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米国株式配当貴族インデックスの運用コストと評価

S&P500配当貴族指数に投資したい場合、信託報酬がちょっと高めですが、インデックスファンドの選択肢があります。そして驚いたことに、資産形成に不利な商品の方が良く売れているという、残念な現実があります。最低限の金融リテラシーがあれば「そっちは買わないでしょ」という商品です。

さらにびっくりなことに、おすすめの商品と、買ってはいけない商品は、どちらも野村アセットマネジメントが運用しています。

S&P500配当貴族指数

S&P500を生徒500名の進学校とすると、67名程度の選抜クラスを作ったような感じです。

S&P500種指数の構成銘柄のうち、25年以上連続して増配している銘柄を対象とし、均等加重時価総額に基づいて算出されます。年次で最低40銘柄を見直し、25年以上連続して増配している銘柄数が40銘柄を下回った場合には、次の対応が行われます。

  • 20年以上連続して増配している銘柄を、配当利回りの高いものから順に40銘柄になるまで構成銘柄に追加。
  • それでも40銘柄に満たない場合には、配当利回りの高いものから順に40銘柄になるまで構成銘柄に追加。

出典:SMT米国株式配当貴族インデックスの目論見書

現在67銘柄に、ほぼ均等配分で投資されています。

ものすごくパフォーマンスが高そうな気がしますが、配当金の大小と株価の推移は別物です。配当を得ることをインカムゲイン、株価の上昇で利益を得ることをキャピタルゲインと言いますが、銘柄によって向き不向きがあります。

資産形成を目的にしてインデックス投資を行う場合、配当金は再投資した方が有利です。そのため、配当金を国内課税なしにファンド内で再投資してくれる、無分配のファンドが有利です。

なお、S&P500配当貴族指数は、つみたてNISAの指定インデックスに認められておらず、現在、つみたてNISAで買うことはできません。

NOBLトータルリターン

S&P500配当貴族指数をベンチマークにしているETFに、ProShares社のNOBLがあります。経費率は0.35%です。NOBLのトータルリターンを生成して、インデックスファンドとリターンを比較することで、運用コストを推測できます。少なくとも、インデックスファンドの運用コストの大小比較には使えます。

次の手順でNOBLトータルリターンを生成します。

  • 2014年1月7日に10,000円でVTIを買ったことにします。扱う株数は「端株数」です。つまり、NOBLの取引価格が4,500円なら2.2222株買ったことになります。
  • 配当金が出たら米国での10%課税後のドルを再投資します。税引き後の配当金でNOBLを端株数で買うのです。そうして保有株数を増やします。保有株数が増えるのは配当金を再投資した時だけです。
  • 円をドルに替える為替手数料もNOBLの購入手数料もゼロとします。
  • 評価額は円換算して求めます。

たとえると、河童証券がNOBLを買うだけのインデックスファンドを運用して、配当金の再投資までしますが、信託報酬も隠れコストもゼロ円の場合の基準価額の推移を生成するようなものです。そのため、このトータルリターンは現実にはありえない仮想的なものです。

これと比較対象のインデックスファンドの基準価額の推移を比較することで次のコストの総和が推測できます。(NOBLの経費率を除きます。)

  • 純資産から毎営業日天引きされている信託報酬。
  • 運用報告書に記載される、隠れコストと呼ばれる、信託報酬以外のコスト。売買委託手数料、有価証券取引税、監査費用、保管費用など。
  • 運用会社がコストとは認識しないものの、運用で生じたロス。たとえば純資産の一部を現金で保有したことによる機会損失。

グラフの見方

この記事では米国株式配当貴族(年4回決算型)にあわせて、2018年12月3日から、株価暴落開始前の2020年2月20日までで、NOBLトータルリターンと比較します。

  • 青のラインはリターン差で、NOBLトータルリターンー比較対象ファンドです。
  • 青のラインにある大きなヒゲは正常なものなので、無視してください。
  • 青のラインの傾きが、比較対象ファンドの運用コストの大きさを示しています。
  • グラフの2つ目で、NOBLトータルリターンの運用コストを増量し、比較対象ファンドの運用コストの大きさ示す数値を求めています。

Funds-i 米国株式配当貴族

Funds-i 米国株式配当貴族は2017年1月10日に設定されました。信託報酬は今では高水準の税抜き0.50%です。もっとやる気を出して欲しかったですね。また、売却時に信託財産留保額が0.1%かかります。

  • 金融機関によっては、購入時手数料が税抜き2%を上限に設定されます。
  • 解約時信託財産留保額0.1%が設定されてます。

次は運用報告書から計算したトータルコストです。

Funds-i 米国株式配当貴族のトータルコスト表

隠れコストは人気の超ローコスト投信の水準よりは少し高いです。

次はNOBLトータルリターンとの比較です。

Funds-i 米国株式配当貴族

次はNOBLトータルリターンの運用コストを年率0.25%ポイント増量したものとの比較です。

Funds-i 米国株式配当貴族

青のラインはほぼフラットになりました。

米国株式配当貴族(年4回決算型)

米国株式配当貴族(年4回決算型)は2018年11月14日に設定されました。運用しているのはFunds-i 米国株式配当貴族と同じ、野村アセットマネジメントですが、これは情弱向けの残念な商品です。

  • 信託報酬はFunds-i 米国株式配当貴族と同じく、税抜き0.50%です。
  • 金融機関によっては、購入時手数料が税抜き2%を上限に設定されます。
  • 解約時信託財産留保額0.1%が設定されてます。
  • マザーファンドはFunds-i 米国株式配当貴族と同じです。
  • 年4回、配当金を出そうとします。資産形成に不向きです。
  • 信託期間が10年しかなく、2028年10月23日が償還日です。

最低限の金融リテラシーがあれば、この商品は選択しないはずです。次は運用報告書から計算したトータルコストです。

米国株式配当貴族(年4回決算型)のトータルコスト表

隠れコストはFunds-i 米国株式配当貴族より安いですが、運用報告書にある数値は参考程度にした方がいいです。

次はNOBLトータルリターンとの比較です。縦軸のスケールを変えています。

米国株式配当貴族(年4回決算型)

配当金を出す都度、青のラインが階段状に跳ね上がっています。これだとNOBLトータルリターンの運用コストを増量して、という方法が使えません。

次はFunds-i 米国株式配当貴族との比較です。

米国株式配当貴族(年4回決算型)とFunds-i 米国株式配当貴族の比較グラフ

マザーファンドと信託報酬が同じなので、初めて配当金を出すまではリターン差がありません。ところが配当金を2回、3回出した後は、青のラインは右肩上がりになっています。これは、米国株式配当貴族(年4回決算型)と比較して、Funds-i 米国株式配当貴族は配当金の再投資効果が得られるためです。

SMT米国株式配当貴族インデックス

SMT米国株式配当貴族インデックスは2016年8月30日に設定されました。税抜き信託報酬は0.55%と高めです。後発のFunds-i 米国株式配当貴族は、これよりわずかに安い0.50%に設定したのではないでしょうか。

  • 金融機関によっては、購入時手数料が税抜き3%を上限に設定されます。
  • 年2回決算ですが、これまでのところ分配金を出していません。

次は運用報告書から計算したトータルコストです。

SMT米国株式配当貴族インデックスのトータルコスト表

隠れコストはFunds-i 米国株式配当貴族といい勝負ですが、トータルコストは一番高いです。

次はNOBLトータルリターンとの比較です。

SMT米国株式配当貴族インデックス

次はNOBLトータルリターンの運用コストを年率0.40%ポイント増量したものとの比較です。

SMT米国株式配当貴族インデックス

青のラインはほぼフラットになりました。高コストですね。

情弱向け商品が一番売れています

困ったことに、売れてほしくない米国株式配当貴族(年4回決算型)が一番売れています。純資産総額は147億円です。Funds-i 米国株式配当貴族は87億円、SMT米国株式配当貴族インデックスは11億円です。

次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。

設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

  • 赤のラインのSMT米国株式配当貴族インデックスは低迷が続いています。厳しいですね。
  • 緑のラインのFunds-i 米国株式配当貴族の人気もイマイチです。勢いがありません。
  • 青のラインの米国株式配当貴族(年4回決算型)は、一番勢いがあります。

評価:Funds-i 米国株式配当貴族がおすすめです

一覧表にまとめました。米国株式配当貴族(年4回決算型)は論外なので、コストが安いFunds-i 米国株式配当貴族に軍配が上がります。

配当貴族は高配当ではありません

意外かも知れませんが、S&P500配当貴族指数は連続増配銘柄を選抜しているものの、高配当ではありません。

次はNOBLとVOO(S&P500種指数に連動するETF)の配当金実績(米国10%課税後)です。

NOBLとVOOの配当金実績グラフ

黄色がNOBLです。VOOと大して変わりません。次はこの期間の年平均を求めた表です。

NOBLとVOOの配当金実績、年平均の表

有意差はないですね。

S&P500でいいんじゃね?

次はiFree S&P500とSMT米国株式配当貴族インデックスのリターン比較です。

iFree S&P500とSMT米国株式配当貴族インデックスのリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、iFree S&P500ーSMT米国株式配当貴族インデックスです。大差ないですね。どっちが有利かは時期によると言えます。

次はVOOトータルリターンとNOBLトータルリターンの比較です。

VOOトータルリターンとNOBLトータルリターンの比較グラフ

2016年あたりまでは、NOBLの方が高パフォーマンスでしたが、それが長く続いているわけではありません。この様子なら、S&P500インデックスで十分ではないでしょうか。超ローコストな選択肢がありますし。

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