先進国株式

ニッセイ外国株式の運用コストと評価

先進国株式インデックスは人気のジャンルで、つみたてNISA適格商品だけで17本もあります。そのうち16本は、日本を除く先進国に投資するMSCIコクサイをベンチマークにしています。

ニッセイ外国株式は長年、先進国株式インデックスの王者に君臨しています。圧倒的な純資産総額(人気)を誇っており、あのスリム先進国株式でさえ追い付くのは容易ではありません。そしてトータルコストもスリム先進国株式と変わりません。

ニッセイ外国株式の信託報酬引き下げ履歴

ニッセイ外国株式はこれまで信託報酬を6回引き下げています。うち4回は他社に先行した、業界最安水準への引き下げでした。(発表時ベースです。スリム先進国株式に先を越されたこともありました。)

次はその履歴をまとめた表です。

ニッセイ外国株式の信託報酬引き下げ履歴表

ニッセイ外国株式とスリム先進国株式は、熾烈な信託報酬引き下げ競争を続けています。スリム先進国株式は決して自発的信託報酬を引き下げることはなく、いつも他社商品に同率での対抗でした。ニッセイ外国株式が業界最安水準に単独で引き下げでも、(これまでは)スリム先進国株式が対抗して同率に引き下げて来ました。

直近で0.0999%から0.0930%に引き下げましたが、その程度であればスリム先進国株式が追従(対抗)するのは十分想定できたはずです。それでも他社に先駆けて引き下げたのは、ニッセイ外国株式の人気にテコ入れしたかったからかも知れません。

純資産総額は圧倒的でも追われる立場は苦しい?

次はニッセイ外国株式とスリム先進国株式の、設定来の資金流出入額の累計の推移です。ニッセイ外国株式の純資産総額は1,599億円、スリム先進国株式は935億円です。

ニッセイ外国株式とスリム先進国株式の、設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

赤のラインがニッセイ外国株式、緑のラインがスリム先進国株式です。ニッセイ外国株式は赤の矢印の位置で資金増加ペースが明らかに落ちました。その理由は想像するしかないわけですが、人気の衰えによるものと言ってもいいでしょう。

相関関係は不明ですが、黄色に塗っている、税抜き0.0930%への引き下げ発表後は回復傾向です。(でも、株価暴落時期と重なっているので、回復傾向に見えるのは暴落時の買い増しが理由かも知れません。)

グラフを俯瞰すると、ラインの形状から分かるように、ニッセイ外国株式の人気は圧倒的で、現状のままだとスリム先進国株式がニッセイ外国株式に追い付ける気がしません。でも、ニッセイ外国株式が税抜き0.0930%に引き下げてからの資金流出入額はスリム先進国株式の方がわずかに多かったです。

  • ニッセイ外国株式:188.55億円
  • スリム先進国株式:195.31億円

スリム先進国株式の受益者還元型信託報酬制度は無視していいです

スリム先進国株式は純資産総額が500億円、1,000億円を超えると、超えた部分について信託報酬が漸減される「受益者還元型信託報酬制度」を採用しています。

受益者還元型信託報酬制度の表

ニッセイ外国株式は同様の制度を採用していませんが、気にすることはありません。スリム先進国株式は信託報酬を引き下げる都度、この漸減率が圧縮されてしまい、現在はほぼ効果が期待できない水準です。ないよりマシなのは確かですが、商品選択の理由にするほどの価値はないでしょう。(販売戦略上は有効だと思います。)

それより、隠れコストの低減化、安定した運用の方が重要です。

運用コスト

次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。スリム先進国株式と比較しています。

運用報告書から計算したトータルコスト表

インデックスファンドのコストは信託報酬だけでなく、「隠れコスト」と呼ばれる、信託報酬以外のコストに注意する必要があります。隠れコストが期待外れに高い商品は普通に存在します。

ニッセイ外国株式の、運用報告書から計算した隠れコストはスリム先進国株式より小さく優秀です。が、運用報告書に書かれる数値はあてにならないことが多く、この数値は参考程度にしかなりません。実際には、ごまかしの効かない基準価額データを見て、トータルコストの大小を推測します。

リターン比較結果から分かること

次はニッセイ外国株式とスリム先進国株式の税抜き信託報酬が0.0999%で並んだ、2019年6月27日から2020年5月15日までのリターン比較です。

ニッセイ外国株式とスリム先進国株式の2019年6月27日から2020年5月15日までのリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、ニッセイ外国株式ースリム先進国株式です。マイナス圏にいることが多いので、この比較期間ではスリム先進国株式の方がリターンが高いと言えますが、優劣を付けるほどではありません。変動していますが、ほぼ0.05%ポイントの範囲に収まっています。

トータルコストに明らかな差がある場合、ニッセイ外国株式とスリム先進国株式の比較なら、青のラインは明確な傾きを持ちます。

次は同じ期間における、ニッセイ外国株式と、税抜き信託報酬が0.2%のつみたて先進国株式とのリターン比較です。グラフのスケールは同じです。

ニッセイ外国株式と、税抜き信託報酬が0.2%のつみたて先進国株式とのリターン比較グラフ

黄色に塗った期間は基準価額が上昇傾向なので、リターン差はトータルコストを素直に反映したものになります。青のラインはほぼ右肩上がりですよね。その傾きが、トータルコスト差を示しています。

リターン差を示すラインが常時直線にならない理由については、次の記事で解説しています。

僕の印象としては、トータルコスト(信託報酬+隠れコスト)にほとんど差がないため、変動する隠れコストや運用上の要因によってリターン差が変化するように思えます。明確な差が生まれるとしても、それには時間がかかるのではないでしょうか。

ニッセイ外国株式は運用に不安があります

インデックスファンドはベンチマークに忠実な運用が求められます。基準価額がベンチマークから大きく外れることを「乖離」と言います。どんなインデックスファンドだって乖離を起こす可能性はあるのですが、ニッセイ外国株式は目立つ規模の乖離を2回起こしており、運用に不安があると言われてしまっています。ニッセイ外国株式の強固なファンは、それを許容しているのでしょう。

乖離の話はいいやって方は、ここまで飛ばして下さい。

過去2回起きた下方乖離

ニッセイ外国株式は、過去2回下方乖離を起こしています。ニッセイ外国株式の暗い過去です。

次はニッセイ外国株式が設定日直後を避けた2014年年初からの、eMAXIS先進国株式とのリターン比較です。

ニッセイ外国株式とeMAXIS先進国株式のリターン比較グラフ

青のラインはニッセイ外国株式ーeMAXIS先進国株式です。eMAXIS先進国株式の方がトータルコストが高いので、青のラインは右肩上がりで推移します。

が、ニッセイ外国株式は赤の矢印の位置で下方乖離を起こしています。問題を起こしたのはeMAXIS先進国株式の方ではないのか、と思われるかも知れませんが、そうではありません。

次は同じ比較を、Funds-i 外国株式で行ったものです。

ニッセイ外国株式とFunds-i 外国株式のリターン比較グラフ

青のラインの傾きは変わりましたが、2回の下方乖離はそのまま観測されています。

初回の下方乖離

拡大したグラフを切り出しています。控えめに見てこれぐらい下方乖離したという量を示しています。

初回の下方乖離の拡大したグラフを切り出し

縦軸のスケールはひとマスが0.2%なので、0.23%下方乖離したと判断しました。つまり、ここでリターンが0.23%劣化しました。そして、この下方乖離で生じた損失は回復できていません。失われたままです。

2回目の下方乖離

次は2回目です。僕が示した量は控えめだと思います。

2回目の下方乖離の拡大したグラフを切り出し

縦軸のスケールはひとマスが0.2%なので、0.22%下方乖離したと判断しました。つまり、ここでリターンが0.22%劣化しました。そして、この下方乖離で生じた損失も回復できていません。失われたままです。

このヒゲは何?

過去2回の下方乖離以外に、気になるヒゲがありました。赤の矢印の位置です。

過去2回の下方乖離以外の気になるヒゲ

次はヒゲ周辺を拡大したものです。2018年2月です。

ヒゲ周辺を拡大したグラフ

0.2%ポイントの幅で上下に変動しています。これは過去2回の下方乖離と違って、ずっとリターンが失われた状態になったわけではないですが、好ましくないことは確かです。

僕が調べた他のMSCIコクサイ連動商品では、この時に同じ問題を起こしたものはありませんでした。が、この程度のヒゲは、そう珍しくもありませんから、あまり目くじらを立てない方がいいでしょう。

上方乖離

ニッセイ外国株式は2020年6月1日に上方乖離を起こしました。同じベンチマークの他の商品と比較した、多数決による判断ですが、そう断言しても問題ないでしょう。

次はニッセイ外国株式とスリム先進国株式のリターン比較です。比較期間は2020年4月1日から6月5日です。

2020年4月1日から6月5日のニッセイ外国株式とスリム先進国株式のリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、ニッセイ外国株式ースリム先進国株式です。赤丸を付けたところで青のラインが跳ね上がっています。リターン差は理由もなくこういう動きになりません。これはニッセイ外国株式のリターンが上振れしたことを意味します。

スリム先進国株式の基準価額の推移がベンチマークのそれに近いとするなら、ニッセイ外国株式が上方乖離を起こしたということです。

次は同じ比較をたわら先進国株式とした結果です。

2020年4月1日から6月5日のニッセイ外国株式とたわら先進国株式のリターン比較グラフ

同じように跳ね上がっています。

次は同じ比較をiFree外国株式とした結果です。

2020年4月1日から6月5日のニッセイ外国株式とiFree外国株式のリターン比較グラフ

ここにはあげていない他の商品との比較結果からも、ニッセイ外国株式が上方乖離を起こしたのは確実です。その大きさは約0.1%ポイントです。これをたったのそれだけと思うか、1年分の信託報酬に相当すると思うかは、受益者次第です。

え、上方乖離なら損していないからいいんじゃね?ですか。でもインデックスファンドはベンチマークに忠実であってナンボです。上方乖離を起こすということは、下方乖離だって起こすということです。あくまでベンチマークに忠実で、ベンチマークとの差は運用コスト分だけ、それも低コストなので小さい、がいいのです。

気にするかどうかは受益者次第

ニッセイ外国株式が過去2回、下方乖離を起こしたことは間違いありません。運用上の問題が原因でしょう。他の商品にも散見される事象なので、スリム先進国株式だっていつか起こすかも知れません。ですから、過去に起きた下方乖離を理由に、ニッセイ外国株式を敬遠するか、他の良いところを評価して許容するかは受益者次第です。

特に2回目の下方乖離はネット上で騒ぎになりましたが、ニッセイ外国株式の人気に大きな変化はありませんでした。おそらく上方乖離は騒ぎにならないで終わることでしょう。

Fund of the Yearの順位

ニッセイ外国株式はFund of the Yearの投票対象になった、2014年度から3年連続で1位でした。2017年度から投票対象になった、スリム先進国株式も併記しています。

Fund of the Yearの順位表

Fund of the Yearはごく限られた投資家の投票結果に過ぎませんが、ニッセイ外国株式の人気の高さ、盤石さが良く分かります。2019年度に順位を落としたのは、オール・カントリーとスリム米国株式(S&P500)の躍進によるものです。

なお、2017年度のスリム先進国株式が13位だったというのは、最近投資を始めた人には驚きかも知れませんね。スリム先進国株式は、信託報酬を税抜き1.095%に引き下げる前は不人気だったのです。

絶対王者ですら儲かっていません

信託報酬はとんでもなく安く、運用会社(委託会社)の取り分はさらに少なく、バンガード社の激安ETFの経費率程度でしかありません。このたとえは不適当かも知れませんが、絶対王者ですら儲かっていません。

次の表は現在の純資産総額から得られる年間売上を示したものです。スリム先進国株式の受益者還元型信託報酬制度を考慮しています。

信託報酬は同じですが、運用会社の取り分は微妙に異なります。ニッセイ外国株式ですら、売上は0.56億円しかありません。一桁足りないですね。

参考までに、バランスファンドの絶対王者である、セゾングローバルバランスは、純資産総額ではなくて信託報酬からの取り分が一桁大きいです。

セゾングローバルバランスの売上表

評価:先進国株式ならニッセイ外国株式かスリム先進国株式の二択

MSCIコクサイに連動する先進国株式インデックスなら、ニッセイ外国株式かスリム先進国株式の二択でいいでしょう。え、たわら先進国株式ですか?純資産総額の伸び率が低く、競争力の原資となる売上を考えると、積極的に選択肢に上げる気になれません。(たわら先進国株式が好きな人は選択すれば良いと思います。)

ニッセイ外国株式の過去の下方乖離は気になりますが、どんな商品だって起こす可能性はあるので、過度に気にすることはないでしょう。それより、設定来の取り組み姿勢、受益者に向き合って来た実績を評価したいです。

我が家はスリム先進国株式に集中投資していますが、スリム先進国株式の受益者にとって、ニッセイ外国株式という絶対王者、究極のライバル、非常に高い目標はプラスに作用するはずです。この2商品には、隠れコストの低減化、運用のさらなる安定化に努めて欲しいです。

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