米国株式に投資するのに、楽天全米株式とスリム米国株式(S&P500)のどちらが良いか迷っている人も少なくないと思います。信託報酬、トータルコストは異なりますが、そもそもベンチマークが違うので、コストと人気だけでは判断できません。
この難しい悩みを解消する比較結果をまるっとお見せします。
更新情報
参照しているデータを最新版に更新しています。
楽天全米株式
楽天全米株式はバンガード社のETFであるVTIを買うだけのインデックスファンドです。VTIのベンチマークはCRSP USトータル・マーケット・インデックスです。楽天全米株式は米国でVTIを買い付け、配当金を米国での10%課税後に国内課税を適用しないで再投資します。そして毎営業日、楽天全米株式固有の運用コストを純資産総額から天引きします。
楽天全米株式の現在のトータルコスト(VTIの経費率を含みます)は、税込み0.187%です。低水準で運用も安定しており、人気も盤石で安心しておすすめできます。
なお、楽天全米株式は楽天全世界株式と違い(投資対象国が米国だけなので)三重課税問題はありません。
スリム米国株式(S&P500)
スリム米国株式のベンチマークはS&P500種指数で、現物株運用です。複数ある、S&P500種指数をベンチマークにしているETFとは無関係です。
スリム米国株式の現在のトータルコストは税込み0.1229%です。運用は安定していますし、人気は圧倒的です。
トータルコストはスリム米国株式(S&P500)の方が安いのですが、楽天全米株式とはベンチマークが違うので、コストだけでは優劣を判断できません。
投資対象
組入銘柄数は大きく違っています。
- 楽天全米株式:4,109、米国株式市場の大型株から小型株までを網羅し、投資可能銘柄のほぼ100%をカバー。
- スリム米国株式(S&P500):505、米国株式市場の大型株を対象とし投資可能銘柄の約80%をカバー。
楽天全世界株式の方が圧倒的に多くの銘柄に投資します。
VTIとVOOの組入銘柄比較
ETF.comからVTIとVOO(S&P500種指数に連動するETF)の組入銘柄一覧を取得して比較しました。
- VTIの中にはVOOがほぼ丸ごと入っています。VOOのみが投資しているのは6銘柄です。
- VTIの投資対象の83.7%がVOOです。言い換えるとVTIは資産の16.3%をVOO以外の銘柄に投資します。
次は組入銘柄上位40位までを比較した表です。右端の列はVOOーVTIです。
結構違いますね。
近年はGAFAMと呼ばれるGoogle、Amazon、Facebook(Meta)、Apple、Microsoftの成長が著しく、S&P500の株価の伸びはそれら5銘柄の貢献度が突出していると言われます。では、それら5銘柄に話題のテスラとNVIDAを加えた7銘柄だけを見ます。(GoogleはAlphabet2銘柄に分かれています。)
VTIの方がより多くの銘柄に分散投資するため、当然の結果として主力7銘柄の比率もVOOより少なくなります。株式市場を牽引している「売れ筋」銘柄への投資比率が少いと聞いてがっかりですか?いやいや、そんな単純な話ではありません。
VTIとVOOのどちらがパフォーマンスが良くなるかは時期によって変わります。この組入銘柄数(=分散の度合い)の違いは、好みが分かれるところでしょう。
なお、VOOだけが投資している銘柄一覧も載せておきます。
VTIとVOOのトータルリターン比較
どちらもバンガード社のETFで、現在の経費率は0.03%で同じです。配当金を再投資したトータルリターンを比較すると、ベンチマークの違いを把握できるはずです。
次はVOOの設定直後を避けた2010年10月1日から2022年3月31日までの比較です。
赤のラインがVTIトータルリターン、緑のラインがVOOトータルリターンです。青のラインはリターン差で、VTIーVOOです。
どちらが有利かは経済状況、時期によって変わります。また、リターン比較は比較期間によって印象が大きく変わります。
次は2020年年初からの比較です。
このように違いはあるものの、長期で見れば互角という評価がいいと思います。
リターン比較結果が納得できない方へ
上記2パターンのリターン比較結果が納得できない方もそこそこいると思われます。そんな方におすすめの、目からウロコかも知れない開設記事です。
楽天全米株式とスリム米国株式(S&P500)の比較
次は楽天全米株式とスリム米国株式(S&P500)のリターン比較です。スリム米国株式の設定直後を避けた、2018年7月20日から2022年3月31日までです。
赤のラインがスリム米国株式です。青のラインはスリム米国株式ー楽天全米株式です。スリム米国株式の方がパフォーマンスが高い状態が続いていましたが、コロナショックによる株価暴落後は互角から楽天全米株式の有利に変化しました。が、2021年2月以降はスリム米国株式が盛り返しています。
この2商品のパフォーマンス差は気にしなくていいと思います。
人気は
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は楽天全米株式が5,608億円、スリム米国株式が11,804億円です。
赤のラインが楽天全米株式、緑のラインがスリム米国株式です。長らく一定の差が開いた状態が続きましたが、2020年になってからスリム米国株式が資金流入額を急激に増やしました。
どちらもラインの反り返り具合から、人気が加速していることが分かります。楽天全米株式の人気は盤石ですが、スリム米国株式の人気は楽天全米株式を大きく上回っています。
それで結論としてはどちらがおすすめなの?
上から順に読んで、決まったらそこで終わりです。その先を読むと迷います。
- VTIまたは楽天VTIという単語に心がときめくなら、楽天全米株式で決まりです。
- 「業界最低水準の信託報酬を目指し続ける」という売り文句が強みのスリムシリーズが好きなら、スリム米国株式で決まりです。
- どちらかのベンチマークに好き嫌いがあるなら、好きな方を選んで下さい。
- ベンチマークに大差はないから、運用コストが安い方が良いという場合は、スリム米国株式をおすすめします。
迷いは解消されたでしょうか。
なお、iDeCoナビによるとiDeCoで楽天全米株式が買えるのは楽天証券と松井証券、スリム米国株式(S&P500)が買えるのはSBI証券のセレクトプラン、松井証券、マネックス証券です。
SBI・V・全米株式もあります
SBI・V・全米株式はローコストで素晴らしい商品ですが、そのトータルコストは信託報酬の安さから期待したほどではありません。現実のトータルコストは楽天全米株式と同等です。が、いずれ楽天全米株式より低コストな運用ができるようになると思っています。