先進国株式

スリム先進国株式の運用コストと評価

先進国株式インデックスに投資する場合、スリムシリーズが嫌いでなければスリム先進国株式がおすすめです。スリムシリーズが嫌いなら、ニッセイ外国株式かたわら先進国株式がいいでしょう。これら以外の商品は無視していいです。

 

更新情報

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スリム先進国株式の信託報酬引き下げ履歴

スリム先進国株式はこれまで信託報酬を7回引き下げています。すべて同率への対抗値下げです。次はその履歴をまとめた表です。

現在、スリム先進国株式とニッセイ外国株式が、税抜き信託報酬0.0930%で、先進国株式インデックスファンドで最安です。たわら先進国株式はそれよりわずかに高く0.0999%です。

よって、信託報酬で言うと、スリム先進国株式はニッセイ外国株式と並んで業界最安です。え、野村スリーゼロ先進国株式投信を忘れている?忘れてはいませんよ。長期投資を真面目に考えるなら、野村スリーゼロ先進国株式投信のような不誠実な商品とは関わらない方がいいです。

受益者還元型信託報酬制度

スリムシリーズは純資産総額が500億円、1,000億円を超えると信託報酬が漸減される「受益者還元型信託報酬制度」を採用しています。でもその漸減率は小さいです。(商品によって異なります。)

受益者還元型信託報酬制度の表

信託報酬が安すぎるため、受益者にさらに還元するだけの原資が確保できないということでしょう。

次は信託報酬が漸減される様子を示したグラフです。純資産総額が500億円までは0.0930%、500億円を超えると減り始め、1,000億円を超えると減り方が変わります。右端は5,000億円ですが、それだけ増えても0.0904%程度ですから、たったの0.0026%ポイントしか減りません。

スリム先進国株式の信託報酬が漸減される様子を示したグラフ

現在の純資産総額は赤丸の位置で、税抜き信託報酬は0.0905%です。0.0930%から減ってはいますが、小さすぎて隠れコストのちょっとした差で消えてしまうレベルです。

運用コスト=信託報酬+隠れコスト

次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。税込み信託報酬は、運用報告書にある受益者還元型信託報酬制度が適用されたものを採用しています。

スリム先進国株式の運用報告書から計算したトータルコスト表

隠れコストは低水準です。次は第三期以降のトータルコスト表です。

トータルコストの第三期から五期の比較表

スリムシリーズの宣伝文句には「業界最低水準の運用コストを、将来にわたってめざし続ける ファンド」とあります。「信託報酬」ではなくて「運用コスト」としていることの解釈はいろいろできるのですが、実際のところ、信託報酬だけではなくて隠れコストも見る必要があります。

俗に「隠れコスト」と言われるのは、運用報告書に書かれている信託報酬以外の費用を指します。売買委託手数料、有価証券取引税、保管費用、監査費用などですが、困ったことに公開ルールが決まっていません。そのため、運用会社が違う商品の運用報告書にある数値を、同じ土俵で比較することができないのが実情です。

一方、ごまかしの効かない基準価額データには、運用の上手・下手も含めてすべてのコストが反映されています。そのため、基準価額データを比較することで、運用コストの大小を推測します。ただしこの手法を使うには、次の条件を満たす必要があります。

  • ベンチマークが同じであること。
  • 運用がベンチマークに忠実であること。
  • 分配金を出していないこと。

2番目が厄介ですが、リターン差をグラフで見るとおおむね分かります。ある日とある日の基準価額の差(騰落率)を比較する方法だと、解釈を間違えます。

リターン比較

2019年10月1日から2022年9月9日までの比較です。

スリム先進国株式とニッセイ外国株式のリターン比較

次はスリム先進国株式とニッセイ外国株式のリターン比較です。

スリム先進国株式とニッセイ外国株式のリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、スリム先進国株式ーニッセイ外国株式です。マイナス圏、プラス圏の両方を推移していますが、ほぼプラスマイナス0.05%ポイントの範囲に収まっていました。が、直近は差が開きかけています。この傾向が続くかどうかは未来にならないと分かりません。

この比較結果から、(直近を除くと)スリム先進国株式とニッセイ外国株式のトータルコストはほぼ同じだと推測します。

スリム先進国株式とたわら先進国株式のリターン比較

次はスリム先進国株式とたわら先進国株式のリターン比較です。

スリム先進国株式とたわら先進国株式のリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、スリム先進国株式ーたわら先進国株式です。ニッセイ外国株式との比較にそっくりです。

この比較結果から、(直近を除くと)スリム先進国株式とたわら先進国株式のトータルコストはほぼ同じだと推測します。

3商品の実際のトータルコストに差はなかったのが現実

運用報告書から計算したトータルコストには差がありますが、ごまかしの効かない基準価額データには明確な差はありませんでした。ただし、直近ではスリム先進国株式のトータルコストが下がっているように見えます。

この現状も踏まえて、好きな商品を選択すればいいわけですが、スリム先進国株式に大きな欠点はないので、超ローコストインデックスシリーズで圧倒的な人気(純資産総額)を誇るスリムシリーズを選択しておけば良いと思っています。スリムシリーズが嫌いでなければ、ですが。

上方乖離を起こしました

次はスリム先進国株式とニッセイ外国株式の、2022年3月1日から4月8日までのリターン比較です。

スリム先進国株式とニッセイ外国株式の、2022年3月1日から4月8日までのリターン比較グラフ

4月6日に大きなトゲができています。MSCIコクサイをベンチマークにしている商品を7本程度確認しましたが、このトゲはスリム先進国株式(と同じマザーファンドを利用した商品)特有のものでした。多数決で判断すると「上方乖離」を起こしていたことになります。

これについて三菱UFJ国際投信に問い合わせたところ、次の回答をもらいました。

  • この基準価額の変動については承知しています。
  • 詳細は公表できないものの、資産計上のタイミングがベンチマークの指示と違ってしまうことがまれにあり、その結果こうなってしまった。
  • (NEOシリーズで過去にあったような)基準価額の算出ミスではない。

乖離を起こすと元に戻らないことが多いのですが(ニッセイ外国株式は乖離後しばらくしてから元に戻したことがありました)、このように翌日に戻すこともあるのですね。

Fund of the Yearの順位

ニッセイ外国株式はFund of the Yearの投票対象になった、2014年度から3年連続で1位でした。スリム先進国株式は2018年度、2019年度はニッセイ外国株式といい勝負でしたが、2020年度は順位を大きく落としてしまいました。

Fund of the Yearの順位表

Fund of the Yearはごく限られた投資家の投票結果に過ぎませんが、ニッセイ外国株式の人気の高さ、盤石さが良く分かります。

スリム先進国株式は、信託報酬を税抜き1.095%に引き下げる前は不人気で、2017年度は13位でした。2018年度、2019年度は納得の結果でしたが、2020年度に7位まで落としたのには驚きました。

売れ行きは

次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は3,755億円です。

スリム先進国株式の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

安定した資金流入が続いています。次はニッセイ外国株式とたわら先進国株式もプロットしたものです。純資産総額はそれぞれ4,339億円2,290億円です。

ニッセイ外国株式とたわら先進国株式もプロットしたグラフ

緑のラインがニッセイ外国株式、青のラインがたわら先進国株式です。資金流出入額だとニッセイ外国株式の背中が見えてきました。この傾向が続くなら、いずれ純資産総額でもニッセイ外国株式を抜けます。

評価:業界最低水準の運用コストと高い人気でおすすめできます

僕はスリム先進国株式に集中投資していますので、高評価になるのは当然です。いや、無理しているわけではありません。

  • これまでの運用実績
  • 信託報酬引き下げに積極的な姿勢
  • 低い隠れコスト
  • 高い人気

おすすめできる条件が満たされてます。

この記事を読んでなお、スリム先進国株式以外が良いと思われるのなら、その判断(気持ち)を優先するのがいいでしょう。

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