・カントリーが13社、たわら全世界株式は7社です。次はその一覧です。

販社一覧表

出典:Yahoo!ファイナンス

たわら全世界株式は、ネット証券で売れていないのは明らかなので、たわら先進国株式がそうしたように、銀行や地方の証券会社での取り扱いを増やすかも知れません。でもそれは、生き残りには適していない戦略です。また、たわら先進国株式は現在主にiDeCoで買われていることを考えると、ネット証券以外の販路を拡大しても厳しいかも知れません。(iDeCoナビによると、たわら全世界株式のiDeCoでの取り扱いはありません。)

MSCIジャパンインデックスマザーファンド

三菱UFJ国際投信は、オール・カントリーのためにMSCIジャパンをベンチマークにしたマザーファンドを新規設定しました。日本株式インデックスマザーファンドという名称ですが、これはオール・カントリー専用ではありません。運用報告書によると「MSCIジャパン・インデックスファンド(適格機関投資家限定)」でも利用されていました。ベビーファンドが増えればマザーファンドの純資産総額も増え、運用コスト的に有利になるので、そうやって活用されるのは当然ですね。

たわら全世界株式の場合はMSCIジャパンインデックスマザーファンドという名称ですが、こちらもたわら全世界株式専用ではありません。運用報告書によると、「MSCIジャパン・インデックス・ファンド(適格機関投資家限定)」でも利用されていました。(名称が同じで気味が悪いです。)これも当然ですね。

MSCIジャパン指数のためにマザーファンドを新設したことに対し、マザーファンドの純資産総額が増えるまでは運用コスト、運用の安定性において不利なることを心配する声が聞かれました。その心配は正しいわけですが、運用会社はマザーファンドを利用するベビーファンドを増やすことで対応(工夫、努力)しているのだと思われます。

でも、あらゆる努力の結果は基準価額に反映されます。どうしても多数決になってしまいますが、基準価額データを比較して、運用コスト、運用の上手い下手を含めた「最終結果」を見るしかありません。その観点では、オール・カントリーとたわら全世界株式は(どうにもならない設定直後と株価暴落時を除いて)上手に運用されていると言えるでしょう。が、それと売れ行き(人気)は別なのが、投資信託の難しいところです。

評価:低コストでも不人気なのでおすすめできません

スリムシリーズとたわらノーロードシリーズの人気の差は明らかです。人気は一朝一夕に獲得できるものではなく、スリムシリーズだって登場直後から支持されていたわけではありません。現在の人気の違いが、オール・カントリーとたわら全世界株式の売れ行きに大きく影響しているのは、否定できないでしょう。

トータルコストはほぼ変わらず、運用も安定しているのなら、もっと人気が出ても良さそうなものです。でも一般の受益者は、信託報酬しか見ず、トータルコストを気にかけないと言われます。

次は税込み信託報酬です。

  • スリム全世界株式(オール・カントリー):0.1144%
  • たわら全世界株式:0.132%

どちらかを選択する状況で、スリムシリーズが嫌いでなければ、信託報酬が安い方を選ぶでしょう。そして、純資産総額の大きさこそが運用と競争を継続する原資になります。わざわざ不人気で売れない商品を、信託報酬引き下げ競争から距離を置いている商品を選択する経済的合理性はありません。どうしてもその商品を応援したい、というなら話は別ですが。

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