インデックス投資

一括投資できる余裕資金があっても積み立て投資を選択する理由

インデックス投資対象の基準価額が、長期的に見れば右肩上がりで成長すると確信できるなら、積み立て投資よりも一括投資の方がリターンが大きくなります。これは単純な算数です。が、一括投資をするためには次の2つの条件を満たさなけばなりません。

  • 一括投資するだけのまとまった余裕資金がある。
  • 一括投資直後に基準価額が暴落しても後悔しない自信がある。

この条件に、安易にYesと答えてはいけません。

  • その余裕資金は本当に余裕資金なのか、自分の本当のリスク許容度を超えた金額を余裕資金だと思っていないのか、事前に知ることはなかなか難しいと思われます。少なくともこれからインデックス投資を始める人がいきなり一括投資をするのは無謀です。
  • 含み損への耐性は自分が想像しているよりずっと低いものだと、インデックス投資の先輩たちが警鐘を鳴らしています。10%程度の調整と呼ばれる下落は毎年のようにありますし、10年に1回程度迎える暴落では30%から40%は普通に下落します。一括投資直後に(たとえそれが数カ月後でも)暴落しても耐えられますか?その場合、ものすごい高掴みをした、間違いなく残念な投資家になるわけですが、狼狽売りしないでホールドできますか。僕は耐えられません。

まだ若くて、給与の中から毎月33,000円をつみたてNISAに投資するのでやっとという方も多いでしょう。そういう方には一括投資は無縁な話ですが、それで良いのです。若いということはこれから軽く40年以上インデックス投資を(買い増ししながら)継続できるということであり、現在の投資環境は10年前とは比較にならないほど良くなっているので、40年後には文字通り呼吸していないはずの僕から見るととてもうらやましいです。また、若い頃からつみたてNISAに年間約40万円投資できるなら、毎月投資可能な金額は確実に増えるでしょうから、それに伴い総資産額は(投資対象が適切なら)複利効果の恩恵を受けて爆発的とは言わないまでも、素晴らしい伸び率を見せるはずです。

ということで、僕は一括投資可能な余裕資金があっても積み立て投資を強く推奨しますが、ではどれぐらいの期間をかけてその余裕資金を投資し終えるのが良いかについては、投信ブロガーの間でも意見が分かれます。ほぼ1年から5年の幅があります。絶対的な正解はないので、自分が良いと思う期間を選択するしかありません。

では、まとまった余裕資金がある場合に積み立て投資をする期間でリターンがどう変わるのか、僕が大好きなMSCIコクサイの実データを使って調べます。

eMAXIS先進国株式

eMAXIS先進国株式が設定されたのは2009年10月28日です。次はその翌々月から2018年11月末までの基準価額の変化です。

eMAXIS先進国株式が設定された翌月から2018年11月末までの基準価額の変化

リーマンショック後の株価低迷がしばらく続いた後、見事に回復しています。2009年12月1日に一括投資できていたなら、利益率は176%です。つまり、投資元本は2.76倍に増えています。(税金は無視しています。)

毎月5万円積み立てた場合

過去9年間、毎月5万円を淡々と積み立てたシミュレーションです。

毎月5万円積み立てた場合

利益率は76.1%です。元本は540万円です。

では仮に540万円が手元にある場合に、毎月の積み立て額を増やすことで、元本を投資する期間を短くしたらリターンがどう変わるかを見ます。

毎月10万円積み立てた場合

4年6ヶ月、毎月10万円を積み立てた後そのままホールドしたシミュレーションです。灰色のラインが元本で、積み立て投資完了後は元本が増えないのでフラットになっています。

毎月10万円積み立てた場合

利益率は134.2%に激増しました。

毎月15万円積み立てた場合

3年間、毎月15万円を積み立てた後そのままホールドしたシミュレーションです。

毎月15万円積み立てた場合

利益率は164.7%に(9年かける場合から)激増しました。

毎月20万円積み立てた場合

2年3ヶ月、毎月20万円を積み立てた後そのままホールドしたシミュレーションです。

毎月20万円積み立てた場合

利益率は167.9%です。3年間積み立て投資した場合とほとんど変わりません。それは、積み立て期間がリーマンショック後の低迷期であったためですね。3年かけても2年3ヶ月でも、積み立て投資の結果である平均取得価額は大きく変わらなかったということです。

問題はいつ暴落するか分からないこと

もし、今後3年間は調整はあっても絶対に暴落しないことが分かっているなら、まとまった余裕資金を3年かけて積み立て投資すれば良いでしょう。でも誰もその保証をしてくれません。かと言って、暴落を恐れて積み立て期間を長くすればするほど、相対的に不利になることは明らかです。それは投資可能な資金を有効に投資しないことによる機会損失と言えます。

そのため、まとまった余裕資金がある場合に何年かけて積み立て投資するのが良いかは、不確実な未来の予測に基づく「賭け」であり、自分で考えて決めるしかありません。この場合、積み立て投資期間が短くなるほどハイリスク・ハイリターンなので、暴落を迎えた時に高掴みをしたと後悔するリスクをどこまで取るかがポイントになります。

たとえば3年かけて積み立て投資すると決めた場合に、積み立て投資が完了した4年目に暴落しても、大きなショックを受けずにちょっと運がなかったねで済ませられるかどうかです。

我が家の場合

我が家は2018年夏からリスク資産をスリム先進国株式のみに変更しているところです。仕切り直しをしているようなものです。そして年齢が高いこともあってリスク資産に投資可能なまとまった余裕資金がそこそこあります。流行りの表現を使えば、入金力は高いです。

世界経済にはサイクルがあり、リーマンショック後長く続いた強気相場も終盤にさしかかり、近い将来暴落を迎えると考えられています。時期と規模は誰にも分からないものの、暴落は不可避と言われます。あと2年以内に暴落する確率は十分高いと思いますし、暴落することなく2021年が暮れることは想像できません。

運良く、と表現すると不謹慎と言われるかも知れませんが、たまたまそういう時期にあるので、我が家は抑え気味に積み立て投資をしながら暴落したら全力投資するつもりでいます。準備はできています。

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