日本を含む全世界の株式に、時価総額比で投資する全世界株式インデックスファンドの人気に火を付けたのは、楽天全世界株式です。でも、楽天全世界株式より21日早く設定されたステートストリート全世界株式のことを知っている人は多くはないと思われます。ステートストリート全世界株式のベンチマークは、あのeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)と同じです。え、それでどうしてその商品名を聞いた気がしないのか、不思議に思いませんか。
インデックスファンドで人気を獲得するには、ベンチマーク以外に、多くの条件を満たす必要があるようです。中でも、信託報酬は極めて重要です。
以下、eMAXIS Slimをスリムと表記します。
ステートストリート全世界株式
2017年9月8日に設定されました。スリムシリーズ第一弾が設定されてから約6ヶ月後、楽天全世界株式が設定される21日前です。ベンチマークは、後にスリム全世界株式(オール・カントリー)が採用することになる、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスです。税抜き信託報酬は0.48%とやる気を感じないものでした。楽天全世界株式の実質的な運営管理費用が税込み0.2296%(設定当時)だったので、注目されなかったとしても不思議ではありません。
また、税抜き0.2%を上限に購入時手数料を販社が設定できる(つみたてNISAなら無料)と、全世界株式インデックスがノーロードじゃないという時代錯誤な設定でした。さらに、一般的に嫌われる解約時信託財産留保額が0.3%かかります。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。スリム全世界株式(オール・カントリー)と比較しています。
隠れコストは大差ありませんが、ステートストリート全世界株式は信託報酬が高いです。トータルコストで見ると、これではステートストリート全世界株式を買う気が失せてしまいます。
さらに高コストだった第一期
これはインデックスファンドの「あるある」ですが、ステートストリート全世界株式も第一期決算期間は隠れコストが高かったです。次は第一期から第三期のトータルコスト比較です。
次は隠れコストの明細です。
高い項目を赤字にしましたが、第一期は全体的に高コストでした。
スリム全世界株式(オール・カントリー)とのリターン比較
次はステートストリート全世界株式とオール・カントリーのリターン比較です。オール・カントリーの設定直後を避けた、2018年11月15日から、株価暴落が始まる直前の2020年2月20日までです。
青にラインはリターン差で、オール・カントリーーステートストリート全世界株式です。青のラインの傾きはトータルコスト差を示してます。
次はオール・カントリーの運用コストを年率0.32%ポイント増量したものとの比較です。
青のラインはほぼフラットになりました。一方、運用報告書から計算したトータルコスト差は、約0.40%ポイントです。計算上0.08%ポイント合いません。ステートストリート先進国株式は、運用報告書から計算したトータルコストではスリム先進国株式に負けているのに、実際のリターンはスリム先進国株式より高いです。それを連想させる事象ですが、理由は分かりません。
売れていません
ステートストリート全世界株式の純資産総額は17.29億円です。約14ヶ月後に設定されたオール・カントリーが293億円なので、勝負あったと言えるでしょう。
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。
変動しながらも傾向としては増え続けていますが、増加ペースが遅いです。
オール・カントリーもプロットすると良く分かります。
オール・カントリーの方が圧倒的に有利なことに気付かない、一定数存在する受益者が今後もステートストリート全世界株式を選択するとしても、この人気の差はステートストリート全世界株式に未来がないことを示しています。
評価:高コストで買う価値ありません
オール・カントリーよりもステートストリート全世界株式を選択する、経済的合理性はありません。ステートストリート全世界株式は、やる気のない(=競争力のない)信託報酬で設定し(しかもノーロードじゃない)、受益者から見事に無視されてしまったようです。でもそれは当然の結果と言えるでしょう。