2009年頃に設定された、税抜き信託報酬0.5から0.6%のインデックスファンドは、今ではすっかり高コストになってしまいました。2017年以降、MSCIコクサイ連動商品の信託報酬は0.2%以下が当たり前になりましたが、古い商品の信託報酬を引き下げるのではなくて、低コスト版のシリーズを追加したものもあります。
i-SMTシリーズもそのひとつで、SMTシリーズの低コスト版です。
i-SMTグローバル株式
2017年11月16日に税抜き信託報酬0.19%で設定されました。運用会社は三井住友トラスト・アセットマネジメントです。当時としては最安水準に近かったのですが、その後スリム先進国株式が0.1095%に引き下げ、潮目が変わりました。i-SMTグローバル株式は設定来、信託報酬を引き下げていません。
i-SMTグローバル株式はSMTグローバル株式の低コスト版です。同じマザーファンドを利用しています。eMAXIS先進国株式と、つみたて先進国株式の関係に似ています。
i-SMTグローバル株式はつみたてNISA適格です。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。スリム先進国株式と比較しています。
i-SMTグローバル株式は隠れコストが安いです。
リターン比較
SMTグローバル株式との比較
次はトータルコスト比較です。
現在、運用報告書から計算したトータルコスト差は0.34%ポイントです。
次はi-SMTグローバル株式の設定直後を避けた、2017年12月11日から2020年12月11日までの、SMTグローバル株式との比較です。
青のラインはi-SMTグローバル株式ーSMTグローバル株式です。マザーファンドが同じだけあって、ラインの形状がきれいです。
次はi-SMTグローバル株式の運用コストを年率0.33%ポイント増量したものとの比較です。
青のラインは真っ平らになりました。このことから、i-SMTグローバル株式とSMTグローバル株式のトータルコスト差は、運用報告書から計算したものに(ほぼ)一致すると言えます。
スリム先進国株式との比較
次はスリム先進国株式とのリターン比較です。スリム先進国株式が信託報酬を0.1095%に引き下げた、2018年1月30日から2020年12月11日までです。
青のラインはリターン差で、スリム先進国株式ーi-SMTグローバル株式です。右肩上がりなのは期待通りです。
現在、運用報告書から計算したトータルコスト差は0.0773%ポイントです。次はスリム先進国株式の運用コストを年率0.0773%ポイント増量したものとの比較です。
前半はいいですが、後半は増量し足りないですね。次は0.11%ポイント増量したものとの比較です。
それらしくなりました。このことから、実際のトータルコスト差は運用報告書から計算したものよりも大きいと思われます。よくある話ですが、隠れコストの計上の仕方が違うのではないでしょうか。
つみたて先進国株式との比較
つみたて先進国株式の税抜き信託報酬は0.20%で、設定来変わっていません。次はトータルコスト比較です。
計算上、つみたて先進国株式の方がトータルコストが高いです。
次はi-SMTグローバル株式の設定直後を避けた、2017年12月11日から2020年12月11日までの、つみたて先進国株式との比較です。右軸のスケールを拡大しています。
青のラインはつみたて先進国株式ーi-SMTグローバル株式です。この様子だと、トータルコストはほとんど変わらないと言っていいでしょう。
このように、運用報告書から計算したトータルコストはあてにならないことがあります。でも、基準価額データにはあらゆるコストが、運用の上手い下手も含めて反映されています。
不人気です
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は2.57億円しかありません。
資金流入は続いていますが、流入額が少なすぎます。これは厳しいですね。
高コスト版であるSMTグローバル株式もプロットしました。純資産総額は837億円もあります。
i-SMTグローバル株式は右下にへばりついています。高コスト版が(頭打ちとは言え)いまだに買われ、低コスト版が売れてないのが現実です。
ネット証券向けなの?
i-SMTグローバル株式を扱っているのは5大ネット証券を含む7社です。
- SBI証券
- 楽天証券
- マネックス証券
- auカブコム証券
- 松井証券
- SMBC日興証券
- 岡三オンライン証券
出典:Yahoo!ファイナンス
ネット証券のユーザーがi-SMTグローバル株式を選択するとは考えにくいので、つみたて先進国株式のように対面販売に力を入れた方がいいと思います。
評価:販売戦略が間違っていると思います
i-SMTグローバル株式を選択する理由はひとつもありません。現在の不人気さは商品の競争力のなさを反映したものと言っていいでしょう。
ネット証券利用者に買ってもらうには、ニッセイ外国株式やスリム先進国株式との競争するしかありませんが、今からだと難しいでしょう。だとすると、長期的には衰退確実と思われますが、対面販売に活路を見出すしかないと思われます。