近年、米国株式インデックスの人気が高まっています。ベンチマークで言うと、楽天全米株式のCRSP USトータル・マーケット・
スリム米国株式は米国株式人気にも支えられ、圧倒的な資金流入が続いています。純資産総額2兆円も射程圏内です。
更新情報
参照しているデータを最新版に更新しています。
スリム米国株式(S&P500)
2018年7月3日に税抜き信託報酬0.16%で設定されました。楽天全米株式と同率でした。以来、信託報酬を3回引き下げています。すべて同率への対抗値下げです。次はその履歴をまとめた表です。
対抗した楽天全米株式とSBIバンガードS&P500(その後SBI・V・S&P500に改名)は、どちらもバンガード社のETFを買うだけのインデックスファンドです。その組成上、税抜き信託報酬は運用会社の信託報酬と、ETFの経費率の合計ですが、後者は非課税です。そのため税込み信託報酬では同率最安にはなりません。この税抜き信託報酬に同率で対抗する姿勢は、スリムシリーズ共通です。
たわらS&P500は現物株運用だと思われます。同率での対抗ですが、受益者還元型信託報酬制度により、数字の上ではすでにスリム米国株式(S&P500)の方が安いです。
過去の信託報酬引き下げの話はこれくらいでいいって方は、ここまで飛ばして下さい。
SBIバンガードS&P500への対抗値下げ
SBIバンガードS&P500が、税抜き信託報酬0.088%という衝撃的な安さで設定されると発表されたのは、2019年8月27日でした。スリムシリーズは「業界最低水準の運用コストを目指す」を売り文句にしているので、対抗値下げしてその姿勢を貫くのか、ギブアップして受益者をがっかりさせるのか、大いに注目されました。
当時のスリム米国株式の税抜き信託報酬は0.15%だったので、対抗すると削減率は41.3%というとんでもないものでした。それまで、三菱UFJ国際投信は大した日数をおかずに対抗値下げを発表していたのですが、その時は長い期間沈黙を守りました。そして、期待通りの対抗値下げを発表するまでに45日もかかったのです。
対抗値下げを発表するまでに45日もかかった理由
三菱UFJ国際投信主催のブロガーミーティングで質問しました。
- SBIバンガードS&P500の発表から、対抗値下げの発表まで45日もかかりましたが、それは販社との交渉が長引いたからでしょうか。ネットでは信託報酬0.10%までは三菱UFJ国際投信だけの判断で引き下げられるが、それを超えると販社の了解を得る必要があるという憶測も流れていました。
- 今後、一層の信託報酬引き下げがある場合、再度販社との協議が必要なものでしょうか。
代田常務執行役員から直球の回答が頂けました。ありがとうございます。
- 発表までに45日かかったのは社内の事情。販社は関係ない。
- スリムシリーズを扱って頂く時点で販社様には信託報酬を三菱UFJ国際投信の判断で変更することを了解してもらっている(表現は違いますが、意味的にはこうでした)。
- 信託報酬は、今後も三菱UFJ国際投信の判断のみで引き下げられる。
なるほど、そうだったのですね。
この質問の前に、SBIバンガードS&P500への対抗値下げの発表が遅れて多くの人に心配をかけてしまったことへの言及と、次の説明がありました。
- スリム米国株式の信託報酬を税抜き0.088%まで引き下げたかった。
- そうすると信託報酬に占める三菱UFJ国際投信の取り分は0.034%になるが、それで運用を続けていけるコスト構造にできるかが課題だった。
- 信託報酬を引き下げたものの、途中でやめる(繰上償還する)わけにはいかない。それは絶対に避けなければならない。
- コスト構造の見直しのメドが付いたので対抗値下げを決めた。
乗り越えなければならかった壁は、とても高かったわけです。
でも、この対抗値下げの効果(と思われるもの)を実感するのに、時間はかかりませんでした。
運用コスト=信託報酬+隠れコスト
運用コスト(トータルコスト)は信託報酬と隠れコストの合計です。隠れコストは運用報告書に記載されている、売買委託手数料、有価証券取引税、保管費用、監査費用などから構成されます。
次はスリム米国株式の運用報告書から計算したトータルコストです。
第四期決算期間は、(安かった)隠れコストがさらに削減されました。
現物株運用でこの隠れコストの低さは(運用報告書の数値を信じるなら)素晴らしいです。
意味のない受益者還元型信託報酬制度
スリムシリーズは純資産総額が500億円、1,000億円を超えると信託報酬が漸減される「受益者還元型信託報酬制度」を採用しています。でもスリム米国株式の漸減率は小さすぎて意味ありません。
2段階の引き下げ率はたったの0.0006%ポイントです。上記は、たわらS&P500に対抗値下げしてからのものですが、税抜き信託報酬を0.15%から0.088%に引き下げた時に、1/10に圧縮されてしまいました。流石に信託報酬が激安すぎて、削減幅を減らさないと成立しなかったのでしょう。
次は信託報酬が漸減される様子を示したグラフです。純資産総額が1,000億円を超えると減り始め、5,000億円を超えると減り方が変わります。右端は3兆円です。
現在の純資産総額は18,156億円(赤丸の位置)で、税抜き信託報酬は0.0845%ぐらいです。まだしばらくは、グラフの上では純資産総額の増加に伴って漸減されますが、そしてそれは競合商品との比較で、メリットのひとつとして宣伝されるかも知れませんが、そもそもの漸減率が小さいため、実質的な効果は期待できません。
が、このことも含めてスリム米国株式(S&P500)の人気がさらに向上し、より多くの、圧倒的な資金が集まることは受益者にとってメリットでしかありません。
ではその運用はベンチマーク通りで安定しているでしょうか。
リターン比較
ベンチマークが同じ商品とリターンを比較します。
iFree S&P500との比較
iFree S&P500はスリム米国株式より10ヶ月早く設定されましたが、残念ながら人気を獲得することができませんでした。税抜き信託報酬は0.225%とやる気満々でしたが、その3ヶ月後に税抜き信託報酬0.16%で登場した楽天全米株式に持って行かれたのかも知れません。
次はスリム米国株式の運用が安定した、2018年11月12日から、2023年3月17日までのリターン比較です。
青のラインはスリム米国株式ーiFree S&P500です。株価暴落時に凹んでいるのを除くと、おおむね右肩上がりで推移しているので、期待通り、スリム米国株式の方が低コストだと考えられます。
SBI・V・S&P500との比較
SBI・V・S&P500はバンガード社のETFであるVOOを買うだけのインデックスファンドです。SBI・V・S&P500も設定直後は運用が不安定でしたので、その時期を避けて2019年10月16日から2023年3月17日までの比較です。
青のラインはスリム米国株式ーSBI・V・S&P500です。このスケールだと変動が激しいですが、傾向としては右肩上がりの期間が長かったです。これはSBI・V・S&P500のリターンは、スリム米国株式に負けていることを示しています。が、最近は互角になってきたようです。
売れ行きは
圧倒的な人気
次はスリム米国株式、SBI・V・S&P500、楽天全米株式の、設定来の資金流出入額の累計の推移です。スリム米国株式(S&P500)は長い間、楽天全米株式との差を詰められないでいました。が、2020年になって資金流入を増やし、楽天全米株式を追い抜いてしまいました。その後の人気(資金流入額の伸び)は圧倒的です。インデックスファンドでは化け物と言っていいです。
スリム米国株式の純資産総額は1.81兆円、楽天全米株式は7,996億円、SBI・V・S&P500は7,961億円です。
赤のラインがスリム米国株式、緑のラインがSBI・V・S&P500、青のラインが楽天全米株式です。スリム米国株式の圧勝ですね。
2兆円も射程圏内
スリム米国株式(S&P500)の純資産総額は1兆円を超えています。これは日本のインデックスファンドとして初の快挙だそうです。
その後も安定した資金流入が続いており、現在の純資産総額は1.81兆円です。2兆円も射程圏内です。
iDeCoでも買えます
次の金融機関で、iDeCoの取り扱いがあります。
- SBI証券(セレクトプラン)
- マネックス証券
- 松井証券
- auアセットマネジメント
SBI・V・S&P500は(いまだに)iDeCoでは買えません。
評価:S&P500種指数に投資するなら最適解です
S&P500種指数に投資したい場合、運用コストを考慮すると次の商品が選択肢になります。
- スリム米国株式
- SBI・V・S&P500
- つみたて米国株式(S&P500)
- iFree S&P500
そのうち、たわらS&P500も選択肢になるでしょう。
ベンチマークとのリターン比較に見る運用の安定性、純資産総額(人気)を考慮すると、スリム米国株式が最適解となります。SBI・V・S&P500もいいですが、販路が狭すぎるところが気になります。