全世界株式

スリム全世界株式(除く日本)の運用コストと評価

かつて日本で全世界株式と言うと、日本を除いた先進国株式+新興国株式のことを指しました。たとえば2010年に設定されたeMAXIS全世界株式がそうです。これのスリム版が、スリム全世界株式(除く日本)です。

スリム全世界株式(除く日本)のベンチマークはMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本)です。先進国株式と新興国株式の現在の比率は、88:12ですが、これは時価総額比で変わります。スリム先進国株式に加えて新興国株式にも投資したい、でも国内株式は要らないという人にはちょうどいい選択肢になります。

更新情報

参照しているデータを最新版に更新しています。

スリム全世界株式(除く日本)

2018年3月19日に設定されました。スリムシリーズの第一弾が設定されたのが2017年2月27日だったので、約13ヶ月遅れての登場となりました。税抜き信託報酬0.142%で設定されましたが、その後2回引き下げています。すべて同率への対抗値下げですが、どちらも対抗したのは日本を含む全世界株式インデックスでした。次はその履歴をまとめた表です。

スリム全世界株式(除く日本)の信託報酬引き下げ履歴表

三菱UFJ国際投信は、スリムシリーズの全世界株式3兄弟(除く日本、3地域均等型、オール・カントリー)の信託報酬を同じにしており、他社の「全世界株式インデックス」に対抗する時はまとめて値下げしています。

なおiDeCoナビによると、SBI証券のセレクトプランと松井証券のiDeCo口座で扱われています。

組成内容

スリム全世界株式(除く日本)のベンチマークはMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本)ですが、これはMSCIコクサイとMSCIエマージング・マーケットから構成されています。

スリム全世界株式(除く日本)の組成の説明図

引用:目論見書

乱暴な表現をすると、スリム先進国株式とスリム新興国株式をベンチマークを指定する比率でリバランスするのがスリム全世界株式(除く日本)です。

意味のない受益者還元型信託報酬制度

スリムシリーズは純資産総額が500億円、1,000億円を超えると信託報酬が漸減される「受益者還元型信託報酬制度」を採用しています。ところが信託報酬の引き下げに応じて漸減率が改定された結果、実質的な意味のないものになってしまいました。

受益者還元型信託報酬制度の表

漸減率が小さすぎて、現実の世界ではその恩恵を実感するのは無理です。ただし、スリム全世界株式(除く日本)の純資産総額が500億円、1,000億円を超えるとこの制度の存在が話題になり、たとえ実質的な効果がなくても、それが「宣伝効果」を生み、さらに人気を押し上げる可能性があります。マーケティング戦略としては優れていますね。

次は信託報酬が漸減される様子を示したグラフです。純資産総額が500億円を超えると減り始め、1,000億円を超えると減り方が変わります。右端は2,000億円ですが、それだけ増えても0.1034%程度ですから、たったの0.0006%ポイントしか減りません。

スリム全世界株式(除く日本)の信託報酬が漸減される様子を示したグラフ

現在の純資産総額は赤丸の位置で、税抜き信託報酬は0.1036%です。競合商品との比較で、メリットのひとつとして宣伝されるかも知れませんが、実質的な効果は期待できません。

運用コスト=信託報酬+隠れコスト

運用コスト(トータルコスト)は信託報酬と隠れコストの合計です。次は運用報告書から計算したトータルコストです。

スリム全世界株式(除く日本)のトータルコスト表

税込み0.1786%は、運用報告書の数値を信じるなら、素晴らしい低水準です。

第三期決算期間の隠れコストは、第二期よりも削減されています。

トータルコストの第二期、第三期の比較表

0.029%ポイント削減されました。これ、受益者還元型信託報酬制度の効果よりよっぽどメリットがあります。

リターン比較

ベンチマークが同じ商品と比較します。

eMAXIS全世界株式との比較

次はスリム全世界株式(除く日本)の税抜き信託報酬が0.104%になった、2019年11月12日から2022年4月22日までの、eMAXIS全世界株式とのリターン比較です。

スリム全世界株式(除く日本)とeMAXIS全世界株式とのリターン比較グラフ、2019年11月12日から

青のラインの傾きはトータルコスト差を示しています。マザーファンドが同じなので美しい、弓なりに曲がった直線です。

次はスリム全世界株式(除く日本)の運用コストを年率0.54%ポイント増量したものとの比較です。

スリム全世界株式(除く日本)の運用コストを年率0.54%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインは真っ平らになりました。これは運用報告書から計算したトータルコスト差に符合するので、リターン差は期待通りです。

野村つみたて外国株投信との比較

次はスリム全世界株式(除く日本)の運用が安定した2018年4月16日から、2022年4月22日までの、野村つみたて外国株投信とのリターン比較です。

スリム全世界株式(除く日本)と野村つみたて外国株投信のリターン比較グラフ

青のラインはスリム全世界株式(除く日本)ー野村つみたて外国株投信です。スリム全世界株式(除く日本)の方が低コストなので、右肩上がりで推移しています。なお、コロナショック時に青のラインがヘタっているのは想定通りです。

Fund of the Yearの順位

日本を除く全世界株式インデックスは、決して不人気なジャンルではないものの、人気投票で上位にランクインするのは難しいようです。次はeMAXIS全世界株式と、スリム全世界株式(除く日本)の、Fund of the Yearの順位です。スリム全世界株式(除く日本)は2018年度から対象です。

eMAXIS全世界株式と、スリム全世界株式(除く日本)の、Fund of the Yearの順位表

売れています

次はスリム全世界株式(除く日本)の設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は1,359億円です。

スリム全世界株式(除く日本)の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

ラインの反り返りから、人気が加速していることが分かります。

eMAXIS全世界株式もプロットしました。純資産総額は190億円です。

eMAXIS全世界株式とスリム全世界株式(除く日本)の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

信託報酬が数世代前の、今ではかなり高額に感じる水準なので、新規投資するならスリム全世界株式(除く日本)にすべきです。それでもまだ、少ないながらもeMAXIS全世界株式が買われている事実には驚きしかありません。

次はかつて良きライバルだった野村つみたて外国株投信との比較です。純資産総額は559億円です。

スリム全世界株式(除く日本)と野村つみたて外国株投信の資金流出入額の累計の推移グラフ

緑のラインが野村つみたて外国株投信です。安定して売れていますが、ある時期からスリム全世界株式(除く日本)に大きく差を付けられています。

スリム全世界株式(除く日本)は、スリム米国株式(S&P500)やオール・カントリーにはかないませんが、全世界株式インデックスの中では売れています。選択肢が限られている、除く日本の中では一番人気です。

評価:スリム全世界株式(除く日本)一択でいい

日本を除く全世界株式に投資する場合、スリムシリーズが嫌いでなければ、スリム全世界株式(除く日本)一択でいいです。トータルコスト、純資産総額(人気)で考えるとそうなります。この結論がしっくり来ない人は、スリムシリーズが好きではないのだと思います。

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