未来に起こることも自分の好みの変化も正確に予見するのは不可能です。結婚生活にもそれは適用できます。数年付き合ってお互い十分理解しあった上で結婚したとしても、その後の長い結婚生活において、結婚前に予見できなかったことはたくさん起こるでしょう。だからと言って離婚して別の伴侶を探すという選択肢はそう安易にとれるものではありません。
似たようなことはインデックス投資においても起こり得ます。自分に向いているだろうと思って選択した投資対象なのに、数年後に別のものに乗り換えたいと思うことは普通にあります。その場合はやり直せばいいのです。自分のお金を自己責任で投資しているのですから、他人にとやかく言われる筋合いはありません。また、結婚生活と違って他人に気付かれることはありません。乗り換えに伴って損失が出るとか、それまで投資に費やしてきた時間が失われることを痛手に思うこともあるでしょうが、まだまだ長い先のことを考えればどうということはありません。
が、ネットの世界からはいろんな雑音が聞こえてくるものです。
- 投資方針をコロコロ変えるな
- 最初に決めた投資方針を守り抜け
- 絶対売却するな
- 特定の投資対象に集中投資するな
雑音など無視すれば良いのです。
以下、eMAXIS Slimをスリムと表記します。
ポートフォリオの変更:僕の場合
僕は2018年7月頃からスリム先進国株式に集中投資していますが、それに落ち着くまでにはそれなりの変遷がありました。
- 結い2101:2014年6月から毎月4万円を42ヶ月間、NISA口座で積み立て。その後積み立てを休止して2018年9月に全額売却。
- セゾングローバルバランスファンド:2014年6月から毎月4万円、2016年10月から月額30万円を特定口座で積み立て。2018年2月に全額売却してスリムバランス(8資産均等型)に乗り換え。
- WealthNavi:2017年12月から実験的に投資開始。得られた結果に満足したのでプラスでの売却を狙ったらマイナスで撃沈。
- スリムバランス(8資産均等型):積み立て開始後10ヶ月で全額売却。
投資対象を変更する過程で、アセットアロケーションの変更を記事にしていました。
スリム先進国株式への集中投資に落ち着くまではコロコロ変えていたとも言えます。でも僕は気持ち悪いまま(不本意ながら)投資を継続するよりは思い切って乗り換えた方が良いと思っています。その際に投資済みの投資信託を全額売却してきたのは僕の性格的なもので、損得勘定ではなくて心理的にスッキリしたかったからです。
こういうことは、自分の投資状況をブログなどで公開していない人は誰にも気兼ねなくできるはずです。でもブログで公開している人、特に投信ブロガーと呼ばれる人は少なからず抵抗感を覚えるのではないでしょうか。僕はそれをよろこんでブログ記事のネタにしてきたわけですが。
投信ブロガーRさんの決断
あえてリンクは貼りませんが、最近ある投信ブロガーの方が思い切った決断をされました。2年間続けてきたバランスファンドへの投資をやめて、米国株式インデックスファンドに集中投資されるそうです。
- 特定口座は全額売却してスリムS&P500に乗り換え。
- つみたてNISA口座は新規積み立て分をスリムS&P500に変更、既存の積み立て分はガチホ。
- iDeCo口座は楽天全米株式にスイッチ。
その決断に至った経緯や心情を説明されていますが、それなりに抵抗感はあったろうと想像します。これからの投資状況に関する記事も含め、多くの読者に有益な情報を提供できるでしょう。(読者も具体性のない精神論に終始した記事より、具体的でリアルな数字が示された経験談を読みたいと思うはずです。)
米国株式インデックスファンドへの集中投資は危険か
ネットの世界には米国株式への集中投資に否定的な物言いをする人もいます。僕は、同じ情報を伝えるのであっても表現を考えた方がいいと思いますけどね。そういう人が出す雑音は無視しましょう。
では、スリムS&P500や楽天全米株式などの米国株式インデックスファンドへの集中投資は危険でしょうか。やめておいた方がいいものでしょうか。真面目に考えてみましょう。
楽天全世界株式 vs 楽天全米株式
このブログで良く登場する偽物で比較します。次はリターン比較です。2010年年初から2019年7月末までです。
楽天全米株式の圧勝です。この10年程度の過去のパフォーマンスを見て、米国株式への集中投資に走ることを批判する論調は良く目にしますが、楽天全世界株式の約55%は米国株式です。米国株式が絶不調になれば楽天全世界株式も無事では済みません。その場合、残り45%が「世界分散」の効果を発揮することに期待するか、そんなあるかどうか分からないものよりは、過去の実績を重視して世界分散ではなくて米国株式集中投資を選ぶ道もあるはずです。僕は、世界分散も米国株式集中投資のどちらも「賭け」であり、未来を正確に予見できない以上自己責任で決めるしかないと思っています。
次は最高値からの下落率をプロットしたものです。
緑のラインが楽天全世界株式です。リーマンショック以降だと(それより前のデータはありません)下落率は楽天全世界株式より楽天全世界株式の方が大きかったのです。つまり、楽天全世界株式の受益者の方がよりビビらせられたわけです。
でも下落率はどちらも大きく、目くそ鼻くそを笑う程度の差でしかありません。
リーマンショック時の下落率
リーマンショック時の下落率を見たいですか。次はS&P500種指数をベンチマークにしているVOO(ETF)のトータルリターンの下落率です。
リーマンショック時の下落率は60%を超えています。全世界株式の同じ時期の下落率が分かるものがないので、2018年4月からデータがあるACWIトータルリターンと一緒にプロットしました。
2018年4月にはもう下落が始まっていましたが、ACWIトータルリターンも大差ないだけ下落しています。
次はMSCIコクサイをベンチマークにしている日興インデックスファンド海外株式との比較です。2007年からです。
最大下落率はIVVトータルリターンのそれを超えています。これも目くそ鼻くそですが。
この感じだと株式100%のインデックスファンドはリーマンショック時にはどれも同程度ビビらせられるだけ大きく下落したと言えそうです。
セゾングローバルバランスファンド
株式と債券の比率が50:50のセゾングローバルバランスファンドだとどうでしょうか。
債券は値動きの幅が株式より小さいので、リーマンショック時の下落率は40%程度です。でも、変動率の高さを許容する代わりにリターンを求めるのですから、この特性は理解できています。そして次の記事に書いたように、ある程度の期間保有すれば、小規模な株価調整ではバランスファンドに負けなくなることがわかっています。
結論:ポートフォリオの変更は普通です
インデックス投資は結婚生活ではないので、ポートフォリオ(伴侶)を変更するのは普通です。
- 自分の納得の行く選択を自分ですれば良いです。
- その際、雑音は無視しましょう。有益な情報は取り込みましょう。
- 一発で後悔のない投資方法を選択できる人の方が稀だと思います。変更したくなったら変更すれば良いのです。
- でも最終形態にたどり着けてから十分長い年数の投資期間は欲しいですね。
また、集中投資か分散投資かよりも、生活防衛資金としての非リスク資産(預貯金や国債)の確保の方がよっぽど大事だと思います。
それでも僕は
この記事が、僕がスリム先進国株式からスリムS&P500に乗り換える布石だと思った方、残念でした、ハズレです。それでも僕はスリム先進国株式への集中投資を継続します。結果的にはスリムS&P500に乗り換えるか、新規投資をスリムS&P500に切り替えた方が有利という気がしています。ですが、MSCIコクサイのパフォーマンスは十分高いことが分かっており、よりリスクの高いスリムS&P500を選ばなくて良いと思っています。
これは自分の好みであり、論理的に説明できないものです。新興国株式や国内株式に投資しても自分の存命中に報われる気はしないのに、日本を除く先進国株式への投資は報われる気がするのです。この選択が良かったか悪かったかを振り返れる日は、おそらく、10年以内にやってくるはずです。