日本を含む全世界株式のベンチマークで、つみたてNISAの指定インデックスに認められているのは、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスとFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスの2つです。後者を採用した、つみたてNISA適格商品は3本あります。楽天全世界株式、SBI全世界株式、SBI・V・全世界株式です。
ところがSBI全世界株式の中身は、期待したものとはちょっと違います。
更新情報
参照しているデータを最新版に更新しています。
SBI全世界株式
2017年12月6日に設定されました。当時の名前は「EXE-i つみたてグローバル(中小型含む)株式」でした。その後「SBI全世界株式」に改名されました。愛称は「雪だるま(全世界株式)」です。
EXE-i つみたてグローバル(中小型含む)株式の税抜き信託報酬0.142%という意欲的なものでした。その後、税抜き信託報酬を0.104%に引き下げられました。
SBI全世界株式はつみたてNISA適格です。またiDeCoナビによるとSBI証券のセレクトプランで扱われています。
FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス
目論見書にはベンチマークが「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」だとあります。それを次の3本のETFを組み合わせることで実現します。設定当初の比率はこうでした。
2019年8月から次の比率に変更されています。
2021年8月から米国株式部分のETFがVTIに変更されています。
2022年2月から次の比率に変更されています。
引用:目論見書
でも、この3本のETFをある比率で混ぜて、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスになるのでしょうか。そういうマニアックな話はいいやって方はここまで飛ばして下さい。
国別投資比率比較
国別投資比率を比較するのに、次の資料を参照しました。
- VTの国別投資割合はこちらから取得しました。
- SPDR Portfolio Developed World ex-US ETFの国別投資割合はこちらから取得しました。
- SPDR Portfolio Emerging Markets ETFの国別投資割合はこちらから取得しました。
表が長いので2分割しました。
この違いは許容範囲内なのでしょうか。
本当にこれでいいの?
SBI全世界株式は、3本のETFをある比率で混ぜることで、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスに連動するとしているわけですが、僕はこれには無理があると思っています。ベンチマークはもう少し厳格なものではないでしょうか。
ベンチマークがFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスだと主張したい理由は、おそらく、つみたてNISA適格要件を満たすためでしょう。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。楽天全世界株式と比較しています。
SBI全世界株式の信託報酬は、楽天全世界株式と比べると驚異的に安いです。隠れコストも驚異的な安さです。運用報告書の数値を信じると、トータルコストは楽天全世界株式の半分以下です。
ベンチマークが同じなら、ごまかしの効かない基準価額データを比較することで、トータルコストの大小を推測することが可能です。が、SBI全世界株式の場合、楽天全世界株式と比較してもトータルコストの大小を推測できません。それはやってみると分かります。
隠れコストの推移
SBI全世界株式の隠れコストは第二期に大幅に削減されました。まあよくある話です。珍しくありません。そして第三期に劇的に下がりました。
第三期は売買委託手数料がゼロになりました。雪だるまシリーズの第三期はみなそうです。どうして売買委託手数料がかからないのか、SBIアセットマネジメントに電話で問い合わせたところ、予想通りの回答でした。
SBIバンガードS&P500同様に、ETFをマーケットメーカーから買っているため、売買委託手数料が発生していません。
楽天全世界株式も同じ方法で売買委託手数料をゼロにできるといいのですが、そうはなっていません。SBI・Vシリーズと楽天バンガードシリーズの比較結果からは、この売買委託手数料がゼロというのは真に受けない方が良さそうです。
SBI全世界株式と楽天全世界株式のリターン比較
次はSBI全世界株式の設定日直後を避けた、2018年1月4日から2022年2月25日までの、楽天全世界株式とのリターン比較です。
青のラインは楽天全世界株式ーSBI全世界株式です。ベンチマークが同じ商品のリターン比較と思えません。
2019年10月までは、SBI全世界株式の方がリターンが高かったです。その後、楽天全世界株式の方が有利に変わりました。これは、時期によって変わりますね。組成内容が全く違うのでそうなって当然です。
売れ行きは
次はSBI全世界株式の設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は491億円です。
いい感じで資金流入が続いています。人気が出るとラインが反り返るものです。
楽天全世界株式もプロットしました。
緑のラインが楽天全世界株式です。純資産総額は1,512億円です。楽天全世界株式はまだまだ遠い存在ですが、SBI全世界株式の人気の加速は凄いです。
SBI・V・全世界株式の登場
SBI全世界株式はFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスとは無関係な3本のETFを組み合わせた組成ですが、シンプルにVTだけに投資するようにすればいいのにとずっと思っていました。そしてSBI・Vシリーズの1商品に鞍替えするのが最善策だと期待していたのですが、SBIアセットマネジメントが出した答えは違っていました。SBI全世界株式はそのままで、VTを買うだけのSBI・V・全世界株式を新設したのです。
FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(VTが連動する指数)に投資したい人にとってはこうなります。
- SBI全世界株式は表面上のコストは安いけど中身はまがいもの
- SBI・V・全世界株式は表面上のコストはSBI全世界株式より高いものの中身は本物
評価:おすすめしません
楽天全世界株式は、原資産であるVTとのリターン比較から、その運用は安定していることが分かっています。それとのリターン差を示すラインがあのようにうねるということは、SBI全世界株式はベンチマークに忠実ではないことを証明していると言っていいでしょう。それは、組成に使っているETFの国別投資割合が、VTと同じでないことの裏返しです。
ベンチマークへの忠実度を気にしないのであれば、SBI全世界株式を選択してもいいでしょう。でも僕にはインチキくさく思えるので、おすすめしません。