5大ネット証券は投資信託の保有残高に応じてポイントを付与するサービスを実施中です。楽天証券のポイントサービスは「ハッピープログラム」と呼ばれます。スリムシリーズのような超ローコスト投信が投資対象の場合、一時は楽天証券の圧勝でしたが、その出血大サービスが立て続けに変更され、ついに(事実上)終了することになりました。
更新情報
ポイント付与制度の変更内容を反映させました。
終了前のハッピープログラム
まず現時点のハッピープログラムについて説明します。それはいいやって方はここまで飛ばして下さい。
楽天銀行と楽天証券の口座連携サービス「マネーブリッジ」を利用し、「楽天銀行ハッピープログラム」に登録するとこのサービスを受けられます。あとは好きな投資信託を保有するだけです。毎月自動的に楽天スーパーポイントが付与されるものです。
ポイント付与率
従来は、商品の信託報酬に関わらず、保有資産10万円ごとに毎月4ポイントが付与されていました。10万円未満の端数を無視すると、年率0.048%でした。信託報酬のうち、楽天証券の取り分からポイント付与率を引くと、マイナスになるものもたくさんありました。そしてついに、2021年8月1日より、楽天証券の取り分に応じてポイント付与率が変わる仕組みに変更されます。
引用:楽天証券
これまでは4ポイント固定でした。高コストファンドは増えますが、超ローコストファンド7銘柄は3ポイントに削減されます。対象外となった3銘柄は雪だるまシリーズです。なお、楽天証券ではSBI・Vシリーズを扱っていませんが、扱う際にはポイント付与の対象外となります。
次は主な超ローコストインデックスファンドのポイント付与率です。付与率が下がった7本と、対象外になった3本のセルをオレンジにしています。
ポイント付与対象外を除くと、ローコスト商品に関しては10万円ごとに4または3ポイントです。iDeCo口座以外の口座にある、投資信託の評価額の合計を元にポイントが計算されます。
従来は信託報酬のうち、楽天証券の取り分からポイント付与率を引くと、マイナスになるものがたくさんありました。今回それら商品のポイント付与率が下がりました。
次は主な超ローコストインデックスファンドの、楽天証券の取り分とポイント考慮後です。
スリム米国株式(S&P500)はまだ赤字ですね。赤字でないものも、販売会社の取り分とポイント付与率だけを考えると、ビジネスとしては厳しいのが実情でしょう。(競争相手がいなくなったらやめてしまいたいでしょうね。)
ポイント計算方法
年率0.048%とか0.036%というのは便宜上の表現です。楽天証券は毎月10万円ごとに4ポイントや3ポイント付与するとしています。10万円未満の端数が切り捨てられるのはちょっと残念ですね。
このポイントの計算方法は、SBI証券の計算式の方が良心的です。
ポイントの価値
付与されるのは通常の楽天スーパーポイントです。使い勝手はこの上なく良いです。そして投資信託の購入に1ポイント1円から利用できるのがいいですね。
積立投資シミュレーション
特定口座で毎月初に5万円の積み立てを20年継続した場合のシミュレーションです。ハッピープログラムで付与されるポイントを再投資した場合と、無視した場合を比較します。ポイント付与率は0.036%としています。
青のラインは税引き後評価額の差です。グラフのスケールは同じです。
期待リターン年率4%の場合
バランスファンドなら控え目に期待年率4%で考えるのがいいでしょう。
20年間の積立投資で、税引き後評価額の差が70,238円になりました。資産総額1,709万円と比べると少額ですが、うれしくないですか?
期待リターン年率5%の場合
投資対象が株式100%なら、期待年率5%で考えてもいいでしょう。
20年間の積立投資で、税引き後評価額の差が80,045円になりました。資産総額1,885万円と比べると屁みたいな額かも知れませんが、もらえないよりはいいですよね。
期待リターン年率6%の場合
これからの20年間も恵まれていたら、株式インデックスへの投資で期待年率6%は楽勝かも知れません。
20年間の積立投資で、税引き後評価額の差が91,475円になりました。資産総額が2,088万円もあるので、それと比べるとわずかな金額ですが、単独で見れば大金ですよね。
ポイント再投資が生む複利効果
期待年率5%の場合、5万円の積立投資で税引前評価額は次のように増えます。
ハッピープログラムで付与されるポイントは、保有資産額(=税引前評価額)に比例しますから、ほぼ同じカーブで増えます。
月額で見たポイントは投資開始5年後でも102円程度でしかありません。10年後で231円程度です。20年後でも612円程度です。年率0.036%、月率だとたったの0.003%でしかないからです。
でも、このポイントを毎月再投資したら元本は次のように増えます。
付与された(=再投資した)ポイントの総額は、20年間で6.1万円にもなります。
ポイントの再投資によって元本が増えます。増えた元本は、リスクにさらす代わりにリターンを生みます。次は税引き後評価額の差の推移です。
ポイント再投資により、20年間で8.0万円、手取り額が増えたのです。再投資しなかった場合の差は1.9万円です。なんだ、たったのそれだけか、と思われますか?
現実にはポイント再投資は難しい
ここまでポイントの再投資効果を絶賛しておいて気が引けますが、現実にはこのポイント再投資は難しいです。付与されるポイントは評価額と共に変動しますし、毎月適宜再投資するのはめんどうです。でもまとめて1年に1回再投資するよりは、毎月ちまちま再投資した方が有利です。
僕は楽天証券にポイントの自動再投資プログラムの実装を切望しています。毎月ポイントが付与される都度指定した投信を(100ポイント以上の場合に限り)自動で買い付けてくれるというものです。
でもこれを待ってるままではもったいないので、次のようにするといいでしょう。
- その投資対象を特定口座で楽天カード決済で積み立てている場合は、特定口座で積み立て設定を追加します。(普通にできます。)
- 楽天カード決済以外で積み立てている場合は、再投資型/受取型を変更して積み立て設定を追加します。
- または、ポイント再投資専用の商品を選択します。
- 積み立て額は現在付与されているポイントに近い金額にします。
- 時々積み立て額を見直します。
- 積み立てはポイントではなくて楽天銀行からの自動スイープで行います。(その方が現実的です。)
ポイントの使い道は自由です
さんざんポイントは再投資するのが良いと主張しておきながら、ちゃぶ台をひっくり返すようですが、ポイントの使い道は自由です。ただ、同じ投資対象に資産を投じて同じリスクを負うのであれば、資産の保有額に応じて付与されるポイントについても調べた上で、どの金融機関で買うのが良いか検討するのがいいと思います。
もちろん、口座の利便性なども評価の対象になります。
僕が実際にもらっているポイントは
2021年7月分は1,008ポイントでした。
引用:楽天e-NAVI
特定口座と一般NISA口座にあるスリム先進国株式の資産額に符合します。これが8月からは3/4に減ります。残念ですね。
2021年10月分は803ポイントでした。
引用:楽天e-NAVI
株高で資産額が増えたものの、ポイントの25%減が支配的ため約2割の減少となりました。
でも僕と妻で(今の評価額だと計算上)年間18,000ポイントもらえます。これは素直にうれしいです。
終了したハッピープログラム
2022年4月より、投資信託の保有資産額に応じたポイント付与から、保有資産額がある金額を初めて超えたときにポイントが付与される制度に変更されます。(詳細はこちらの公式案内を参照して下さい。)
引用:楽天銀行
つまり、終了です。僕と妻で(今の評価額だと計算上)年間18,000ポイントもらえているのが、ほぼゼロになります。この内容だったら潔く廃止した方が良かったぐらいですね。
SBI証券の投信マイレージサービスは素晴らしいです
長らく楽天証券のハッピープログラムに負けていた、SBI証券の投信マイレージサービスですが、SBI証券のサービス改善と楽天証券のサービス改悪の結果、2021年8月以降はわずかながらSBI証券の方が有利になりました。そして楽天証券のハッピープログラム終了に伴い、SBI証券の投信マイレージサービスは一人勝ちになります。
どちらも、いつまで続くか分からない大盤振る舞いのサービスであることは確かだと表現していましたが、楽天証券が先に白旗を上げてしまいましたね。
条件の良いサービスは常に改悪される可能性がある
条件の良いサービスが改悪される光景を、これまで散々見てきましたし、楽天証券のハッピープログラムは付与率改悪後も大盤振る舞いだったので、永続的だと思ったことはありませんでした。が、今回案内された改定内容は事実上の終了であり、SBI証券との競争上かなり不利になるため正直驚いています。
改めて思うのは、条件の良いサービスは利用できるうちにそのメリットを享受しておきましょう、ということです。
SBI証券に移管します
楽天証券から他の証券会社に移管(出庫)する場合、1銘柄ごとに税込み3,300円かかります。僕が特定口座で所有しているスリム先進国株式は2,300万円程度ですが、SBI証券に移管すると年間9,200円相当のポイントが付与されます。SBI証券の投信マイレージが現在の制度のまましばらく(数年以上)続くなら、手数料を負担してでも移管したくなりますね。
また、SBI証券はチャンスとばかりに楽天証券に支払った移管手数料をキャッシュバックするキャンペーンを実施するかも知れません。その時は移管のチャンスですね。と思っていたら早速(即日ですね)SBI証券は他社からの移管手数料のキャッシュバックを恒久化しました。楽天証券の白旗にガッツポーズで対応したわけです。
なのでこうします。
- 楽天証券の特定口座にあるスリム先進国株式をSBI証券に移管します。(NISA口座にある資産は移管できませんし、NISA口座の引っ越しもしません。)
- 新規の積み立て、購入は引き続き楽天証券で行います。
新規の積み立て、購入を楽天証券で継続するのは、楽天カードによる積み立てが有利(これも風前の灯かも)なのと、楽天銀行からの自動スイープの利便性を評価しているからです。
移管しました
楽天証券の特定口座にあったスリム先進国株式を丸ごとSBI証券に移管しました。